hanshi20160413
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今年の北京の春は、一滴ずつ水時計が時を刻むようにではなく、堰を切ったようにあふれ出て、全速力で駆け抜けていくような感じです。今月の初めに出掛けた公園で迎春花に続いて木蓮やライラック、桃、杏などが咲き出したと思ったら、1週間ほどで散りはじめ、今は山吹が見頃を迎えています。中国はあと半月ほどで労働節=メーデーの連休。これに向けて各公園の花壇ではインパチェンス、日日草など夏の花の植え込みが始まっています。花にばかり目を取られていたら、いつの間にか街路樹にもやわらかい緑の葉が茂り始めました。柳の枝もすっかり新緑の色に染まっています。町の表情がどんどん変わって行き、暑くも寒くもない今から5月上旬が北京では一番いい時期かもしれません。この後、バラや牡丹、芍薬が咲き始めるまで、あと少しです。さて、今日は百花の王とも呼ばれ中国の花とも言われる牡丹を詠った陳与義の「牡丹」を紹介します。
作者、陳与義は北宋の詩人。河南省洛陽の人。北宋から南宋へ移る時代を生き、北宋の最後の都市に左遷され、金の軍が侵入する戦乱に巻き込まれました。北宋が陥落した後、南へと5年ほど放浪します。その後、南宋政権に招かれ役人になり初代皇帝の高宗を支えました。この詩は、金によって北宋が滅ばされてから10年後に作られたようです。タイトルの「牡丹」は、作者の故郷、洛陽の代名詞ともいえる花で、サブタイトルを着けるなら「牡丹~故郷の花を思う」と言ったところでしょうか。胡塵は異民族の兵馬がやってきた時に巻き起こる塵や埃ですが、ここでは金の軍のことです。伊洛は、伊水と洛水の2つの川のことでいずれも洛陽のあたりを流れています。ここでは洛陽の代名詞です。路漫漫は、その故郷洛陽への道がまだ時間がかかることを言っています。青墩は今いる浙江省の地名。竜鍾は、年老いたさまで自分のことを言っていますが、陳与義はこの時まだ45歳くらいです。東風は春風のこと。作者は春風の中に故郷の牡丹の花を思い出したようです。日本なら春風といえば「東風吹かば匂い起こせよ梅の花」となりますが、国が違えば春風に思う花も違うのですね。
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