第三章:経済
1、経済の概況

 1949年新中国が成立して以降、中国経済は急速に発展してきた。特に、1978年に改革開放政策が実施されてからは年平均9%以上のスピードで持続的かつ健全に成長してきた。2012年、中国の国内総生産(GDP)は8兆2622億ドル、1人当たりGDPは6102ドルに達し、経済総量が米国に次いで第2位となった。

 現在、中国国内の投資と消費の情勢は良好な趨勢を保っており、2012年中国では固定資産投資額が37兆4676億元に達した。消費財小売総額は21兆307億元近くに達し、また対外貿易額が3兆8668億ドルを超え世界1位となった。2012年末までに、中国の外貨準備高は3兆3116億ドルに達し、4年連続で世界1位となった。

 30年あまりの改革開放と近代化建設を経て、中国はすでに計画経済から社会主義市場経済への転換を基本的に完了し、社会主義市場経済体制が徐々に確立・完備されている。同時に中国の法律と法規も絶えず整備され、市場開放の継続的拡大と投資環境の改善、金融体制の改革も着実に進められている。これらは中国の経済成長の確かな保障となっている。

 21世紀に入ってから中国は、更に人間と自然・人間と社会・都市と農村・東部と西部・経済と社会の全面的かつバランスのとれた発展理念を打ち出した。2012年に開かれた中国共産党第18回全国代表大会は、2020年までに、いくらかゆとりのある社会を全面的に構築するという目標を掲げると共に、2020年にGDPおよび国民1人当たりの所得を2010年より倍増させるという目標を初めて定めた。

2、産業構造の基本的な情況

 産業構造とは、各産業部門における生産要素の比例構成およびその相互依存と相互制約の連係を指す。産業構造には、農業・工業・サービス業という3つの産業間の比例関係および各業種間の比例関係などが含まれている。

 1949年の新中国成立以降、中国の産業構造は3つの段階を経て発展してきた。第1段階は1950年代から70年代の末までで、中国は半植民地経済の特徴を急速に転換し、工業化の基礎を初歩的に固めた。第2段階は1979年から90年の初めまでで、中国は改革開放の方針を定め、産業構造を絶えず調整し工業化の中期段階にまい進した。第3段階は1990年代初め社会主義市場経済体制の確立を打ち出してから2020年までで、工業化を実現すると同時に、初歩的な情報化を完成するという目標を掲げている。

 この60年余りの間、中国では3つの産業間の比例関係にも大きな変化が生じた。1950年代の初めから2012年までに、中国では農業の比率が45.4%から2012年の10.1%に下がり、工業の比率が34.4%から45.3%に上がり、サービス業の比率が20.2%から44.6%に上昇した。

 農業

 中国は、農業人口が総人口の絶対多数を占める国であり、農業は中国経済できわめて重要な地位を占めている。

 中国には、960万平方キロの陸地面積があるが、耕地面積は世界の約7%を占めているとはいえわずか127万平方キロしかない。耕地は主に中国東部モンスーン地帯の平原と盆地に集中している。中国の農業生産部門では栽培業が最も重要で、主な食糧作物には水稲・小麦・トウモロコシ・大豆などがあり、経済作物には綿花・ピーナツ・アブラナ・サトウキビ・テンサイなどがある。

 中国農業の急成長は、1978年に農村で改革開放政策が実施されて以降始まったものである。この30年余り、中国の農村改革は集団所有制の枠組みの下で、市場を導きとして伝統的な体制の束縛を打ち破り、市場経済の条件下における集団経済の新しい形を模索してきた。農村の改革は農民に利益をもたらし、農村の生産力を解放して、農業、特に食糧の増産と農業構造の絶え間ない調整を促し、中国農業の発展を大いに推進した。現在、中国の食糧や綿花・菜種・タバコの葉・肉類・卵類・水産物・野菜などの生産量はいずれも世界首位となっている。

 近年、中国政府は、農業の発展を一貫して活動の重点としており、農業への資金投入を絶えず拡大し、農民の収入を増やして農村と都市のバランスのとれた発展を実現させるよう取り組んでいる。

