中国では、ここ二三年、歌手かアイドルを選抜するオーディション番組がどんどん増えています。実はある番組こそ、それらのオーディション番組の「草分け」という存在です。CCTV・中央テレビ局の看板番組の一つ「青年歌手大会」です。それは1984年から始まった番組で、二年に一回放送されています。若手歌手を選抜する大会なんで、放送と言うよりも一つのイベントになりました。今年の大会はオーディションの生中継を43回行い、毎回の平均放送時間は二時間半です。今年、視聴者の人数はなんと、延べ10億人を超えたらしいです。この番組は全国のバラエティ番組の視聴率調査の中で、トップに並んでいます。毛阿敏、彭麗媛、宋祖英ら有名な歌手は、この大会がきっかけで、皆に知られるようになったのです。
今回の大会には各地から100人を超える歌手が参加したそうです。中国の特色かもしれませんが、大会はいくつかの部門にわけれられています。例えば、クラシック、ポップ、民族部門などあります。参加者たちは基本的にプロの歌手が中心です。みんな各芸術関係の学校とか、各地の文芸団体が推薦した優秀な歌手なんです。でも、数回の予選を潜り抜けて、やっと北京での決勝戦に出られるのはごく一部しかいないんです。特にクラシックのほうは競争が最も激しい部門です。そんな中で、金メダルに輝いたのは薛皓垠(せつこうぎん)さんです。彼の声は清らかで、表現力に富んでいます。そして、舞台での仕草も落ち着いています。今回の金メダルについて、彼は感慨無量です。
この中国の最大規模の声楽大会では、いままで民族部門とクラシック部門の歌手がよくヒットしたのです。今年も、民族部門に出場する歌手は30名もいます。彼たちの歌は少数民族の歌を代表しています。これについて、三回連続で審査を担当する王祖皆さんはこのように評価しています。
「かつての民族部門の歌手はテクニックを見せようとするため、悲しくて難しい作品をよく選んだのです。全体的な雰囲気は結構重かったのですね。でも、最近はそれに限らず、個性があって、生活の各方面をうまく描く作品が増えてきました。一言で言えば、民族部門の歌は前より多彩になりました。」
今回の大会には新しい部門「原生態」が一番の焦点となりました。「原生態」はこの二三年聞かされるようになってきた言い方で、原始状態で、少数民族の自然な歌い方ということです。しかも、今回の「原生態」部門の歌手たちは殆ど都市部から随分離れた少数民族地域出身の人たちです。彼たちが披露した歌は地元で昔から伝わってきた民謡で、アカペラで歌ったのもあります。クラシック部門などは殆ど専門学校や文芸団体の推薦で出たプロの歌手でしたが、この「原生態」部門だけでは、少数民族歌手が生活の中の本当の歌い方を披露してくれました。
実はこの部門の設立は中国で有名な音楽学者ーー田青教授が提言したものです。これについて、田青教授は「原生態部門の成立は、無形文化遺産に対する人々の関心が高まっていることを示している。56の民族はそれぞれ特徴のある民謡、しかも歌い方を持っており、例えば、よく知られるモンゴル族の長調、チベットの山歌などはその代表的なものである。それは貴重な無形文化遺産だと言える」と話しています。
この大会の審査内容は歌だけではなく、歌手の総合的な資質を判断する音楽常識と文化面のクイズが第8回から設けられるようになりました。歌手は問題をもらって、その場で即答しなければなりません。そして、その点数も最後の総得点に加えることになります。
歌唱力が優れた歌手なのに、クイズのコーナーでうまくいけなくて、結局、総得点がぐっと下がってしまう例も少なくありませんでした。でも、それこそ総合的な資質が判断できると思います。しかも、その後の専門家の分析も面白かったのです。見ている聴取者もいろいろな知識を得られて、勉強になります。
|