「はい。申し上げます。それは豆腐を塩と酒で漬けたもので、桂林近くがふるさとである陳宏謀どのが、皇帝さまに是非味わってもらおうと故郷から持ってこられたものでござります」
「ほう?あの陳宏謀がな。で、ここまま食べるのか?」
「は、そのままでもよろしいのですが、話ではお粥などを召し上がられるときに漬物とされれば、とてもおいしいということでございます」
「うん。粥などを食べるときの漬物とな。では、試してみるか」と皇帝はお粥を一口食べたあと、豆腐を少し口に入れた。
「うん!うん、うん!これは粥に合うのう。うまい、うまい。」
「それは結構なことでございます。これで陳どのも遠くからそれを持ってきた甲斐があるというもの」
「うん。これがあれば、粥などは普段より多く食べられるわい。そうじゃ。奴はまだ帰京の報告をしておらんな。明日にでも陳宏謀を呼べ」ということになり、翌日、陳宏謀は皇帝に今度の南方での見回りの状況を報告した。それが終わって皇帝はふとあの豆腐のことを思い出した。
「ところで、宏謀よ。そちが持ち帰ったあの豆腐の漬物、粥と一緒に食べた。うまかったぞや」
「はは!これはこれはありがたき幸せ。皇帝さまのお口に合ったようで、何よりでございます」
「で、あれはなんと申すのかな?」
「はい、はい。あれは・・・」と陳宏謀は、四塘にある横山村の豆腐屋が考え出したものだと言おうと思ったが、農村で出来たものとは言えず、これは桂林特産の「豆乳腐」だと答えた。ここでいう「豆乳腐」とは、そうじゃな、いまの言葉で豆腐チーズという意味かな?。
そこで皇帝は桂林から毎年、この「豆乳腐」を都への貢物とするよう命じた。
ところが桂林の人々は、当時の腐敗した朝廷を憎んでいたことから、「乳腐」の「腐」、つまり、腐るという字を乳の前にして「腐乳」とよび、このときから桂林の「豆腐乳」は名物になったわい!
そろそろ時間です。来週またお会いいたしましょう。
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