 工業

 1949年の新中国成立後、中国の工業は全面的な回復と発展の時期に入ったが、中国工業の急速な発展は1950年代初頭に始まった。1978年改革開放政策が実施される前に、中国ではすでにほぼ完全な工業経済の体制が整っていた。伝統的な石油工業と当時の新興産業だった化学工業や電子工業はいずれも急速な成長を遂げ、またハイテク産業とされる原子力工業と宇宙航空工業も突出した発展を収めた。さらに1970年代の末以降、中国工業の成長の勢いは更に加速し、1979年から2012年にかけて工業の伸び率は年平均10%以上を保ってきた。

 60年余りの発展を経て中国の主な工業製品の生産量は、数十倍ないし数百倍の伸び率で増え続け、数多くの工業製品が世界各地に輸出されている。1996年以降、鉄鋼・石炭・セメント・農業用化学肥料・テレビの生産量はずっと世界一を占めている。

 2012年中国は工業付加価値23兆5319億元を実現し、前年同期比で8.1%の伸びとなった。現在、中国は、航空機・船舶・自動車だけでなく、人工衛星や現代的な工業設備も製造できるようになった。一定の技術的水準に達し、産業セクターが整った独立な工業システムが確立された。今後、中国は情報化によって工業化を促進するという戦略の実施を一層推進し、中国経済の成長に対する工業の役割発揮を加速させていく。

 サービス業

 1970年代末以降、中国のサービス業は大きく発展してきた。

 その発展は主に2つの面に現れている。まず、サービス業の規模が絶えず拡大しつつあることである。統計によれば1978年から2012年まで中国サービス業の付加価値額は860億5000万元から23兆1626億元に260倍も増加し、年平均10%以上の伸び率は同じ時期のGDPの伸び率も上回っている。またサービス業の付加価値額がGDPに占める割合も1979年の21.4%から2012年の44.6%に上った。2012年は国際金融危機の影響を受けたにもかかわらず、相変わらず急速な成長を遂げた。

 一方、中国のサービス業は雇用の受け皿としても注目されるようになっている。サービス業に従事する者は1978年の4890万人から、急速に増えて2011年には7億6000万人となり、就業者数の最も多い産業部門となった。

 現在、中国のサービス業は飲食・観光・小売・金融・保険・情報・運輸・広告・法律・会計・不動産管理など数多くの分野に及んでいる。中国の発展計画によると、2020年にサービス業の付加価値額がGDPに占める割合は現在の約3分の1から2分の1以上に上がるだろう。

 

3、社会主義市場経済体制

 1949年、新中国成立以降の30年間、中国政府は一貫して計画経済体制を推進し、専門の政府機構が各分野の経済発展目標を計画・制定していた。この体制は中国経済を目標に沿って計画的かつ安定的に発展させたが、経済そのものの活力と発展のスピードをひどく束縛していた。

 1970年代末、中国は計画経済体制の改革を始めた。1978年、中国は農村地区で世帯生産請負責任制を主とする責任制度を始めた。1984年経済体制の改革は農村部から都市部に移り、1992年社会主義市場経済体制の確立という改革の方向を定めた。

 2003年10月、中国は社会主義市場経済体制の更なる完成を目指すという目標と任務を明確にした。つまり、都市と農村、各地域、経済と社会、人間と自然それぞれの全体的な発展を目指し、国内の発展と対外開放の要求を満たす。資源配置における市場の基本的な役割を更に発揮させ、企業の活力と競争力を強化し、国のマクロ経済に対するコントロールを整備する。そして、政府の社会管理と公共サービスの機能を整え、「いくらかゆとりのある社会」を全面的に樹立するために、強力な体制上の保障を提供する。その主な任務は、公有制を主体とする多種の所有制経済の共同発展という基本的な経済体制の充実;都市部と農村部の2次元経済構造の調整に役立つ体制の確立;地域経済のバランスのとれた発展を促進する体制の形成;統一的・開放的かつ競争秩序の良い現代的市場体制の確立;マクロ的なコントロールシステム・行政管理システムと経済・法律制度の整備;就業・所得配分と社会保障制度の整備;経済と社会の持続可能な発展を促す体制作りなどである。

