生活のためにはじめた 石材ビジネスで奮闘
張:今のお仕事について具体的にお聞かせください。
安:中国福建省から石材を輸入し、日本で卸販売しています。販売先は関東や東北の石材店です。
福建省は、墓石や建築の材料となる花崗岩が豊富なことで世界的に有名です。20年前から、日本企業が福建省に進出し、技術指導をしているため、職人の技術レベルはすでに日本並み、あるいは日本以上になっています。日本で流通している高級石材の9割が中国産になりました。
日本人の同業者と競争して勝つためには、価格を安くし、さらに品質を良くしなければ売れません。逆にいえば、これをシッカリしておけばかならず売れます。そうやって努力してきました。
私が、この業界に入ったのは偶然のことです。もともと文学を志して大学に入ったこともあり、文筆活動で身を立てたいと思っていました。10年前には、文革期の体験をまとめたノンフィクションを出版したこともあります。
しかし、現時点の日中関係からみれば、文学活動や文化交流より商売の方がまだやりやすい。まずは生活をしなければなりませんから。
張:日本での起業は、成功ですか、それともまだ成功とはいえないとお感じでしょうか。
安:成功の面もあれば、失敗した面もあります。
墓石の上にも3年間どころかなんと墓石の上に10年間もかじりついていました。ビジネスなんてとてもできない、と思っていた文学青年が、競争の激しい日本で、アッという間に10年以上も会社を経営しているんです。おかげで私自身は幅の広い人間になれました。
最近になって10年を節目に「墓石一般検品基準」という、墓石のガイドラインを作成してみました。それが専門誌の月刊『石材』(05年9月号)に載ったところ話題になり、チョット気恥ずかしい感じがしています。この業界は、100精職人の目利きで成り立っています。ですから、勘と経験だけで検品するため、トウ検品基準というものがありませんでした。しかしそれをコツコツと集めたデータをもとに数値化していったのです。石は自然物なので、この数値をそのまま使うことはできませんが、参考にすることはできます。これがあれば、作る人も買う人も検品しやすくなり、日本の墓石業界の発展につながると自負しています。
張:今の言葉にビジネスマンとしての風格と自信を感じました。最近、日本で起業する中国人が増えていますが、何かアドバイスはありますか。
安:中国人は独立心が旺盛で、すぐにでも独立したがる人が多いですが、日本の商習慣を学ぶためには、日本企業に就職して、一定期間、修行を積んだ方がいいと思います。
張:私もその通りだと思います。では、今後の抱負をお聞かせください。
安:やはり、日本と中国の文化交流をビジネスにしたいと思います。
ちょうど今、小泉純一郎首相の靖国神社参拝(05年10月18日)などもあり、日中関係がギクシャクしています。この政治面の難しさの大きな原因は、やはり文化面の交流が足りないことにあります。私は日本で長く暮らしているので、日本人の気持ちが理解できる、もちろん中国人の気持ちも理解できる。私に関係がある分野は、ちょうど日中間の文化交流事業です。
相手を理解しようという誠意をもって接すれば、相手もかならず変わってくると思います。あきらめないで努力しつづけることです。
張:草の根レベルの交流を進めたいということですね。すばらしい計画ですね。がんばってください。私どももぜひ応援していきます。
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