第九章:環境保護

1.中国と『生物多様性条約』

 1992年の国連環境開発会議(地球サミット)後、中国政府は自らの国情に従い、責任ある姿勢で大会での約束を果たした。国家経済を持続的に発展させる戦略を明確にすると共に、この戦略の精神を国家の各経済政策において貫いた。1994年、国務院の許可の下で公布した『中国21世紀議程〜中国21世紀人口、環境及び発展白書』は、持続可能な発展戦略を表したものである。1996年、全国人民代表大会によって採択された『中華人民共和国国民経済と社会発展第九次五ヵ年計画と2010年遠景目標要綱』では、中国の持続可能な発展戦略を断固実施する方針を更に明確にした。

 中国政府は、自然資源の持続可能な利用と良好な生態環境は、持続可能な発展戦略を実施するための前提条件だとして、生物多様性の保護や土壌流失と砂漠化の防止、森林の拡大や都市、農村の生態環境の改善、環境破壊と汚染の防止、世界環境保護における協力への参与などの措置を通じ、国家の持続可能な発展戦略を効果的に実施していく方針である。中央政府各部署の政策、計画と活動、及び地方政府の国民経済と社会発展計画の中において生物多様性の保護と持続的な利用に関する内容を盛り込んだ。

 伝統的な計画経済から市場経済へと変わりつつある中、中国政府は、農業生産においては粗放型経済成長モデルから集約型経済成長モデルへの転換を促している。人口の増加が速いため、過度に自然資源を利用したことで、生態環境の悪化を導いた。土壌流失や砂漠化が激しくなり、生物資源の消耗が早過ぎる点で、国家経済が著しく抑えられた上、生態環境が破壊された地域において貧困化を深刻化させた。中国政府は、農村の経済政策の改革を重視し、集約型生産モデルに励み、植樹造林や土壌流失防止、砂漠化防止など、生態建設プロジェクトや生態農業技術の開発などの実施を奨励している。生態建設プロジェクトは、農業生産と保護、生物多様性の持続利用を効果的に結びつけた。

 数年をかけ、生態建設の実践から多くの経験をまとめた。例えば、大型防風林の整備やオアシス建設の経験、傾斜地を段々畑にし、生産量が高く、安定した畑を整備する経験、大型水利施設や小型蓄水土壌保全プロジェクトを建設する経験、耕地を森林や草原に戻し、生態植生を回復する経験、経済林や生態林、木や草を交互に栽培する経験、旱魃地域での農業生産や節水型灌漑、先進技術を駆使する経験、山、水、畑、森林、道路など狭い流域を総合的に整備する経験、荒山を請け負い、植樹造林や草を栽培する経験、草地の衰退や砂漠化、アルカリ化を整備する経験など、これら経験と方法は生物多様性の保護に積極的な役割を果たした。

 

2.概略

 中国では、大規模な工業化が半世紀の歴史にすぎないにもかかわらず、人口が多く、発展が速いことや、過去の政策上の問題のため、環境や資源の問題が目立ち、状況が深刻になっている。主に、大気汚染や水汚染が深刻で、土壌の流失が日増しにひどくなり、砂漠化した土地の面積が絶えず拡大していること、森林面積が激減し、天然の植生や生物の多様性が破壊され、生物種の絶滅が早くなるなどの面に現れている。

 1970年代初めから、国連人間環境会議の推進の下で、中国の環境保護が始まった。40年あまりの発展を経て、比較的に整備された汚染対策や、資源保護の法律体系と政策システムが確立され、環境に対する投資も次第に増えてきている。しかし、先進国に比べると、中国の環境保護の政策システムは、まだ完備していない。政策の内容から見ると、多くの政策と措置は、各級政府の旧来の計画や行政の命令によるもので、多くの地域で、政府の環境保護部門は法律執行の力が弱く、各政策の実施が保証されていない。これらの問題は、環境の質の改善を直接的に制約している。

 現在、中国政府はすでに環境保護を一層強化する戦略的な策を決定し、経済や社会において健全で快速な発展を実現させると同時に、人と自然が、調和のとれた統一を維持していくことに尽力している。

 

