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「三衢道中」曾幾

2015-06-11 15:40:58     cri    

 まもなく6月。日本では、そろそろ「梅雨入り」が話題になる頃でしょうか。梅雨のない北京は、からっとしてはいるものの早くも30度を超える暑い日が続いています。

 梅雨寒を経て、本格的な夏を迎える日本と違い、北京はもう夏本番の様相です。街行く人もTシャツ1枚、シャツ1枚という人がほとんどです。私も夏のワンピースで出勤しています。5月末の服装は8月頃の服装とほぼ同じです。先日、レストランで蚊に刺されました。自宅にも蚊の姿を発見。街角にはスイカも登場していますし、衣食住、すべての場面が夏になったようです。今日紹介する作品は、今頃、梅の実が黄色く色づく頃に作られたものです。では、曾幾の「三衢道中」を紹介します。

 作者、曾幾は南宋の詩人、江西省の人。この時代の大詩人といわれる陸遊の師匠で陶淵明を始祖とする江西派の所属でもあります。また、成績優秀で役人としていろいろな職を歴任しました。今日紹介した、「三衢道中」の「三衢」は浙江省杭州市の南西200キロに位置する衢州市のことで、彼はこの付近の提刑という地方を巡る役人をしていました。タイトルの「三衢道中」は三衢の道中で詩を作るというような意味ですから、提刑の仕事で衢州あたりを旅していた時のものでしょう。梅の実が色ずく、つまり梅雨の時期なのに、毎日晴れ渡る。梅雨のない北京なら納得ですが、浙江省あたりは梅雨がありますから、この時は空梅雨だったのでしょう。舟を浮かべて移動していたのに、渓流の上流まで遡ると、もう舟が進むような川ではなく、川の舟とは反対に山の路を行くことになる。「緑陰減ぜず」山の中、木々の葉が鬱蒼と茂った様子が目に浮かびます。初夏のやさしい緑、新緑とは違って夏本番のイメージです。ここで、耳に入るのが黄鸝、チョウセンウグイスの声。蝉の声なら、いっそう暑苦しさを感じますが、ウグイスの声となると美しく軽やかな感じです。梅の実の黄色、生い茂る葉の濃い緑、川の舟と山の路、視覚と聴覚、いろいろなものが対になっていて技巧的でありながら、情景がすっと目に浮かぶ解りやすい詩でもあります。

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