 計画によると、2010年までに中国は比較的整った社会主義市場経済体制を確立し、2020年までに比較的成熟した社会主義市場経済体制を確立することになっている。

 

4、所有制構造

 中国の憲法によれば、中国は社会主義の初級段階において、公有制を主体とする多種類の所有制経済の共同発展という基本的な経済制度を堅持し、労働に応じた分配を主体とする多種類の分配方法を共存させる制度を堅持する。現在、中国の所有制経済には主なものとして、国有経済・集団経済・私営経済・個人経営経済・共同経営経済・株式制経済・外国と香港、マカオおよび台湾の投資による経済などの形が含まれている。

 国有経済とは生産手段を国家が所有する経済類型;集団経済とは生産手段を集団が所有する経済類型;私営経済とは生産手段を個人が所有し労働力の雇用を基礎とする経済類型;個人経営経済とは生産手段を個人が所有し、個人の労働を基礎とし労働者個人がその成果を所有・支配する経済類型;共同経営経済とは所有制が違う企業あるいは企業と事業部門が共同で投資し、新しい経済体を作る経済類型;株式制経済とは、全部の資本は株の持ち主が出資し、株式の形で企業に投資する経済類型;外商の投資経済とは海外の投資家が中国経済の法律と法規の中で外国に関する部分に基づき、合弁・協力・独資の形で中国の国内に企業を設置する経済類型;香港、マカオおよび台湾の投資経済とは香港・マカオ・台湾地区の投資家が中国経済の法律と法規の中で、合弁・協力・独資の形で中国大陸に企業を設置する経済種類である。香港・マカオ・台湾の投資経済は、外商の投資経済を参考に合弁経営企業・協力経営企業・独資企業の3種類に分けられる。

 中国の憲法では、いかなる組織・個人の、いかなる手段による、国と集団の財産の不法な占有または破壊は禁止されている。国は個人経済・私営経済などの非国有制経済の合法的な権利と利益を守らなくてはならない。国民の合法的な私有財産は侵犯されない。

 

5、発展戦略

 1987年10月中国共産党第13回全国代表大会は、中国の現代化建設を3つの段階に分けて推進するという戦略的な計画を打ち出し、その具体的な目標を以下の通り定めた。

 第1段階(1981年から1990年まで) 中国の国内総生産が倍増し、人民の衣食問題が解決される。第2段階(1991年から20世紀末まで) 国内総生産がさらに倍増し、国民の生活が「いくらかゆとりのある」水準に達する。第3段階(21世紀半ば) 中国の1人当り国内総生産が中レベル先進国の水準に達する。国民の生活がより豊かになり、現代化が基本的に実現する。

 1997年9月の中国共産党第15回全国代表大会は、第3段階の目標を更に具体化し、21世紀の最初の10年までに国内総生産が2000年より倍増し、国民のいくらかゆとりのある生活を更に豊かにし、より整備された社会主義市場経済体制を形成する。また次の10年にさらに努力を重ね、国民経済の更なる発展を促して、各種制度を更に整備する。2050年には現代化を基本的に完成し、豊かで強力で民主かつ文明的な社会主義国家を作り上げる。

 

6、インフラ整備

 道路

 中国の広大な国土上には、道路が四通八達している。その内で最も重要なのは、国土の東西と南北を貫く「縦5本・横7本」の12本の幹線国道である。総延長3万5000キロのこの道路網は、現在すべて完成した。

 ここ20年来、中国は一貫して道路をインフラ整備の重要な項目とし、高速道路建設の飛躍的な発展を実現してきた。北京-上海、北京-瀋陽、北京-石家荘-太原、上海-南京-合肥、上海-杭州-寧波など複数の省を通過する長距離高速道路の開通に伴って、中国道路交通の混雑が明らかに緩和し、長期的に抱えている輸送能力不足は明らかに改善された。高速道路の急速な発展により、省と省の間、および重要な都市を結ぶ時空は大きく縮小した。人員や商品・技術・情報の地域間交流のスピードが加速し、生産運輸コストを効果的に削減した。そして、より広い範囲で効率的な資源配置と市場の拡大を実現し、企業の競争力の向上や国民経済の発展と社会の進歩を促すために重要な役割を果たしてきた。現在、高速道路のスピードと利便さは国民の生活にも密接に関わり、人々の時空概念とライフスタイルを大きく変えつつある。