3.水環境の状況

 中国の地表の水資源は主に、長江、黄河、松花江、遼河、珠江、海河、淮河の7大水系に集中している。環境保護省が公布した『2012中国環境状況公報』によると、全国の水環境は楽観視できず、長江、黄河、珠江、松花江、淮河、海河、遼河、浙閩地域の河川、南西部諸河川と北西部諸河川など十大流域における国有部分の水質は、Ⅰ~Ⅲ類、Ⅳ~Ⅴ類、Ⅴ類にある割合はそれぞれ、68.9%、20.9%、10.2%で、珠江流域、南西諸河川、北西諸河川の水質が良く、長江と浙閩地域の河川の水質が良好で、黄河、松花江、淮河と遼河は軽度汚染、海河は中度汚染という。

 モニタリングしている60の湖やダムで、富栄養化を呈しているのは25%ある。198の都市、4929ヵ所の地下水モニタリング場所で、水質が優良―良好―比較的よいとされた割合は42.7%で、比較的悪い―極めて悪いとされたのは57.3%だった。

 全国の沿岸海域の水質は良くはないが悪くはない状態にある。四大海域で、黄海と南海沿岸の水質が良く、渤海沿岸は普通、東海沿岸の水質は最も悪いとされた。

 

4.大気環境の状況

 ここ数年、中国の都市の大気環境は基本的に安定し、一部の都市の空気が好転し、二酸化硫黄(SO2)と粒子状物質(PM10)などの含有量が持続的に低下した。しかし、わが国の汚染物排出の総量は依然多く、地域性大気汚染問題が相変わらず目立ち、大気環境が深刻になっている。2012年に公布した新しい基準『環境空気質量標準』によると、中国の325の地域及び都市において59.1%が空気の質が基準値に達しておらず、113の環境保護重点都市においては76.1%が基準値に達していないということである。酸性雨の汚染地域は国土面積の12.2%を占め、主に、長江沿岸及びそれ以南からチベット高原の東までの地域に分布している。

 

5.生態環境の現状

 森林のカバー率

 近年、世界の森林資源が持続的に減少する中、中国は森林面積と蓄積量の両方が増えた。7回目の全国森林資源に対する全面的調査の結果、2008年末までに、中国の森林面積が1992年の1.34億ヘクタールから1.95億ヘクタールになり、森林カバー率は13.92%から20.36%まで増えた。中国の人工林保存面積は6168万ヘクタールで、蓄積は19.61億立方メートルとなり、人口林面積は引き続き世界一位である。

 中国の森林資源は依然多くの課題に直面している。カバー率は世界平均レベルの3分の2しかなく、世界で139位。一人あたり平均森林面積は0.145ヘクタールで、世界平均レベルの4分の1足らずとなっている。

 中国は今後、引き続き林業への投入を更に増やし、2020年に森林面積と森林蓄積量を2005年より、それぞれ4000万ヘクタールと13億立方メートル増加させる目標を実現するために努力する。

 砂漠化

 中国は荒漠化や砂漠化となった土地の面積が最大な国で、荒漠化の発生率も高い。近年、荒漠化と砂漠化が一部抑えられ、砂漠化となった土地が全体的に少なくなっているが、一部地域では依然拡大している。

 2011年の第4回全国荒漠化と砂漠化モニタリングの結果によると、2009年末までに、全国で荒漠化となった土地の面積は262.37万平方km、砂漠化となった土地の面積は173.11平方kmで、それぞれ国土面積の27.33%と18.03%を占めている。過去5年間で荒漠化となった土地の面積が年平均2491平方km減少し、砂漠化となった土地の面積も年平均1717平方km減った。

 現在、中国では約4億人が荒漠化の被害を受け、毎年、1200億元の損失がもたらされている。

 土壌の流失

 土壌の流失は、中国の土地資源を破壊する地質災害と環境問題である。土壌流失の全体状況としては一部整備されたものの、整備が破壊に追いつかない状態である。水利省が2010年に提供したデータによると、現在、土壌流失の面積は356.92万平方kmで、国土面積の3分の1を占めている。そのうち、整備に急ぐ必要があるのは200平方km近くある。

