龍井茶は色が緑、香りは馥郁、味は醇厚、形は美しく、これを四絶といいます。
龍井茶は蘇州のヘキ螺春と共に、中国を代表するお茶としてよく知られています。龍井茶は緑茶の一種で、その作り方は普通の緑茶とほぼ同じですが、手間がかかります。
その製法は、振動させる、締める、圧搾する、力いっぱい押し付ける、まっすぐに伸ばす、開く、押す、ひねる、圧迫する、すり磨くの十大手法が施されるといいます。現在では、この龍井茶を加工するときは、電気で温度の調節ができる大きな釜を使い、一人でこの工程を次から次へと行っていきます。一回に釜に入れる茶の葉の量により高級な龍井茶と中級な龍井茶の違いがうまれます。一回に100グラムから150グラムを釜に入れると高級なお茶が、400グラムになると中級ということです。
龍井茶は保存にあたり、茶箱の中に御茶の量の、およそ十分の一の石炭を入れます。そして、この石炭を時々取り替え、お茶が湿らないようにします。
唐の時代の茶聖といわれる陸羽の「茶経」によりますと、その昔杭州はそれほど上等の
お茶の産地ではなかったようです。明の時代になっても、宮廷用の茶園として、建安北苑に人々の関心が集まったため、杭州付近のお茶のことはあまり文献に出てきません。
ようやく南宋末期になりますと、杭州地方の歴史書「臨安誌」には、皇帝に献じるお茶として、下天竺香林洞産の香林茶、下天竺白雲峰産の白雲茶を上げています。これはいずれも現在の龍井茶の産地に隣接した地域です。
明の時代には銘茶として、太湖南岸のカイ茶に関心が集まります。このころになりますと、カイ茶と並べて杭州の茶も上げ、香りが満ち溢れ、わずかの差でカイ茶と並ぶものだとしています。
この明の時代には、県の長官などの官職を歴任した屠隆と言う文人がいて、「茶説」などのお茶に関する著書を書いています。屠隆には「龍井茶歌」と言う詩があり、その中で次のように詠じています。
この山 秀結にしてまた茶を産し穀雨 脈(みゃく)もくとして仙芽を伸ばす
龍井茶を採取し また龍井茶ににる
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