 鉄道

 2012年末までに、中国で運行している鉄道の総延長は世界第2位の9万8000キロに達し、その内、高速鉄道は9356キロで世界1位となった。現在、中国の鉄道は旅客輸送量・貨物発送量・貨物取扱量・換算取扱量はいずれも世界1位となった。

 中でも高速鉄道が中国鉄道運輸の最新鋭部隊となっている。2007年高速列車が中国で初めて走って以来、高速列車に乗った旅客数は延べ15億人を超え、高速列車の旅客が鉄道旅客全体に占める割合は2007年の5%弱から現在の約27%にまで伸びた。第12次五カ年計画(2011-2015年)の末ごろには、中国の高速鉄道の総延長は1万8000キロに達し、そのうち時速200~250キロの高速鉄道が1万1300キロ、時速300~350キロの高速鉄道が6700キロで、50万以上の人口を持つ中国の都市をほぼ全てカバーすると予想されている。

 港

 中国沿海の港湾建設は石炭・コンテナ・輸入鉄鉱石・食糧・出航用の深い水道などについて行われてきたが、中でもコンテナ運送システムの建設を強化してきた。中国政府は力を集めて大連・天津・青島・上海・寧波・アモイ・シンセンなどの港に深水コンテナ埠頭を作り、中国のコンテナ中枢港の形成の基礎を固めた。また、石炭輸送システムの建設を更に強化し、石炭運搬船用の埠頭を新たに建設すると同時に、輸入した原油や鉄鉱石の積み下ろし用の埠頭を改築・拡張した。

 2012年の全国の港の年間貨物取扱量は107億8000トンで、そのうち輸出入貿易の取扱量が30億6000トンに達し、1978年に比べてそれぞれ38倍、51倍となり貨物取扱量が何年か連続で世界一となった。中でも年間貨物取扱量が1億トンに達した港が29、世界の港湾ランキングベスト10に入った港が8つもあり、上海港が世界1位のコンテナ港となった。世界の海運が急速に発展し、世界の一部の地域で港湾の取扱能力が不足する中、中国の港は終始効率的かつ便利なサービスを提供している。

 民間航空

 中国の航空路線は世界各地に伸びている。2012年末、中国では、定期航空路線に使われる空港が180カ所以上に上り、定期航空路線は2457本に達した。その内、国際線は381本で、世界52カ国121都市と結んでいる。

 電話

 2012年の末までに、中国では、固定電話の加入者は2億7815万人に達し、その内、都市部の電話加入者は1億8893人、農村部の電話加入者は8922万人となった。中国は1987年から移動通信業務を行い、1990年以降は急速に発展し年間成長率が100%以上に達している。現在、移動電話網はすでに中国のすべての大中都市および2000以上の小都市と県をカバーしている。2012年に移動電話の加入者は新たに1億2590万人増え、そ年末までに11億1216万人に達した。2012年末までに、中国では固定電話と移動電話の利用者が13億9031万人に達し、前年より1億1896万人増え、電話の普及率はついに100人あたり103.2台となった。

 インターネット

 2013年6月末現在、中国ではインターネットの利用者が5億9100万人に達し、2012年末より2656万人増えた。インターネットの普及率は44.1%で2012年末より2%上昇した。新たに増えたインターネット利用者のうち、携帯電話によるでインターネット接続の割合は70.0%に達し、他のモバイル機器を通じてインターネットに接続する利用者の割合を上回っている。特に、注目すべきなのは、農村でのインターネットの普及が速く、最近の6カ月に新しく増えたインターネット利用者の中で農村地域に住む人は54.4%にも達している。

 それと同時に、2013年6月末現在中国では携帯電話でインターネットに接続する利用者は4億6400万人に達し、2012年末より4379万人増加した。ネット利用者のうち携帯電話を使ってインターネットに接続する人の割合が78.5%に上がった。3Gの普及・無線LANの発展・携帯電話アプリの技術革新が中国の携帯電話によるインターネット利用者の急増を後押ししている。