 年間平均で流失した土壌は45億トン、それにより、毎年約100万ムーの耕地がなくなっている。西南部の石漠化、西北部の砂漠化、東北部の黒土流失及び全国各地で起きている傾斜面耕地と侵食溝の土壌流失問題が目立っている。

 毎年、土壌流失による経済損失はGDPの2.25%相当で、それにより生態環境にもたらす損失はさらに計り知れないものである。

 湿地

 1990年代から、中国は湿地の保護と利用面で一連の効果的な措置を実施した。それによって、湿地及びその生物多様性がある程度保護されるようになった。2003年の全国第1回湿地資源調査結果によると、中国の湿地面積(河川と池などは除外)は6600万ヘクタールで、世界湿地面積の10%を占め、それぞれ世界で1位、世界で4位である。

 近年、人々の生産と生活が、湿地資源への依存度を向上させ、開発の具合の深まりにより、湿地及びその生物多様性が破壊されつつある。2009年に中国国家林業局が第2回全国湿地資源調査を行った結果、過去10年間で、中国湿地面積が合わせて2.9%減少した。湿地の機能が低下し、既存の自然、あるいは半自然の湿地は国土面積の3.77%しか占めておらず、世界の平均レベル6%より遥かに低いうえ、その面積減少の勢いは効果的に抑制されていないのが現状とされている。

 

6.生物多様性の状況

 動植物の種数

 中国は世界で生物多様性が豊かな国である。脊椎動物が6347種あり、世界の脊椎動物種類の10%を占めている。また、高等植物が3万種あり、マレーシアとブラジルに次いで世界で第3位である。

 中国の大部分が、第三と第四の大陸氷河期の影響を受けなかったため、多くの特有種がある。統計によると、476種の陸生脊椎動物は我が国特有のものだという。

 中国には野生種と生態類型が多いうえ、栽培植物と家庭飼育動物品種及び野生近縁種属も多くある。動植物資源が豊かで、世界動植物の天然遺伝子バンクと言っても過言ではない。

 絶滅の危機に瀕する動植物

 森林資源の減少と野外動植物生息地の破壊により、中国の動植物種の多くが絶滅の危機に瀕している。統計によると、現在、既に200種近くの特有種がなくなり、絶滅の危機に瀕する動植物種は全体の15%か20%を占めているという。

 珍しい野生動物のうち、ヘラジカ、野馬、サイガの姿が消え、野生のジャイアントパンダ、ヨウスコウカワイルカ、華南虎、東北虎、ユキヒョウ、野生ラクダ、ダマジカ、ニホンジカ、ビーバー、ヨウスコウワニなど20種以上の珍しい動物が現在絶滅に瀕している。既存の野生植物種、約6000種が絶滅の危機に瀕している。また、100種以上の植物は極めて危機状態にある。

 我が国の生物種が毎日一種が絶滅、あるいは絶滅の危機に瀕するスピードで減少している。

 外来種の侵入

 外来種の侵入は、非地元原生の生物が新しい生態系に入った後、数が迅速に増えながら広がっていくことで、環境や人の健康及び経済発展に巨大な被害をもたらす生態環境問題である。中国は現在、外来生物の侵入による被害が深刻な国で、分布が広く、種類も多く、被害が大きい特徴がある。統計によると、既に529種の外来生物が中国の34の省クラス行政区に侵入している。

 中国環境保護省が2003年と2010年にそれぞれ侵入した外来種リストを公布した。そのうち、紫茎沢蘭、ランタナ、シンクリノイガ、イネミズゾウムシ、アメリカザリガニなど35種が含まれる。

 

7.汚染対策

 「第11次五ヵ年計画」期間中、水汚染対策への投入は約3000億元、「重点流域」の水汚染対策で積極的な進展を収めた。2006年と比べ、2010年の水質はⅢ類になる、あるいはそれ以上になる割合が13.4%増え、Ⅴ類以下の割合が16.9%下がった。

