いくらケチ親父でも、これが自分を騙す芝居だとは見抜けなかった。それもそのはず、牛の尻尾はどう仕組んだのか、まだ動いている。これを見たケチ親父は慌てた。そこでアバオがいう。
「旦那さま。実は牛を救おうとみんなが近くにいるんですよ」
「本当か。すぐに呼んでこい」
こうしてアバオがみんなを呼んだので作男たちはどこからか出てきた。
「おう!みんな来てくれたか。では手伝ってこの牛を助けてくれ。そうでないと、この牛は夜には狼たちに食われてしまうだろう。この牛が助かったら、今晩、いいものを食わしてやるから」
これを聞いて作男たちはにっこり。
「いいか、みんな。何とかしてこの牛を洞穴から引っ張り出してくれ。」
これを聞いた作男の一人が、牛の尻尾をつかんだ。そしてもう一人がその作男の腰を抱き、その後ろにもう一人が前の作男の腰を抱くという具合に、十数人の作男が鎖のように一列に並び引っ張り始めた。そして最後にケチ親父が一番後ろで前の男の腰を抱いて、みんなが牛の尻尾を引っ張ったのじゃ。
「いち、にーのーさん!」
「いち、にーのーさん!」
という具合に何回かみんなで力をあわせ引っ張ったとき、なんと牛の尻尾がプツンと切れた。
この弾みに作男たちはどっと後ろに倒れ、一番後ろにいたケチ親父も後ろにひっくり返った。作男たちは後ろに倒れただけですんだものの、一番後ろで引っ張っていたケチ親父は、自分の後ろに誰もいなかったせいか、勢いでころころと後ろにころがり、なんと崖から谷に落ちて、命を失ってしまったと。
はい。そういうことでした。
この話しはこれでおしまいですが、なんか後味があまりよくありませんね。いくらけち親父を懲らしめるといっても、なんと谷に落ちて死んでしまうとは、アバオや作男たちも思っても見なかったことでしょう。ちょっとやり過ぎと思われる結末ですね。いくらケチな親父でも、アバオや作男に乱暴働いたわけでもないのに、ね。
そこで、この林涛は、意地悪して次のようなものをつけました。
こんなもんです。
この弾みに作男たちはどっと後ろの倒れ、一番後ろにいたケチ親父も後ろにひっくり返った。こうして作男たちは後ろに倒れただけですんだものの、一番後ろで引っ張っていたケチ親父は、自分の後ろに誰もいなかったせいか、勢いでころころと後ろにころがり、なんと崖から谷に落ちて、命を失ってしまったと。
ここからが、林涛がつけた結末です。
これにはアバオと作男たちはびっくり。みんな怖くなって逃げ出した。ところが、谷底から助けを呼ぶ声が聞こえる。この叫び声にアバオは自分のしたことに後ろ目を感じ、夢中になって駆け出した。ところがまだ山の上、危ないところはどこにもある。慌ててしまったアバオ、無我夢中で逃げる途中、どうしたことが足を滑らし、崖から落ちていったワイ。また、怖くなって逃げ出した数人の作男もアバオと同じように谷へ落ちてしまったそうな。
これはいけなかったかな!?ひどすぎましたね。どうせ、本文は前のとおりですからご心配なく。
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