 

7、投資政策

 中国は、世界で最も多く外資を導入している国の一つである。国際金融危機で国際投資が大幅に減る中で、中国の外資利用が著しい成果を上げているのは、主に多くの合理的な投資優遇政策が制定されたことによるものである。

 1980年代の初めから、中国は人力・物力・財力を投入し種々のインフラ設備を相次いで建設し、外国企業が中国で企業を設立するための良好な環境を作った。それと同時に相前後して500余りの対外経済法規を整備し、外国企業の中国への投資に法的根拠と保障を提供した。外国企業が農業の総合的開発・エネルギー・交通・重要な原材料・ハイテクと新技術・資源の総合利用・環境保護などの分野へ投資することを奨励し、支援するために1997年末、『外国企業の投資産業指導目録』を改正・公布した。WTO(世界貿易機関)の規則や中国の対外約束に基づいて、およそ2300の法規を整理し、その内830の法規を廃止、325の法規を改正し、対外経済法律法規の整理作業を基本的に完成した。『中外合弁経営企業法』・『中外協力経営企業法』・『外資系企業法』という3大基本法およびその実施細則を主体とする外国企業投資法律体系が基本的に確立した。2012年末までに、200あまりの国と地域の外国企業が中国で投資し、外国投資企業は40万社を超え、世界の大手企業500社のほとんどが中国に投資している。中国は世界の投資者や金融界に投資環境の最も良い国の一つと評価されている。

 

8、経済特別区と沿海開放都市

 中国政府は1978年に経済体制の改革を決定すると同時に、対外開放政策の段階的な実施を開始した。1980年から相次いで広東省の深圳・珠海・汕頭、福建省のアモイと海南省に5つの経済特別区を設立し、1984年から更に大連・秦皇島・天津・煙台・青島・連雲港・南通・上海・寧波・温州・福州・広州・湛江・北海など14の沿海都市を開放した。また1985年以降引き続き、長江デルタ・閩南デルタ・山東半島・遼東半島・河北省・広西チワン族自治区を経済開放区とし、沿海経済開放地帯を形成した。1990年中国政府は上海の浦東新区を開放し開発することを決定し、また長江沿岸の幾つかの都市を更に開放し、浦東をはじめとする長江開放地帯を形成した。

 これらの開放地域ではそれぞれ異なる優遇措置が実施される。対外志向型経済を発展させ、輸出による外貨稼ぎや先進的な技術を導入する面で窓口の役割を果たし、また内陸にモデルを示している。

 

9、国家経済技術開発区

 経済技術開発区は、中国の対外開放地区を構成する重要部である。開放都市に画定された小さな区域で集中的にインフラを整備して国際レベルに適合する投資環境を作り、外資の導入や利用を通じてハイテクや新しい技術の産業を主とした現代的な工業構造を確立し、その都市と周辺地区が対外経済貿易を発展させる重点的な区域となるというものである。

 1988年、中国国務院は沿海開放都市として、大連・秦皇島・天津・煙台・青島・連雲港・南通・閔行・虹橋・漕河涇・寧波・福州・広州・湛江など14の国家経済技術開発区を初めて認可した。2013年8月現在、国家経済技術開発区は合わせて192あり、中国大陸のすべての省・自治区に分布している。その内、江蘇省が最も多く23カ所あり、次いで浙江省には17カ所、山東省12カ所ある。

 国家経済技術開発区は、中国の対外開放地区を構成する重要な部分であり、その多くは各省・市・自治区の省都など中心都市にある。沿海開放都市やその他の開放都市に小さな区域を画定し、集中的にインフラを整備して国際レベルに達する投資環境を作り、外資の導入や利用を通じてハイテクや新しい技術の産業を主とした現代的な工業構造を確立し、その都市と周辺地域が対外経済貿易を発展させる重点な区域となるというものである。

 