 2011年から2015年までの「第12次五ヵ年計画」期間中に、国は5000億元を水汚染対策に投入する予定だ。汚染が深刻な水域の水質改善のほか、既存の比較的水質がよい水域を保護する。前期は重金属や有機汚染物などのモニタリングを強化する。2015年、重点流域の主要汚染物の排出総量と、河川に流入する総量の持続的な削減と化学的酸素要求量(COD)の排出総量を2010年に比べ9.7%削減し、アンモニア窒素の排出総量を11.3%削減する。

 これと同時に、全国規模で大気の質に対するモニタリングと対策に取り組む。2012年2月、国務院は「空気質の新しい基準」を公布し、PM2.5の平均濃度規制値とオゾンの8時間平均規制値を増設し、PM10、二酸化窒素などの汚染物の濃度規制値も厳しくした。

 2013年9月、国務院は初めて『大気汚染対策行動計画』を公布し、5年で全国の空気の全体的な改善と重度汚染天候の大幅減少、特に現在、空気汚染が最も深刻な北京、天津、河北、長江デルタ地帯、珠江デルタ地帯などの地域の大気の好転を実現することを約束した。この初めて国務院の名義で公布した大気汚染対策計画には、2017年までに北京のPM2.5など微小粒子物質の年平均濃度を60μg/m³以内に抑える目標を立てた。現在、北京のPM2.5は90~100μg/m³で、先進国の都会より遥かに高い。

 大気汚染の対策として、自動車の排気ガスによる汚染の削減に取り組み、2013年9月、中国国家環境保護省は軽型自動車における国のV排出基準を公布し、ガソリン車の窒素酸化物の排出基準を25%厳しくした。汚染対策での新しい指標である粒子物質の数を新に増やした。この基準は2018年1月1日から全国で実施する予定。北京市は既存の「京V」を止め、繰り上げて「国V」基準を実施する。

 

8.森林資源の保護

 1950年代以来、中国は世界の人工造林の奇跡を創造した。現在、中国の人工造林の保有面積は6200万ヘクタールに達し、世界一である。森林のカバー率は20.365%になっている。

 森林資源を保護するために、2003年に『耕地を森林に戻す条例』を実施し、耕地を森林に戻すプロジェクトが全国25の省、自治区、直轄市で展開され、2006年までに合わせて3200万ヘクタールの耕地を森林に戻した。もう一つの、効果的に森林資源を保護する対策は1998年にスタートした天然林保護プロジェクトである。このプロジェクトは全国規模で天然林の伐採を禁止するもので、2010年の国務院の常務会議で、2011年から2020年まで天然林資源保護プロジェクトの第2期を実施することが決められた。天然林保護プロジェクトは17の省区で全面的に展開されて10年あまり、効果的に保護された森林資源は16.19ムーに達した。

 中国の持続可能な林業発展戦略研究報告の目標は2050年までに、中国の森林カバー率28%まで引き上げることである。

 

9.湿地の保護

 1992年から『国際湿地条約』に参加して以来、中国政府は積極的に湿地資源を救い守り、回復し、多くの破壊された天然湿地が保護された。2011年末までに、すでに各種の湿地自然保護区を614カ所つくり、そのうち、国家級湿地自然保護区が91ヵ所、現在、湿地保護区を主体とした湿地保護エリア、湿地公園、海洋機能特別保護区、湿地多用途管制区など様々な管理の形を結びつけた湿地保護ネットワークを整備した。2012年までに、41ヵ所の湿地が『世界重要湿地リスト』に盛り込まれ、総面積は380万ヘクタールに達した。

 湿地の保護管理をさらに強化し、国際湿地条約を履行するため、2013年5月1日、中国国家林業局が制定した『湿地保護管理規定』を正式に実施した。専門の湿地保護行政保護法が打ち出されるまで、『湿地保護管理規定』は林業システムの湿地保護管理行為を規範化するものである。

 

10.砂漠化防止

 中国政府は砂漠化対策を重要な国策として、毎年、数十億ドルを投入している。三北防護林、天然林保護、京津風砂源、狭い流域の総合対策と耕地を森林に戻すなどのプロジェクトに費やした。同時に、砂漠化対策と貧困扶助、経済発展との結びつき、優遇した土地、金融、課税政策を実施して、民間人の砂漠化対策への参与を奨励している。現在、中国の荒漠生態システムには好転の兆しが見え、砂漠化された土地の面積も減り、生物の多様性が強化された。

