hanshi1019
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10月も下旬に差し掛かり、北京はますます秋の気配が濃くなってきました。街角では冬用のコートを着たり、薄手のダウンジャケットを羽織っている人もみかけます。晩秋であり、冬の入り口さえも見えて来たように感じることもあります。そして、気温の変化だけでなく、日が短くなったことにも驚かされます。朝、いつもと同じ時間に起きても外が暗かったり、夕方だと思っている時間なのに月が輝いていたり。こんな季節は部屋で本を読んだり、物思いにふけるのが似合いそうです。さて、今日は杜甫の「秋興」を紹介します。
作者、杜甫は盛唐の詩人。洛陽に近い鞏県(きょうけん)の生まれで7歳から詩を作り始めたと言われています。この作品は、55歳の時のもの。前年、杜甫は住み慣れた成都を出て家族と共に故郷を目指し長江を下ります。その途中、白帝城のそばのキ州(四川省泰節県)に居を構え、2年ほど住みました。そこで秋を迎えた杜甫が八連作の詩を詠んだのですが、これはその一首目です。タイトルの「秋興」は秋に物思うこと。「玉露」は玉のように美しい露。霜が降りる前の今頃の葉に降りた露は確かに美しいですよね。「巫山」はキ州(四川省奉節県)の東にある山で「巫峡」はその近くにある長江の渓谷。三峡の1つです。「叢菊」は、群がって咲く菊、野菊でしょう。
「他日涙」過ぎ去った日々のことを思って流す涙です。「故園の心」は、望郷の念。「刀尺」は、裁ちばさみと物さしで、転じて裁縫のことです。「白帝城」は、李白の「早発白帝城」が有名ですが、三国志の劉備元徳が亡くなった場所でもあります。「暮砧 」は、耳で聞くよりも漢字を見たら直ぐに解りますよね。夕暮れに打つ砧のことです。
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