20150805hs
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今週の土曜日、8月8日は早くも立秋です。今年の日本は随分、暑さが厳しいようですから、まだどこにも秋の気配は感じられないかもしれませんね。今週の北京は夕方きれいな虹が出たり、すがすがしい青空が広がったりして、いつも以上に空をよく見上げています。青空の色が、透明感のある水色だったり、そこに浮かぶ雲が箒で掃いたような形をしていたり、北京の空は一足早く秋を感じさせてくれます。もう1つ、季節の移り変わりを教えてくれるものがあります。街中を歩いていると、夏物在庫一掃セールをしているお店が多いのです。洋服やサンダルなど、3割から半額という文字をみかけると、つい店内に入ってしまいます。でも、そこは在庫セール、ちょうどいいサイズがなく、何も買わずにでてくるのですが。暑い、暑いと言いながら自然も人の暮らしも、一歩ずつ着実に夏の終わりに向かっているようです。今日は、範成大の 「夏日田園雑興」を紹介します。
作者、範成大は南宋の詩人。今の江蘇省蘇州の人。陸游や楊万里と並んで南宋を代表する詩人です。役人としていろいろな役職を歴任しました。体調不良を理由に引退し、68歳で世を去るまで蘇州郊外の石湖のほとりで悠々自適な生活を送りました。この石湖のほとりで見た風景などを詩にしているうちに、「田園雑興」というタイトルで1年間で60首になりました。これを季節ごとに「春日」「晩春」「夏日」「秋日」「冬日」の5つに分け、それぞれは12首。今日紹介したのは「夏日」のなかの9首目の作品です。1句目の黄塵、中国の土地はまさに黄土ですから、埃の色は黄色。ほこりにまみれた汗は、漿、麦の粉をといた水のよう、納得です。井香りは、香ばしい井戸水の意味ですから、作者の家には、冷たい井戸水があったのでしょう。確かに、現在、一般公開されている範成大の石湖の別荘には、清水がこんこんと湧き出ている「石湖」と名付けられた井戸があるそうです。この詩は、すごく暑い風景の描写から始まっていますが、2句目の井戸水、4句目の柳の木陰を吹き渡る涼風と読み進むうちに涼やかな気分になってきます。間もなく、暦の上では秋を迎えますが、まだまだ厳しい暑さが続きます。せめて、漢詩の世界で涼をとってください。
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