 2013年3月、『全国砂漠化防止改造計画』が正式に実施され、今後10年の砂漠化防止改造の計画を明らかにした。『計画』によると、砂漠化防止改造対策として、北方のグリーン生態障壁の構築を重点に、生態を改善し、国民生活を改善することを目標にし、森林と草原を主体として砂漠生態安全体系を整えて強固にすることで、10年間で重点砂漠地域を効果的に整備し、生態状況をより改善する。具体的な目標は、砂漠化となった土地2000万ヘクタールの整備を完成し、2020年までに砂漠化となった土地の半分以上が整備され、砂漠地域の生態状況がより改善されることである。

 

11.生物多様性の保護

 『生物多様性条約』の比較的早い加盟国として中国は、条約に関する国際事務に積極的に参加し、条約を履行する中での重大な問題について意見を発表してきた。1994年に完成した『中国生物多様性保護行動計画』によって、多くの生態環境保護活動には従うべき規則や制度が存在するようになった。中国の生物多様性保護活動をより強化するために、2010年、環境保護省が20以上の部署と合同して『中国生物多様性保護戦略と行動計画』(2011-2030年)を編成し、今後20年間の生物多様性保護の全体目標と戦略任務、優先活動を提出した。このほか、『野生動物保護法』、『草原法』、『自然保護区条例』など、法律や条例を打ち出した。

 野生動物を救うプロジェクトも効果を上げており、全国ですでに250カ所の野生動物繁殖飼育センターを建設している。パンダやトキなど7種の動物を救うプロジェクトを専門的に実施している。現在、中国の野生ジャイアント・パンダの数は1600頭近くなり、危機状態がある程度緩和された。トキの個体群の数は7羽から2000羽以上に増え、そのうち、野生個体群の数は1000羽を上回った。野生ヨウスコウワニの数は152匹、人工飼育の数は1万匹を突破した。クロキンシコウの数は現在2500匹を超えている。海南サンバーの総数は1785頭までに増え、絶滅の運命から脱した。チベットカモシカの数は年々増え、現在では15万匹に達した。

 

12.自然保護区の整備

 2009年末までに、中国には各レベルの自然保護区2541ヵ所整備し、総面積は陸地国土面積の15%、世界平均レベルの12%を上回り、類型が揃い、分布が合理的で、機能が比較的健全な自然保護区ネットワークが整備されている。

 中国初の自然保護区は、1956年に画定した広東省肇慶市鼎湖山自然保護区である。2000年8月に設立された三江源自然保護区は面積が最大で(総面積36.6万平方km)、海抜も最高(平均海抜4000メートル余)、生物多様性も最も集中している自然保護区である。この保護区は青海チベット高原の後背地にあり、長江、黄河、瀾滄江の源の地区に位置している。自然保護区が最も多い省は広東省で270ヵ所あり、管理保護された面積は123.15万ヘクタールある。

 2013年までに、四川省の臥竜と九寨溝、吉林省の長白山、広東省の鼎湖山、雲南省の高黎貢山など32ヵ所の自然保護区は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)から『世界生物圏保護区』に指定されている。

 

13.中国の環境保護活動の進展

 新中国が成立して60年来、特に改革開放以来、中国の環境保護事業はゼロから始まり、小規模から大規模へと、迅速に発展してきた。絶え間ない努力を経て、環境に関わる法律がより整備され、汚染対策に力を入れ、生態環境の保護と整備が強化され、汚染対策への投入が徐々に増やされ、全国の環境汚染の悪化の勢いがほぼ抑制され、環境保護事業が迅速に推進されている。

 政府は環境保護活動を重視

 近年、中央から環境保護省まですべて政府が環境保護、資源の循環利用、省エネ排出削減に対する強い関心を示している。経済の転換期において、国家が環境保護を高度に重視している。2012年、中国共産党第18回全国代表大会の活動報告では「美しい中国」というコンセプトを提出し、初めて単独で生態文明を論じ、生態文明の建設を経済建設、政治建設、文化建設、社会建設と並べ、戦略的なレベルまで引き上げた。このほか、最も注目されるPM2.5という言葉が2012年の政府活動報告に盛り込まれ、大気汚染対策を含む環境問題の注目度を引き上げた。

