hanshi1014
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日本では体育の日の三連休明けの週ですね。こちら中国は国慶節の7連休が明けて1週間が経ちました。私は、世界遺産の「廬山」に行ってきました。廬山は昔から景勝の地として知られ、多くの文人墨客が訪れています。ここでは有名な漢詩もたくさん誕生しています。李白の廬山の瀑布、清少納言の枕草子にも引用された、白居易の「香炉峰の雪は簾をかかげてみる」の香炉峰もこの廬山の峰の1つです。その地に行って詩人と同じ目線で景色をみると、「なるほど」と詩人の心が見えてくるような気がしました。今回は、廬山のふもとの町、九江で煙水亭というところを見学した時に、思いもかけない発見がありました。ここは白居易が「琵琶行」という詩を作った場所でした。この詩のことを私は詳しく知りませんでしたが、詩が紹介されている碑を見て驚きました。「楓葉荻花秋瑟瑟」という文字が並んでいたからです。高校の時に作家の井上靖さんが母校と言うことで講演に来てくれました。敦煌など中国の話が中心でしたが、その中で「楓葉荻花秋瑟瑟」という言葉を紹介してくれました。どういう脈絡だったのか、どういう意味かはよく覚えていませんが、この言葉の音が気に入って、ずっと覚えていました。その一句がここで作られた「琵琶行」の一句として紹介されていました。まさに時空を超えて、30年以上も前、沼津でこの言葉を聞いた高校生の私に出会えたような気がしました。
作者、白居易は中唐の詩人。白楽天の名前でも知られている日本でも有名な詩人ですね。今日の詩は、彼が江州、今の江西省九江市あたりに左遷されている時に作った88句の長い詩です。その最初の8句を紹介しました。潯陽江は長江のことで、このほとりで客を見送る時に作られました。「楓葉荻花秋瑟瑟」、たった七文字が秋の様子をいきいきと表しています。目に見える色づいた楓と白いススキに似た荻の花。瑟瑟は淋しく吹く風を形容する言葉で、秋風にぴったりです。酒を飲んで陽気に送り出そうとしても、音楽がないのでいま1つ盛り上がらない。「茫茫」は果てしなく広がるイメージですから、長江の川幅の広さを詩的に表現しています。すると、この水面から、つまり暗くて見えないけれど他の舟から琵琶を演奏する音が聞こえてきて、その素晴らしさに帰ることも出発することも忘れてしまう。この後、詩はこの琵琶を弾いている落ちぶれた長安の女の身の上話を紹介します。これに白居易は自分の左遷された身の上を重ねているのですが、こんな絵のような詩が作れるのも都の激務ではなく、地方の閑職だからこそかもしれません。
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