では次に昔の笑い話をご紹介しましょう。
明の本「笑林」から「的の神」です。
むかし、ある武将が出陣したが、戦がうまくいかず負けそうになった。この武将、これはいかんと慌ていると、どこからか神が出てきて助成してくれ、おかげで勝ち戦となり、武将は大喜び。危険なところを助けてくれたというので武将がこの神の前に跪き叩頭して礼をいう。
「これはこれは、どこの神さまか存じませぬが、危ないところをどうもありがとうございました。」
するとその神は恐縮して答えた。
「いやいや。その方にそんなに感謝されては困る」
「え?なんともうされます?」
「実は、わしは的の神であってな」
「的の神?」
「いかにも」
「で、的の神さまが、どうして、わたしめを助けにここへ?」
「いや。実はその方に感謝しており、その礼をしようとしてここに参り、その方を助けたのじゃ」
「このわたしめに、礼をしようと?」
「そうじゃ。というのも、その方は普段から練兵場で弓の修行をしていて、これまで矢を一度も的に当てたことがないので、わしも痛い目には一度もあわずにすんだのじゃ。その礼じゃ!」
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