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「三日李九の荘を尋ぬ」常建

2016-03-08 10:25:23     cri    


 明日は3月3日。日本では桃の節句、ひな祭りですね。もともと、この節句は昔中国でこの日、水辺でお祓いを行い、自分の身代わりになる「人形(ひとがた)」に汚れや厄を移して川に流したことがルーツといわれています。日本に入ってきた時に平安貴族の「ひいな」と呼ばれる紙の人形遊びとが結びついて、今のような雛人形を飾るひな祭り、桃の節句となったようです。本家の中国では、現在はこの習慣はありませんが今でも桃は邪気を払うものとされています。実際は旧暦で行事を行う中国ですから、北京では桃の花便りはまだ届いていませんが、3月と聞いただけでなんだか春めいた気がします。私も昨日から、少し薄手のコートに変え、冬の間お世話になったブーツからパンプスで出勤しています。まだまだ、朝晩はひんやりしていますが、背筋をピンと伸ばして歩きたい季節の到来です。

 作者、常建は盛唐の詩人。長安の人。進士に及第しますが、その後は思うように出世できず、琴や酒で気を紛らせたといいます。晩年は、現在の湖北省武漢あたりに隠居したようです。自然の景色を詩にすることに長けていました。

 タイトルの「三日李九の荘を尋ぬ」は、3月3日に友人の李九の別荘を尋ねたという意味です。李九の李は苗字ですが九は名前ではなく李家の九番目の男子と言う意味です。1句目の「東渡頭」は東の渡し場の辺り、2句目の「永和三日」は永和九年=353年3月3日のことで、王羲之たちが会稽、今の紹興酒でお馴染みの紹興の蘭亭で曲水の宴を開いた日と言われています。この日にちなんで、自分も舟で友達の李九を尋ねようと言っています。杯が自分の目の前に流れてくるまでに詩を作り発表するという水に関連した遊びです。やはり、出掛けるには水にちなんだ軽舟なんですね。中国語の「故人」は、亡くなった人ではなく昔からの友達のことで、タイトルにある李九です。後半の3句、4句は春の美しく輪郭がほわっとした景色が生き生きと目に浮かびます。柳の緑、桃の花、水の流れ、日本の春と相通じる情景です。詩の奥深くにあるもの、技巧などはありませんが、ぬるんできた水や空気を感じる春をよく表していると思います。

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