10、国家ハイテク産業区

 現在、中国では国家ハイテク産業開発区が105カ所建設され、1000件以上の省レベル或いは中央省庁レベルの科学研究成果の産業化を実現している。中国ハイテク産業開発区の主な経済指標の年平均増加率は10年連続で60%を保ち、国民経済の成長を促す重要な原動力となった。

 北京中関村科学技術パークおよび天津・上海・黒竜江・江蘇・安徽・山東・湖北・広東・陝西・大連・アモイ・青島・深圳などの省・市にある国家ハイテク産業開発区は全体が迅速に発展している。ソフト・ハード環境の建設が順調で、ハイテク製品の輸出が急速に増加しているため国に輸出基地の第一陣と認定された。その内、珠江デルタ、長江デルタと北京・天津地区はハイテク製品の輸出基地が多く、その輸出シェアは全国ハイテク製品輸出の80%以上を占めている。

 

11、保税区

 保税区とは中国国務院の承認を得て国際貿易と保税業務を取り扱う区域である。これは、世界の他の国の自由貿易区と似ていて、この区域内では外国企業が国際貿易に投資・経営し、保税倉庫貯蔵・輸出品加工などの業務を発展させることが許可されている。現在、中国には、上海外高橋保税区など30カ所あまりの保税区があり、中国経済が世界経済と融合する新しい接点となっている。

 

12、上海自由貿易区

 中国(上海)自由貿易試験区(China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone)は上海自由貿易区または上海自貿区と略称され、中華人民共和国上海市に開設された初の自由貿易区であり、中国大陸の初の自由貿易区として上海に10年の発展ボーナスをもたらすと予想されている。

 2013年8月、中国国務院は中国(上海)自由貿易試験区の設立を正式に批准した。この試験区が設立されると、上海外高橋保税区を中心に空港保税区と洋山港臨港新城も対象範囲内に入り、中国経済の新しい実験場となる。政府機能の転換・金融制度・貿易サービス・外商投資・税収政策など多項目の改革措置を実施すると共に、上海市での貨物積み替えやFOB業務の発展を大いに推進できる。

 2013年9月29日、上海自由貿易区は正式に開設した。

 

13、輸出入状況

 中国の経済が持続的かつ急速に成長する中で、対外貿易も一貫して発展してきた。世界貿易ランキングで中国は1978年は32位、89年は15位、そして97年は10位だったが、そこから2012年には2位に躍進した。

 世界の貨物貿易額の成長率がわずか0.2%に止まる中、2012年中国の貨物貿易額は引き続き世界第2位の座を占めつつ、世界貿易総額に占める割合が更に上昇した。中でも世界輸出総額におけるシェアは前年より0.8ポイント多い11.2%に達し、4年連続で世界首位、世界輸入総額に占めるシェアは前年より0.3ポイント高い9.8%となり、4年連続で世界2位となった。中国対外貿易の発展は国内の経済・社会の発展に重要な役割を発揮するだけでなく、世界貿易の成長と経済回復にも大きく貢献してきた。

 現在、中国と貿易関係を結ぶ国と地域は合わせて200を超え、欧州連合(EU)・米国・東南アジア諸国連合(ASEAN)・香港特別行政区・日本・韓国・台湾省・オーストラリア・ロシア・ブラジルが中国の10大貿易相手国である。

 

14、外資利用

 中国が外資を利用するルートと形は大まかに3種類に分けられる。第1、対外借款。外国政府・国際金融機構の貸付、また外国商業銀行の貸付・輸出信用貸付・対外発行の債券などを含む。第2、外国企業の直接投資。中国と外国の合弁・協力企業・外国企業の独資企業・協力開発プロジェクトなどを含む。第3、外国企業のその他の投資。国際レンタル・補償貿易・加工組み立て・株式の対外発行などを含む。

 改革開放以来、外資は長期にわたって中国の固定資産投資の重要な資金源であり、外国投資企業の急速な拡張は中国の工業化を促し、必要不可欠な租税収入源となると共に、大量の雇用を生み出した。2012年末までに中国はすでに20年連続で外資導入額が最も大きい発展途上国となった。国際金融危機の影響を受けて、ここ2年間中国の外資導入の勢いがいくらか緩んだ。2012年中国で新しく批准された非金融分野の外国直接投資企業は前年比10.1%減の2万4925社となり、実行ベース外国企業直接投資は前年比3.7%減の1117億ドルだった。

