聞き手:王小燕
前年の世界遺産「黄山」や「曲阜」などの紹介が視聴者の中国への興味を誘いました。この勢いにのり、大野さんはその後も、制作チームとともに中国の世界遺産のロケ=撮影を続けます。
今回は武凌源、武当山、周口店のロケに関する思い出です。ちなみにこの3箇所は離れていますが、この3本を一気に語るのは、何か理由でもあるのでしょうか?
テレビの仕事はカメラマン、照明、音響、ディレクター、プロデューサーなど、多くのスタッフのチームワークからなっています。「TBS世界遺産」では、最初はディレクターとして現場に携わっていた大野さん。番組の回数が重なるにつれ、仕事のシフトがプロデューサーへと変わっていきました。そして制作段階が進むにつれ、それぞれの担当者の気持ちに微妙なズレが生じると振り返ります。
「ロケが終わり、帰国の飛行機に乗ると、カメラマンなどは仕事が終わったので、気楽になりますが、ディレクターはこれからの編集などのことを考え真剣に悩み続けます。満足の行く映像が撮れていない時、荷物室だけが火事になってくれないかと思ったことも」
一本一本の番組は、どのようにして完成していくのか。制作者として自分の番組をどう評価するのか。今回はベテランの知られざる心の一面に迫ります。
(左)武陵源(右)張家界
(左)武当山(右)周口店
■大野さんの思い出から
【武陵源】
主として張家界でロケ。ハリウッド映画「アバター」にも出てきた絶景が有名な景勝地です。ところが、山の絶壁のように見えるここは実は山ではなく、谷なのです。日の出も日の入りも、谷底では撮影ができません。毎日、機材を担いで、がけを登っていかなくてはなりません。体力との勝負でした。
【武当山】
武術流派の「武当派」の大本山。道教が盛んな山でもあります。90代の女性道士に話が聞けたのは良かったですが…
【周口店】
正直な気持ちは、そこに「北京原人」がいてくれれば、取材させてもらえるのに・・・しかし、もちろん実際はいないのです。では、どう番組を構成すればよいのか、真剣に悩みました。
とりあえず、下調べのつもりで北京にある「古脊椎動物と古人類研究所」を訪問。ところが、その受付で思いもよらない出会いがありました。大野さんたちが日本語で話をしていると、足を止めて話かけてくれた人がいました。なんと、その方の紹介で、1930年代に北京原人の頭蓋骨の発掘に参加した考古学者・賈蘭坡氏にご自宅で話を伺うことができることに。翌年、賈先生は約束どおりに、取材に応じてくれます。そして、その翌年に他界されました…
今回もここでしか聞けない番組制作の秘話が盛りだくさんです。ぜひお聞きください。
【プロフィール】大野清司(おおの きよし)さん
1949年、東京都生まれ。
東京大学卒業後、1974年に株式会社TBS映画社(現社名:TBS VISION)に入社。主にドキュメンターリ番組のディレクター、プロデューサーとして番組制作に係わる。特に、1979年からは海外取材番組を担当し、世界60ヵ国を取材。
【主な担当作品]】
・『美をもとめて』シリーズ、『世界の子供たち』シリーズ
・『世界めぐり愛』シリーズ、『世界遺産』シリーズ
・『遥かなるアンコールワット』、映画『敦煌』公式記録VTR
・中日共同制作『万里の長城』(日本TBS&中国CCTV)
・TBS開局40周年記念番組『日本海大紀行』
・『緒形拳:シルクロード列車の旅』
その他、多数
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