会員登録

政府活動報告を読んで

2017-03-13 17:15:52     cri    

 年1回開催の全国人民代表大会全体会議で初日に発表される政府活動報告。中国政府が前年の活動をどう総括し、本年の目標をどこに定めているのかを知る非常に重要なものです。特に中国政府は共産党の指導する超安定政権であり、そこで語られたもの、語られなかったもの、語られるようになったもの、語られなくなったものを見れば、中国政府の現状認識や今後の姿勢がある程度読み取れます。

 今年は何といっても「習近平総書記の核心の地位を明確にした」という文言が目を引きました。中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議での決定を受けてのものであり、今回、行政文書である政府活動報告にも盛り込まれたことで、習総書記のリーダーシップがさらに強い影響を与えていくことは必至と見られます。

 今回の政府活動報告は国内改革、対外開放の路線が堅持され、不作為を容認しないことが謳われましたが、同時に安定維持も強調した内容になっています。改革も開放も現状変更の試みであり、多かれ少なかれ不確定・不安定な要素をもたらします。改革開放を三十数年にわたって続けてきた中国が、安定した中でこれ以上の改革と開放を進めていくのは非常に難しくなってきており、安定と発展の優先順位を判断するためのより強いリーダーシップが求められている、習総書記の核心の地位を政府活動報告に書き入れたのもこのような背景があるのではないでしょうか。

 また、今回の全人代はイギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政権誕生等、グローバル化への反動とも捉えられる動きが起きている中で開催されたものであり、中国政府が今の世界をどう認識し、どうすべきと考えているのかも注目されましたが、グローバル化を支持することが確認されました。サービス業や製造業で外資参入をさらに緩和し、地方政府が法定範囲内で企業誘致のための優遇政策を制定してもよいとしました。これにより、今後は地方政府が外資誘致のための政策を相次いで打ち出す可能性があり、注目されます。

 懸案となっている過剰生産能力・余剰在庫・高レバレッジの解消、コスト低減、ウィークポイントの補強は議論の余地のない問題として認識され、数値目標も盛り込んだ取り組みが謳われており、多少の波はあっても対策は順調に進められると思われます。

 昨年に続き、今回の政府活動報告にも貿易総額と外商直接投資総額が盛り込まれなかったことは残念でした。中国はGDP世界第2位の経済大国であり、その動向を世界中が注目しています。順調な時もそうでない時も数字を示し、その時々の状況をどう認識しているのかを発表していくことが信頼の醸成につながると思われます。来年の政府活動報告に期待したいところです。(作者:泉川友樹 日本国際貿易促進協会職員)

関連ニュース
写真トピックス
コメント
今週の番組
今日熱点
快楽学唱中文歌
特集ダイジェスト
LINKS