さて、翌々日の朝、この二人は起きる様子がない。昼ごろになってもこの家からは誰も出てこないので、付き合いの多い近所のおばさんが、「今日はどうしたんだろう、いつもだったら、隣の嫁が機で織った布を町に売りに行くのに。今日はうちの前を通らないね」、と首をかしげていた。そして午後になっても、嫁と姑は家から出てこないので、これは何かあったねと、この隣のおばさんが訪ねに行った。
「お隣さん!今日はどうしたのかね?お休みかい」
これには返事がないので庭に入って家の戸を叩いてみたが、なおも返事がない。これはおかしいと思ったおばさん、戸を力いっぱい押し開けて中を見ると、この家の嫁と姑がまた床で横になって小さな声でうめいていた。そこで床に近づき見ると、なんと嫁と姑は二人とも顔と体が腫れだし、口もきけないまでになっていた。
これは大変だと、おばさんは、家に帰って息子に医者を呼びに行かせ、また、自分の夫に何とかしてこの家の夫と息子にこのことを知らせるようにいう。
さて、医者がきて嫁と姑に薬を飲ませたところ、少しはよくなった。と、翌日、このことを聞いて驚き帰ってきた夫と息子は、何がなんだか分からないので、医術の分かるかの嫁の親戚を家に呼んで見てもらったところ、この親戚はこういう。
「ははは!お二人は病にかかったのではない」
「え?病ではない?」
「そう。実は先日、人の姿に変わった薬剤を見たというので、私はこれを捕まえて煮て食べれば、長生きできると教えたのでござる。どうも、二人はこれを煮て食べたようござるな。しかし、あの薬剤は九回煮なければ食べることはできん。それに鉄の鍋で煮ることもできないということを私が言うのを忘れておった。これはすまないことをしましたな。ま、二人はすぐに元通りになるので安心なさい。いまから、特別の解熱と解毒の薬を飲ましますから、数日後にはすっきりよくなりますよ」
これを聞いた夫と息子は安心した。
こうして嫁と姑はよくなったが、そのときから二人はこれまでより元気が出てきたばかりが、六十を過ぎていた姑の白髪がなくなり、顔の皺もきれいに消えてしまって四十前後に見え、、また、四十前後だった嫁の髪の毛も黒々としてつやが出始め、顔も若くなりなんと二十を過ぎたばかりの娘のように見えた。
そしてこの二人は、その後百歳あまりまで元気に過ごしたという。
ところで、何首烏の首烏という二字ですが、中国語では首とは頭、かしらという意味、烏とは鳥のカラスという意味と黒いという意味などがあります。ですからここでは、黒いという意味。というと、これは何の苗字のつく人の頭の毛、つまり髪の毛が黒くなったということで「何首烏」という名前が、後にこの薬剤につけられたという話もあります。はい。そういうことでした。
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