「いやあ。お待たせしました。今日も皆さんに楽しんでもらおうと"竜虎闘"を作りましてな。さあ、わしの考え出した"竜虎闘"、を皆さんにお出し!」と江孔殷が言うので、下のものがその料理をそれぞれの席に出した。
「さあ、わしが工夫した料理の"竜虎闘"を味見されや」
これを聞いた親戚や友人たち、出された料理を見たが、それが肉入りの汁料理だったので、、首をかしげながらさっそく箸や匙を取って味見した。それがうまい!みんなはそのうまさに舌鼓をうったあと、主の江孔殷にきいた。
「江さま。これはいったいなんでござりましすかな?」
「"竜虎闘"、つまり、竜と虎の闘いという意味の料理で、実は蛇と猫の肉を材料にしたものじゃ」
これにはみんなびっくり。蛇料理は広東ではそれまでよく食べられる料理だったが、それに猫の肉を加えて竜と虎の名をつけたとは初めて耳にする。
こうしてみんなは"竜虎闘"というこの江孔殷の作り出した料理を褒め称えた。もちろん、当の江孔殷は大喜び。
このとき、江孔殷とは幼なじみだという客が言い出した。
「江どのや、どうかのう?この料理は竜虎闘というらしいが、竜と虎が戦えば竜が勝つに決まっておる。そこでどうじゃな?虎への助けとして鳳凰を加えては?」
これを聞いた江孔殷は、鳳凰、つまり、オオトリとはここでは鶏のことだと悟る。また鶏の肉は確かに猫の肉よりおいしいので、鶏肉を加えればこの料理のおいしさが増すのは言うまでも無いこと。ここまで考えた江孔殷は、この幼なじみの提案はもっともだと思い、そのときからこの料理に鶏肉を加え、何度も何度も作りなおしたりした後、自分が気に入る味がでた。そこでまた日を決めて親戚や友人を呼び、この料理をだしたところ、これまで以上に喜ばれた。そこでこの汁料理に「竜・虎・鳳のごった煮」という意味らしい「竜虎鳳(火+会)」という名をつけたという。それにこの汁料理を入れる器として竜、虎と鳳凰の模様の入った立派なお碗を幾つも作ったので、このときから、「竜虎闘」と「竜虎鳳(火+会)」は広東の名物料理としてのちに伝えられたのだそうな。
でも、猫の肉は少し怖いですな!!
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