 2013年に開かれた全国環境保護活動会議で、国家環境保護省は次のようなことを明らかにした。環境と経済の関係を正しく処理し、法律や市場、技術と必要な行政手段を総合的に利用し、改革の全体案、ロードマップ、スケジュールを制定する。微小粒子物(PM2.5)の汚染対策に取り組む。第1陣74都市でモニタリング情報を発表する基礎の上で、環境保護重点都市と国家環境保護モデル都市でモニタリングを実施する。即時かつ正確にモニタリング情報を発表して、大衆の参与を誘導する。

 環境汚染の抑制

 近年、国の環境保護に対する関心度が高まり、汚染対策は、1970年代の「三廃」整備と総合利用を重点にするところからスタートし、1980年代に環境管理を深化する環境保護目標責任制や都市環境の総合整備の定量評価制度、廃棄汚染物許可制度、汚染集中管理と期限つき整備などの制度と措置を推進し、1990年代に持続可能な発展戦略を打ち出し、工業汚染対策は末端対策から生産の全過程に対する管理へ、濃度規制から濃度と総量規制の結合へ、分散型対策から分散と集中が結びつく方法へ、という三つの転換を実施し、大規模な重点都市、流域、海域に対する汚染対策及び生態建設と保護プロジェクトを展開した。近年、国家が環境汚染対策をより重視して、クリーン生産を推進し、循環型経済を発展させるなどに絶えず力を入れてきた。工業の「三廃」対策で成果を収め、主要汚染物の排出総量が抑制され、都市環境の整備力が絶えず強化された。

 生態環境の保護と建設が強化される

 中国は生態環境の保護と改善に一連の措置を講じ、国務院が『全国生態環境整備計画』と『全国自然保護区発展計画』を許可し、『全国生態環境保護要綱』を批准した。全面的に「保護を優先にし、予防を主とする」方針を固め、生態環境破壊が発生する異なる地域、原因、特徴に従い、生態環境保護戦略を推進した。

 中国は植樹造林、土壌保全、草原整備と国土整理など重点生態プロジェクトを推進してきた。森林、湿地、荒漠生態システムの整備及び生物多様性保護を強化し、六大林業プロジェクトの整備を実施し、多くの自然保護区、生態モデル区、風景名勝区と森林公園を設立した。国は『中国21世紀議程〜中国21世紀人口、環境と発展白書』を制定し、国民経済と社会発展において、科学教育による国の振興と持続可能な発展の戦略を明確にした。

 環境の法制化が進展している

 1979年、『中華人民共和国環境保護法(試行)』の公布をきっかけに、わが国の環境保護分野の立法が全面的に展開された。その後、国は『土地管理法』、『鉱産物資源管理法』、『洪水防止法』、『気象法』、『大気汚染防止法』、『水汚染防止法』など法律法規を相次いで公布するとともに、社会の発展に伴い、一部法律に対して修正を行った。

 2002年、中国初の循環型経済に関する法律――『クリーン生産促進法』が誕生した。これは環境汚染対策が末端処理から全過程管理へと転換したことを物語った。2009年1月1日に施行した『循環型経済促進法』は循環型経済を促進する制度が規定された。

 2012年末現在、中国には環境保護関連の法律法規が30部以上ある。これら法律法規は環境保護法規体系の整備、資源環境破壊活動への制限、汚染対策プロセスの加速に重要な役割を果たした。

 環境への投資の増加

 新世紀に入ってから、中国の環境保護に対する投入が明らかに増えた。環境保護への資金投入のGDPに占める割合は2000年の1.12%から2010年の1.95%まで増やされた。全体的に見れば、汚染管理に必要な投入の下限に満ちた。データによると、中央と地域財政の環境保護支出が毎年増え、2000年の654億元から2010年の1443億元まで増やされた。2012年、中央財政の省エネ環境保護支出は1998.43億元に達した。

