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梅蘭芳氏訪日時の日本側スタッフ、60年前の資料を寄贈

2016-05-12 20:40:08     cri    

 1956年、梅蘭芳氏(故人)が率いる京劇訪日団の日本公演時、日本側スタッフの一員であった稲垣喬方氏(85)が北京を訪問、5月11日、当時の資料数百点を北京護国寺街にある梅蘭芳記念館に寄贈しました。

 「60年間温めてきた宝だ。今日は娘を嫁がせる気持ちで梅蘭芳記念館に寄贈する。良い嫁ぎ先が見つかったので、とても嬉しい」

 厚さにして約8センチの資料を秦華生館長に手渡すと共に、稲垣さんは微笑みながら胸中の思いを語りました。


北京・護国寺街9号の梅蘭芳記念館入口


梅蘭芳像をバックに行った贈呈式

 これら資料には、1955年、市川猿之助が率いる大歌舞伎訪中公演時のもの、またその翌年、日本側の招きに応じ、梅蘭芳氏が率いる京劇団体の訪日公演前後の中日双方における新聞報道、舞台裏の写真、梅蘭芳氏や同じ京劇役者である娘の梅葆玥女史・息子の梅葆玖氏からもらった記念写真、上演演目の紹介パンフレット、中日のスタッフ同士の往来書簡などが含まれています。中には、訪日団帰国後、梅蘭芳団長と劇作家の欧阳予倩副団長二人のサイン入りの礼状も。これまでは、稲垣さん個人所有のものとして、60年余りにわたり自宅で丁重に保管されてきた資料ですが、「自宅で眠っているよりは、もっとたくさんの方たちに当時のことを知ってほしい。その一助になれたら嬉しい」と、寄贈にあたり、その思いを語られました。


(左)1955年大歌舞伎訪中のプログラム表紙 (右)1956年中国訪日京劇代表団プログラム表紙


(左)梅蘭芳氏から贈られた記念写真(右)梅団長と欧陽副団長のサイン入り礼状


(左)稲垣さんのアルバムから、梅団長(右端)、欧陽副団長(車椅子)と休憩場に会話を交わす稲垣さん(右2)
(右)当時、父親の協力も得て収集した新聞のスクラップを説明する稲垣さん

 梅蘭芳記念館では、玄関口にある梅蘭芳氏の大理石像をバックに、資料の寄贈式典を執り行いました。梅蘭芳氏のひ孫で、同記念館文化保護センター副主任の梅瑋さんは、「たいへん貴重な価値がある。とりわけ、日本側の関連報道を大変まとまった形で収集されている点をありがたく思っている。中国側の報道を中心に収集した記念館側資料への良い補充になる。中には、初めて見た資料もある」と稲垣氏と厚い握手を交わしながら、感謝の気持ちを述べました。

 秦華生館長は寄贈証書を渡し、「これらの資料は今後、デジタル化による整理や、中国語への翻訳作業を進め、その成果を公に発表していく」と語りました。


(左)寄贈資料を受け取る梅瑋氏 (右)稲垣氏と握手を交わす秦華生館長

 京劇の名優梅蘭芳氏(1894-1961)は、1919年・1924年・1956年の三回にわたって訪日公演し、中日の文化交流に不滅の功績を残しています。その初訪日から百周年にあたる2019年に、日本で一連の記念行事を行う企画が決まった矢先に、梅派の伝承人であり、末子の梅葆玖氏が、惜しくもこの4月26日に82歳でこの世を去りました。ひ孫の梅玮さんはこれについて、百周年記念計画は予定通りに行い、稲垣氏から寄贈された資料もその一部として有効利用すると語りました。

 なお、写真家、現代表装の専門家としても知られる稲垣氏は、1930年東京生まれ。1942年から1946年にかけて、両親と共に北京で少年時代の4年間を過ごし、その期間、中国文化を深く愛する母親、書家稲垣黄鶴女史の影響を強く受けて育ちました。日本の敗戦で帰国後は、宝塚劇場での見習いを勤め、歌舞伎座の復活後は、同劇場の裏方スタッフとして勤務。少年期、北京滞在暦があるからと、1955年には大歌舞伎訪中団の舞台美術と大道具スタッフとして抜擢され、先遣隊として中国に入り、北京・上海・広州公演の全行程に参加。翌年の京劇の訪日公演でも、同じ担当で東京・大阪・京都・福岡の全日程に同行しました。

 最後に、稲垣氏は、60年余り前の大歌舞伎と京劇の相互訪問の今日的意義をこう語ってくださいました。

 「日中両国に国交もなかった中、よく実現した公演だったと思う。両国の関係者が平和と友好のメッセージを相手国に届けたい一心で実らせた企画だった。逆に言うと、あのような状況の中でも、あれだけの行事ができたので、今後はそれ以上に凄いイベントができるはず。これからも日中ががっちり組んで、互いの長所を取り合って共に成長してほしい」


大歌舞伎訪中時の中国側スタッフが1956年春に稲垣さん宛てに書いた書簡


(左)その後も交流を続けていた梅葆玥、梅葆玖両氏から届いた写真

 (取材:王小燕、写真提供:「人民中国」)

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