 

15、中国に進出した主な多国籍企業

 フォルクスワーゲン

 フォルクスワーゲン社は1984年に中国市場に進出して以来、現在、中国に14の企業を持ち、乗用車製造のほか、消費者と自動車業界に部品とサービスを提供している。

 フォルクスワーゲンは中国で最も早く業務を展開した大手自動車メーカーの1つであり、中国政府との最初の接触は1978年にさかのぼる。その頃、中国政府は鄧小平の指導の下、経済改革と開放政策を実施し、海外から資金と進んだ技術を導入して中国の近代化を加速し、国際競争力を高めることを目指していた。当時も今も自動車産業がこの目標を実現するための鍵であることは間違いない。

 現在、フォルクスワーゲンは中国で乗用車合弁企業を2社持っている。1984年上海フォルクスワーゲンが設立されたのに次ぎ、1990年には長春で一汽と合弁企業の設立に関する協定に調印した。2003年1月フォルクスワーゲン上海トランスミッション社を合弁で設立。2004年には最先端技術を駆使したエンジンを生産する合弁企業が2社立ち上げられ、それぞれ2006年と2007年に操業を開始した。

 ボーイング社

 長年にわたる中国とボーイング社との友好協力の歴史は1972年に始まった。ボーイング社は中国で飛行・整備・管理などでの訓練を行い、ボーイング旅客機の運行に保障を提供している。また、これと同時に、ボーイング社は、中国で空港での駐在代表サービス・後方勤務・技術的サポートなどのシステムを築き、中国の民間航空のフライト管理と航空安全のレベルアップを支援している。

 その他、ボーイング社は中国の航空製造業と広範囲に生産協力を展開する他、新しい合弁会社を作り、複合材料を生産し、飛行機を改造・整備と部品提供業務を取り扱っている。

 現在、世界で飛行中のボーイング社の航空機4000機以上の重要な部品とユニットは中国で製造されたものである。

 トヨタ

 トヨタ自動車は中国においても自動車を通じ豊かな社会づくりに貢献することを企業理念とし、顧客に上質な自動車とサービスを提供すると同時に、様々な社会貢献活動を行い中国社会の発展に寄与している。

 事業の面では、トヨタは中国の完成車やエンジン、自動車関連施設などの関連事業に積極的に携わっている。中国の国家政策の支持の下で、トヨタは第一自動車グループおよび広州自動車グループとの協力を通じて、これまで、天津・広州・成都・長春で合弁で6つの完成車メーカーと4つのエンジンメーカーを設立し、中国ユーザーに好評価される15車種を出した。

 現在、トヨタは中国の8つの省・直轄市で9社の独資会社、11社の合弁会社、5つの事務所を設立し、3万5000名あまりの中国職員を雇用しており、生産・販売・アフターサービスなどの関連分野で中国の自動車工業と自動車市場の発展に積極的に貢献している。同時にトヨタは「環境保全」・「交通安全」・「人材育成」を中心に、中国で様々な社会貢献活動を積極的に展開し、前向きな姿勢で中国社会に溶け込んで中国の経済・社会のバランスの取れた発展に寄与することで、中国社会に認められ、信頼される優秀な企業になるよう取り組んでいる。

 マイクロソフト

 マイクロソフト社は1992年に北京事務所を設立、1995年にはマイクロソフト(中国)有限公司を設立し、ソフトウェア産業との共同の発展を目標とし、政府やパートナー、ユーザーとの緊密な連携を強めてきた。資金・技術・人材・市場などを通じて中国の情報化建設を支援し、情報産業と知識経済の発展を推し進め、互利互恵の実現を目指してきた。

 中国でのマイクロソフトの規模はこの20年で絶えず拡大してきた。職員数は今や3000人を超え、全国に出先機関を設けて業務を展開し、基礎研究・製品開発・マーケティング・技術サポート・教育訓練などを行っている。現在、マイクロソフトは中国で5000社あまりの協力パートナーを持っている。中国はマイクロソフト社にとって、世界で最も重要な戦略市場の一つとなった。マイクロソフト中国も米国本部を除くと、最も完備した機構と機能を持つ子会社となった。