 国民の環境意識が高まる

 中国の大衆が環境問題をより重視し、環境保護意識がさらに強まり、自覚的に環境保護活動に参加する人の数が数年前と比べ大幅に増えた。国が提唱した省エネ排出削減、エコ消費、プラスチックの袋の使用規制などの環境保護理念に対して、社会各界が呼応し、積極的に参与して、環境保護の理念が広がっている。

 国は大衆の環境保護活動参加を推進している。「6・5世界環境デー」、「アースデー」などのイベントを通じて、エコ消費を提唱し、国民の環境意識を高めた。「エコ中国年度人物」を選ぶことで、大衆の力を掘り起こした。このほか、政府が新聞やウェブサイト、テレビなどマスコミの報道を通じて、環境情報をより公開して、即時に環境活動の状況と動向を通報し、不法行為を公開するとともに、政府管理の透明度を増やし、社会の監督を受け、大衆の情報を知る権利を守った。

 わが国の環境保護における実践の発展に伴い、人々が環境問題に対する認識が深まれ、注目することが絶えず拡大している。

 

 14.中国の環境保護の目標

 2011年、国務院が『国家環境保護第12期五ヵ年計画』を公布し、4つの大きな環境問題の解決を提出した。その中には、水環境の改善、多種の大気汚染物の総合的管理の実施、土壌環境保護の強化、生態保護と監督管理の強化が含まれる。

 水環境改善の面で『計画』は、都市集中式飲用水の水源保護区の許可作業を全面的に完成し、水源保護区内の不法建設プロジェクトと廃棄物排出場所を取り締まること、各重点流域の優先管理部分を明確にし、エリア別に管理を実施すること、重点海域で生物、赤潮、ガソリン漏洩モニタリングなどプロジェクトを増やし、海上のガソリン漏洩事故の応急対策を強化すること、地下水の汚染状況に対する調査と評価を展開し、地下水汚染対策エリア、防止管理エリアと一般保護区の画定をすることをあげている。

 土壌環境保護の面で『計画』は、大、中都市周辺、汚染が深刻な工業鉱産物企業、集中した汚染対策施設の周辺、重金属汚染防止重点エリア、飲用水水源地の周辺など典型的な汚染場所と、汚染された農地を重点に汚染場所や土壌汚染対策と修復の試行を行う。

 生態保護と監督管理の面で『計画』は、大小興安嶺の森林、長白山の森林など25の国家重点生態機能区の保護と管理を強化すること、資源開発や環境への監督管理を推進し、中部、東部地域の自然生態環境を救うこと、2015年までに陸地自然保護区の面積が国土面積に占める割合を15%にすること、2015年までに90%の国家重点保護種と典型的な生態系が保護されることなどを求めた。

 「第12期五ヵ年計画」の環境目標と任務を実施するため、中国は各環境保護プロジェクトに約3.4兆元を投入する計画である。

 

15.中華人民共和国環境保護省

 2008年3月、『国務院機構改革方案』により、国家環境保護総局が国務院の組成部門として中国人民共和国環境保護省に昇格された。

 国家環境保護省の機能は以下の通りである。環境保護の基本制度を制定・健全化すること。国家環境保護に関わる政策、計画を立案し、その実施を取り組み、法律法規を起草し、各部門のルールを制定すること。重大環境問題の統括協調と監督管理をすること。国家の排出削減目標の実施に取り組むこと。環境保護分野において固定資産の投資規模と方向、国家財政の資金配置について意見を提出し、循環型経済と環境保護産業の発展を指導・推進し、気候変動対策に参与すること。源から環境汚染と環境破壊を防止・抑制する責任があること。環境汚染対策を監督管理すること。生態保護作業を指導・協調・監督すること。核安全と輻射安全の監督管理をすること。環境モニタリングと情報発表をすることなどである。現在の環境保護相は周生賢氏である。

 中国人民共和国環境保護省HP

 http://www.zhb.gov.cn

 

