CCTV(中国中央テレビ)で放送されたドラマ『紅衣坊』が話題を呼んでいます。その中で、主人公のお兄さん役を演じる俳優は、実は正真正銘の日本人。矢野浩二さんという俳優です。
中国人の視聴者は誰もが彼の顔を知っています。矢野さんが演じるのはその多くが、悪役の日本軍人です。『記憶の証明』をはじめ、戦争を描いたドラマで、矢野さんは、当時の軍人たちの複雑な心理を描き出し、その演技が評価されています。
もともと、日本のタレント事務所、サン・ミュージックに所属していた矢野さんは、2000年に、ドラマ「永遠な恋人」撮影のために、初めて北京にやってきました。監督、スタッフとの共同作業が楽しく、北京での生活も居心地よく感じた矢野さんは、帰国の飛行機の中で、「中国に絶対再び行くぞ。役者として勉強するぞ」と決心しました。その1年後の2001年に、矢野さんは、一人で中国にやってきて、夢を追いかける毎日を始めたのです。
しかし、来た当初は、そううまくいきませんでした。まず何と言っても言葉の壁です。中国語が話せなかった矢野さんに、仕事はなかなか回ってきません。苦しくて、日本に戻ろうと考えたこともありました。でも、「日本に戻ったら終わりだ」と自分に負けたくない矢野さんは、諦めずに「絶対いいチャンスがある」と自分に言い聞かせながら、がんばってきました。
努力は人を裏切りません。学校に通って中国語を学んだ矢野さん。言葉が話せるようになると、出演のチャンスがだんだん増えてきました。ドラマ『平和へ向けて』の中での明治天皇の役作りは、スタッフと、そして多くの視聴者に認められました。そして、2002年撮影されたドラマ『記憶の証明』では、矢野さんは劇中の日本人の一人、「岡田」の複雑な心理をよく描き出し、旧日本軍人の残酷なイメージとは異なる、生き生きとした人間性を表現しました。これにより、全国の視聴者は矢野浩二という日本人俳優を知ったのです。
これまで、矢野さんは10数本のドラマに主演し、今年初めから放送されているCCTVの『紅衣坊』での演技も高い評価を得ています。
実はそんな矢野さんが今一番演じたい役は、「普通の中国人」なんだそうです。彼は、別の国の、しかも一般の庶民を演じることは、役者にとって一つの醍醐味であり、困難だが、やりがいのある挑戦だと考えています。
諦めず、挑戦を続けたからこそ、中国の視聴者に認められた、そして今や多くの中国人に愛されている俳優、矢野浩二さんがいるのでしょう。
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