胡愈之（1896ー1986）は1896年浙江省の上虞に生まれました。中国の近代的な文化出版業における先驅者の一人であり、また著名な政治活動家でもあります。

　1911年、紹興府中学堂に入学、1912年杭州英語専門学校で学びました。1914年、実習生として所属した上海商務印書館で、余暇の時間を利用して、日本語やエスペラント語を独学し、その翻訳などを行いました。

　1919年、上海で「五・四運動」に参加し、1920年、茅盾や鄭振鐸らと共に「文学研究会」を発足させ、新文学運動を積極的に展開しました。1921年、故郷･浙江省で新思想や新文化を広めるための初の新聞「上虞の声」を創刊しました。また1925年には「公理日報」を編集、発行しました。1928年に、「東方雑誌」ヨーロッパ特派員となり、パリ大学に留学、国際法や新聞学などを学びました。1931年、帰国の途中、旧ソ連を訪問し、帰国後、旧ソ連が十月革命後に成し遂げた成果を紹介する書物「モスクワ印象」を発表しました。9･18事変後、「東方雑誌」の編集長となり、また、???と共に著名な雑誌「生活週刊」を編集、生活書店の創設を促しました。1933年9月、中国共産党に入党し、相次いで「文学」、「太白」、「訳文」、「婦女生活」ら進歩的な出版物を創刊すると同時に、「世界知識」の編集長を担当しました。

　1940年周恩来指示に基づいて、海外での宣伝活動を行なうため、シンガポールに赴きました。抗日戦争勝利後、海外で中国共産党の方針・政策を広めるため、シンガポールで新南洋出版社を創設したほか、新聞「南僑日報」、雑誌「新婦女」などの編集に携わりました。

　1948年、帰国。新中国成立後、「光明日報」の編集長、中国国家出版総署の署長、中国文化省の文化次官、中国人民外交学会副会長、中華全国エスペラント語協会理事長、中国民主同盟中央副主席などを歴任。1986年1月、北京で亡くなりました。享年90歳でした。