16.中国環境と開発国際協力委員会

 中国環境と開発国際協力委員会(略称は国合会)は1992年に中国政府の承認の下で設立された。国内外の環境開発分野のハイレベル関係者と学者からなる、非営利的なハイレベル国際コンサルタント機構である。主な機能として、世界の環境開発分野における成功の経験を交流・普及し、中国の環境開発分野における重大問題を研究し、中国の指導層及び各レベルの政策決定者に将来性や戦略性、警報など、アドバイスを提供するとともに、中国の持続可能な発展戦略を促進し、資源節約型で環境にやさしい社会づくりをサポートすることである。国合会の主席は中華人民共和国国務院の指導層が担当する(2012年までに李克強氏)。

 中国環境と開発国際協力委員会のウェブサイト:

 http://www.china.com.cn/tech/zhuanti/wyh/node_7039797.htm

 

17.中華環境保護基金会

 中華環境保護基金会(CEPF)は1993年4月に設立された非営利団体で、法人資格を持っている社会団体であり、専門的に環境保護事業に従事する初めての民間基金会である。基金会は"民衆から受け取り民衆のために用い、人類に福をもたらす"という原則に基づいて、各種のルートや方法を通じて資金を集める。この資金は、中国の環境保護事業に傑出した貢献をした個人や組織を奨励し、各種の関連活動やプロジェクトを援助し、中国と外国の環境分野での技術交流と協力を展開し、中国の環境保護の管理、科学研究、宣伝教育、人材育成、学術交流、環境保護産業の発展及び外交関連の活動などの環境保護事業の発展を推し進めることに用いる。

 中華環境保護基金会(CEPF)のウェブサイト:

 http://www.cepf.org.cn

 

 18.自然の友

 「自然の友(Friends of Nature)」の前身は「中国文化書院グリーン文化分院」で、1994年3月に政府に認可の下で設立された中国初の民間環境保護団体である。中国全国政治協商会議委員、中国文化書院の梁従誡教授が創始者の1人で、現在の会長である。この機構は、大衆に向けた環境教育を展開し、エコ文明を提唱し、中国の特色があるエコ文化を確立・普及し、中国の環境保護事業を促進することを目的としている。

 自然の友HP

 http://www.fon.org.cn

 

19.中華環境保護連合会

 中華環境保護連合会は2005年4月に国務院の承認を受けて設立されたもので、民政省で登録し、環境保護省の管轄下にある。環境保護事業に熱心な人や企業、公共団体からなる非営利的で全国的な団体である。中華環境保護連合会の主旨は、持続可能な発展戦略の実施、国家の環境と発展の目標の実現、公衆と社会の環境権益の維持を中心に、中国環境保護連合会の「大中華、大環境、大連合」の優位性を生かし、政府と社会の橋渡しと絆の役割を生かして、中国の環境事業の発展を促進し、人類の環境事業の進歩を推進するものである。

 中華環境保護連合会HP

 http://www.acef.com.cn/

 

20.中国政府の他の環境保護機構

 北京環境保護局http://www.bjepb.gov.cn/

 上海環境:http://www.sepb.gov.cn/

 上海環境ホットラインhttp://www.envir.online.sh.cn/

 広東環境保護庁:http://www.gdepb.gov.cn/

 福建環境保護庁:http://fjepb.fj.cn.net/

 新疆環境保護庁:http://www.xjepb.gov.cn/

 遼寧環境保護庁:http://www.lnepb.gov.cn/

 安徽環境保護庁:http://www.aepb.gov.cn/

 重慶環境保護局:http://www.cepb.gov.cn/

 浙江環境保護庁:http://www.zjepb.gov.cn/

 雲南環境保護庁:http://www.7c.gov.cn/

 河南環境保護庁:http://www.hnepb.cn/

 成都環境保護化学研究院:http://www.cdaes.org.cn/

 

21.中国の非政府の他の環境保護機構(NGO)

 中国生物多様性保護とグリーン発展基金会 http://www.cbcgdf.org/

 北京地球村環境文化センター(略称:北京地球村) http://www.gvbchina.org.cn/

 緑家園ボランティアhttp://www.greenearth.hypermart.net/

 中華環境保護網 http://www.chinahbw.com/

 汚染被害者法律支援センター http://www.clapv.org/

 重慶グリーンボランティア連合会 http://www.greenu.org.cn/