もちろん、相手が不思議な効き目のある薬剤だと聞いたので怖いとは思わなかった。
やがてこの夜も月が出てきた。姑は機を織りながら庭で物音がするかどうか耳を傾け、嫁は戸の隙間から庭をにらんでいたが、そのうちにまたも垣根の中から二人の子供が出てきて、庭の真ん中で遊びだした。これを聞いた姑が機を織る手を止めずに、嫁に眼で合図すると、妻はこっくりうなずぎ、眼を細めたあと不意に戸を開けて手にしていた竹を子供の方に思い切り振った。こちら二人の子供は急に戸が開いたので、ぎょっとして戸のほうを見たが、そのとき竹から投げ出されたお米が二人の足に当たった。これを見た嫁と姑、庭に飛び出し、その場でもがいている子供を押さえつけたところ、子供は不意に小さくなり、硬くなって動かなくなった。そこで姑が家から明かりを持ってきて照らしてみると、子供はなんと木の塊みたいなものに変わっていて程よい香りがする。
「お母さん、これがあの親戚が言った不思議な効き目のある薬剤ですよ」
「そうみたいだね。こうして手に入れられてよかったね」
「ところでお母さん。これをどうします?」
「そうだね、どうしよう?」
「あの親戚は、蒸して口にすれば長生きできるといったでしょう?」
「そうだね。どうせ毒じゃないので、蒸したあと食べてしまおうか?」
「そうしましょう。そうしましょう」
ということになり、嫁とその姑はさっそく、それを洗って鍋で蒸したが、どうも硬い、これじゃ食べられないと、また蒸したがまだダメ。そこでやわらかくなるなで五回も蒸して、やっと食べられるようになった。そこで二人はこれを口に入れた。
「うん?おいしいですわね、お母さん」
「そうだね。思ったよりもおいしいね」と二人は瞬く間にこれを腹に収めてしまう。そしてこの夜はそのあと寝てしまった。翌日は二人、朝からお腹がすかず、昼も同じで、とうとう三食抜き。また、夜遅くなっても空腹を覚えず、二人は首をかしげたあと、仕方がないと横になって寝てしまった。
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