夏は刻々と天気が変化し、様々な表情を見せてくれます。晴れ渡る青空が広がったと思えば、雷が鳴り響いて大雨になり、雨が過ぎると空はからっと晴れて、天に虹を架けます。今回の中国メロディーは、多くの顔を持つ夏に関わる音楽をご紹介しましょう。

暴雨の洗礼～ゴナス草原～

　夏の新疆ゴナス草原では、モンゴル族の牧畜民達の高らかな歌声、白い雲のような羊の群れ、綺麗な民族衣装を纏う少女、勇ましい騎手らが、壮大で美しい草原に生気を届けます。

　そんな風景の中、突然、空から急に雷が鳴り響いて稲妻が走り、あっという間に夏の暴雨がやってきます。その速さは青空を悠々と旋回する鷹を撃墜するほどです。暴雨の洗礼を受けたゴナス草原は、壮大な馬の一群が激しい嵐の中で猛烈な勢いで走り、その雄大な馬のひづめの音はまるで大地という太鼓を叩いたように力強く響きます。

自然が生む景色

　暴雨が過ぎ去ると、美しい虹が青空に上り、世界の端から端まで、この世のすべての柔らかい色彩を吸収し、空に形作られたようです。こんな自然が生み出す景色は、見る度に心が洗われます。

　そして、ジャッキー・チェンが歌ったあの懐かしい歌「真心英雄（心の英雄）」が頭の中で響きます。

　人生の1分1秒を大切にして

　心の中の夢に全力投球する

　風雨にさらされなくては、虹が見られないように

　簡単に成功する人などいない

　人生の1つ1つの感動を大切にして

　気のおけない友人と手を携え

　心からの言葉と成功のうれし涙を互いに分かち合うんだ

寄り添う赤トンボ

　夏の夕方、川辺ではトンボが、すーっと舞う姿がよく見られます。その夕焼けに映える透明な翼は、金色に輝いています。真っ赤なトンボが川面を優雅に飛ぶ姿は、まるで赤い衣装を纏った少女が軽やかに舞っているようで、その美しい姿に思わず目が釘付けになってしまいます。

　雨上がりの川では、多くのトンボが追いかけっこしたり、仲良く寄り添って飛んだりしていたりと、とても賑やかです。その中でも、寄り添って飛んでいるのは、恋愛中のカップルではないでしょうか。禅の教えには、「前世で500回君を振り返り、千年にわたる思いがあるからこそ、現世で君と寄り添うことができた」という言葉があります。常に寄り添っているトンボたちの縁は、どれほどの時間になるのでしょう。

番組の中でお送りした曲

　1曲目～　万馬奔騰（ばんばほんとう）

　曲はモンゴル草原の広い大地の美しい風景を描きました。曲の冒頭部分では、草原の奥深いところから緩やかな起伏ある様子をモンゴル族の長唄が伝え、モンゴル族の伝統楽器・馬頭琴が数多の馬が走り抜けるときの蹄の響きを奏でます。大地を揺るがす壮大な草原世界へと誘います。

　2曲目～　真心英雄（心の英雄）

　この曲は1993年の映画『新ポリス・ストーリー』の主題歌です。香港出身のカンフースター、ジャッキー・チェンが歌ったもので、彼の人生をリアルに描写したものだといわれています。幼いころから、ひたむきに中国武術を学んで世界的なカンフースターになったジャッキーの壮大な人生がこの歌に込められています。

　3曲目～　晚霞中的红蜻蜓（夕焼けの中の赤トンボ）

　歌は少女の純粋な恋心を赤とんぼが飛ぶ情景の中で歌い上げています。

　歌词：

　夕焼けの中のあなたを忘れられず

　青々とした野原に入り　夕日が心の中に差し込む

　何故あなたに夢の中で会えないのか

　可愛い赤トンボが飛び交うところしか見えない

　一匹の赤いトンボがあなたの部屋の窓の外を飛んでいった

　あなたが気づくかどうかわからない

　私の涙があの弦に落ちた

　私の心の中の歌は誰がわかってくれるのだろう