ところで、この西鳳酒ですが、産地は中国西北部の陜西省の鳳翔県とされています。私もあまり分らないので少し調べてみたのですが、西鳳酒は中国でも最も古い名酒の一つ。ある本によるとかの殷・商の時代に始まり、唐の時代にその名が広まったらしく、今から3000年以上の歴史があるといわれます。で、先ほど言いました陜西の鳳翔県は、その昔、雍州と呼ばれ、周と秦の国の発祥地で、酒の里ともされ、ここで醸造されたお酒はかなり有名で、昔は、祝い事、勝ち戦のあと、または祝祭日には必ず宮廷で飲まれたということです。またここはシルクロードの通過地点で、それ以前から商人がここに集まり、宿泊地でもあったようです。この西鳳酒についての歴史上の記載は、それぞれの王朝で名前が異なり、周の武王はこの酒を「雍酒」と呼び、周の文王は「秦酒」となずけ、漢の時代には「柳州酒」、そして唐代になって"西府の鳳翔"とされたので西鳳酒と名付けられたというわけ。また、ここ鳳翔県には20ヶ所以上の仰韶文化の遺跡と多くの竜山文化の遺跡があり、特に春秋戦国時代の秦公の陵墓は、世界的に有名ですね。それに東湖園林など名勝旧跡も多いところです。
昔の「史記、秦本紀」という本には、戦国時代の秦の王である穆公が、解毒のために馬を盗んだ"野人"にこの酒を賜わったとあります。かの書物「酒譜」にも、穆公は、戦に勝ったので酒を振舞い将兵を労おうとしたもの、酒が少ないので仕方なく近くに流れている川に酒を流し込み、皆で酒の味がするという川の水を飲んだところ、将兵らは酔ったという故事がありますね。ほんとかね!すごい酒ですな。
こんなに美味しい酒を熟成させるためには以前はどんな容器に入っていたのでしょうかね。これもある先輩に聞いたのですが、白酒のうち、西鳳酒の熟成容器は極めて異なり、それは土甕のようなものではなく、柳の枝で編んだ大きな籠に、豚の血と石灰とを混ぜてつくった丈夫な麻の紙を、内側から何枚も貼り付けて固めた容器で、これは何回も使えて長持ちのするということ。この容器はとても大きく容量が1トン以上もあるんですって。つまり、こんな馬鹿でかい容器に白酒を入れて貯蔵して熟成させることから、お酒には素晴らしい香りとうまみがやつくんだということです。すごいですね。なんか、酒の海に溺れるみたいな感じです。
|