段躍中さんのプロフィール
段躍中さんは91年に来日した元「中国青年報」記者。在日中国人社会の情報源としてまとめた本「在日中国人大全」で一躍注目され、現在は日本僑報出版社編集長、日中交流研究所所長として、日中間の様々な課題について積極的に提言を行っています。
取材に当たったのは、張国清・北京放送東京支局長です。この取材記事は東方通信社発行の週間雑誌「コロンブス」2005年10月号に掲載されています。
張国清・北京放送東京支局長:段さんが来日されたのはいつですか。
段躍中・日中交流研究所所長:中国青年報の記者だった91年、大学院の研究生として北京から日本に留学しました。約9年間の努力によって、2000年3月に、新潟大学大学院の博士課程を修了し、念願の博士号を取得しました。
張:私は今年5月末に日本に来たのですが、いろいろな方から段さんの活躍ぶりを聞いて敬服しています。段さんは、日中両国語の月刊誌「日本僑報」を出版されていますが、創刊したのはいつですか。
段:96年の4月です。当時は大学院に在籍していました。もともとジャーナリストだったので、中国人の新聞、出版活動を研究対象に選んだのですが、その一環として日本で実際に出版を経験してみたいと思いました。そこで、まずテスト版を作ることから始め、96年8月に正式に創刊しました。以来、9年になります。
張:その間に、いろいろな本も出版されました。段さんのオフィスを見るだけでも、その努力や苦労が分かります。
段:実際に出版を始めたのは98年で、1作目は約1000頁、1万人、5万件の情報を集めた「在日中国人大全」という本です。記者でしたから書籍出版の経験はなく、未知のチャレンジでした。出版のキッカケは、日本に古くから住む華僑と新華僑に、もっと交流してほしいと考えたからです。当時、新しく日本に来た新華僑は日本社会のルールを守らないとよくいわれたことから、両者は交流して日本社会について学ぶべきだと思ったのです。だから、この本には古くからある華僑の団体なども載せ、新華僑にとっての情報源になるよう努めました。
張:レイアウトなども段さんが自分でやったそうですね。
段:ほとんど自分でやりました。1頁で何千円もかかると聞き、外注したくてもできなかったのです。そのために独学で、試行錯誤しながらやりました。
張:一番苦労したことは何ですか。
段:やはり中国人ですから、日本で日本語の本を作るということが難しかったですね。中国語で編集するのなら自信はあるのですが、私は日本に来てから日本語の勉強をはじめたので、日本語力が不足していると痛感していました。そこで、独自の勉強方法を考えました。例えば通学通勤するときは、ずっと日本のラジオ放送を聞いていました。家に帰っても、まずラジオのスイッチを入れて、それから着替えました。また、日本語の文章を書く訓練を徹底的にやりました。そうした努力をつづけた結果、来日してから1年後、短い投書が新聞の投書欄に掲載されました。これが大きな励みになりました。内容は「外国人の明るい面も報道してほしい」というものでした。日本のマスコミは、在日外国人のマイナス面ばかり報道しているような気がしていたからです。
張:これまで、本を何冊出版されましたか。
段:この9月現在で120冊になります。平均すると年に10冊以上です。ただ、96年から98年まではほとんど月刊誌で、書籍を出版するようになったのは「在日中国人大全」を刊行してからですね。実質7年間で120冊ということになります。私はずっと、日中相互理解を深めるために、日中両国に向けて日中両カ国語で発信したいと考えてきました。
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