次は、「路地」という昔の書物から「千里はるばる鵞毛を送る」です。
これは、遠く千里の地から送られたものは、鵞毛といえども気持は重いという意味でしょう。ここでお断りしておきますが、ここで言う鵞毛とは白鳥の羽毛のことです。白鳥は中国語で「天鵞」とかいて「tian e」」といいます。
「千里はるばる鵞毛を送る」
それは唐の時代。当時の地方の役人は都にいる皇帝に貢物をする慣わしがあった。そこである国境で役についていた長官が、緬伯高という部下に白鳥を送りにやらせた。
しかし、そこから都まではかなり遠く、そのうちに白鳥が汚れてしまった。そこで川で白鳥を洗おうとしたが、どうしたことか、白鳥は翼を広げて飛んでいってしまったので、緬伯高は大慌て。「どうしよう。どうしよう」とおろおろしていたが、どうしようもない。そしてとうとう泣き出したあと、川原に白鳥の羽毛が落ちているのを見て、仕方なくそれを拾い都の長安への旅を続けることにした。
こうして長安についたあと、緬伯高は各地から同じように貢物を持ってきた使者たちと共に、宮殿で皇帝に謁見した。そして他の使者たちが貢物を披露した後、ついに緬伯高の番が回ってきたので、彼はおずおずと前に出た後、懐から小さな包みを取り出し、それを広げて、べそをかきながら皇帝に差し出した。これを受け取った皇帝の側近は、これはかなり軽いものだを首をかしげながらその袋を皇帝に渡した。
こちら皇帝もいくらか不思議がり、早速袋を開けてみると、一本の羽毛だけが包んである。これを見た緬伯高は急に土下座して「申し上げまする」と泣きながら事の仔細をありのままに話し出した。
これを聞いた皇帝は、しばらく黙っていた。これに緬伯高はびくびくしながらこれは陛下の怒りを買い、自分がひどい目にあうどころか、自分の主である長官も無事ではなくなると思っていたが、不意に皇帝が言い出した。
「朕は白鳥というものを見たことがない。これが白鳥の羽毛か。分かった分かった。これまでの道のり、大変であったであろう。遠く千里の地から送られたものは、羽毛といえども気持は重いものじゃ。ご苦労であった。都でよく休み、土産などをもちかえり、そちの主に伝えよ。貢物は朕が確かに受け取ったとな」
こういって皇帝は、褒美として金銀やきれいな絹などを緬伯高に持ち帰るように言ったという。
このことが知れ渡り、「千里はるばる鵞毛を送る」という成語が生まれたとさ。
よかった。よかった。ねえ!!
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