 マイクロソフトは様々なソフトウェア製品とサービスを開発すると共に、関連する業務やライセンス・技術的サポートを提供することを通じて、ユーザーにその商業価値を発信している。現在、マイクロソフトの中国業務はWindowsクライアント端末・サーバーと開発ツール・インフォメーションワーカー製品・マイクロソフトビジネスマネジメントソリューション・携帯用端末と組み込み用機器・MSNとパーソナル商品・娯楽製品など7つの面に及んでいる。

 

16、銀行とその監督管理

 現在、中国ではすでに中央銀行が調整・監督し、国有銀行を主体とし、政策金融と商業金融が分業し、多種の金融機構が協力する金融システムが形成されている。

 中国人民銀行は中央銀行の職能を行使し、全国の金融業に対してマクロ調整や監督を行う。中国工商銀行・中国銀行・中国農業銀行・中国建設銀行の4行は国有商業銀行で、同時に中国農業発展銀行・国家開発銀行・中国輸出入銀行という3社の政策銀行が設立された。1995年中国は「商業銀行法」を公布し、商業銀行の体系と組織構造を構築するための条件を作ると共に、国営専業銀行から国有商業銀行への転換に法的根拠を提供した。1996年以降、金融業の機構システムが次第に整備されてきており、国有独資商業銀行は通貨をマネージメントする現代的な金融企業に改革された。120余りの株式制中小商業銀行を増設・再編成し、更に証券や保険の金融機構を規範化した。

 中国銀行業監督管理委員会は中国銀行の監督管理機構である。2003年4月28日、中国銀行業監督管理委員会は正式に職責の履行を開始した。同委員会は銀行業金融機構の監督・管理に関する規則・制度・方法を制定し、銀行業金融機構に対する現場の監督・管理と非現場監督・管理を行い、法律・法規に違反した行為を法に則って調査・取り締まる。

 

17、証券とその監督・管理

 1990年と91年、中国は上海と深圳に証券取引所を開設した。この20年余り、中国の資本市場は融資チャネルの拡大・資本形成の促進・資源配置の最適化・市場リスクの分散などの面で重要な役割を果たしてきた。実体経済の健全かつ急速な成長を力強く促し、中国の社会主義市場経済体制の重要な構成部分となり、経済と社会の持続的かつ健全な発展を支える重要な土台となった。

 1998年中国では証券監督管理委員会が設立された。証券先物市場の主管部門として、統一された証券先物監督管理体系を確立し、証券先物監督管理機構に対して規定に基づいた垂直管理を行う。同委員会はまた証券先物業界への監督管理を強化し、証券先物取引所・株式上場会社・証券先物経営機構・証券投資ファンド管理会社・証券先物投資インフォメーション・証券先物仲介業務を業とする他の機構に対する監督管理を強化し、情報開示の質の向上に努める。

 現在、中国のA株市場には2500社以上の企業が上場しており、株式時価総額は世界3位となっている。国有企業が資本参加した重要な基幹企業はほとんど株式上場企業となったため、国有資産の増殖効果が著しく、国有経済の活力・支配力・影響力が顕著に強くなった。一方、中小企業市場と新興市場の上場企業では、民営企業の割合が80%を超え、株式公開会社の要求に従って民営企業が現代的企業制度を樹立することを力強く後押しした。資本市場のプラットフォームを借りて、経済の今後の発展方向を示す多くの技術型・革新型の企業が頭角を現し、中国の産業構造の調整や自己革新の推進をサポートしている。

 同時に資本市場の発展により中国の現代的金融システムは一層改善され、経済運営の質と効率が向上した。資本市場の確立と発展は中国の金融業の現代的金融システムへの転換を推し進めた。資本市場は民間の資金を集め、企業資本を充実させ、経済発展に数兆元の長期的資金を調達し、中国の経済発展の内的な原動力を増強した。

 

18、保険とその監督管理

 中国の保険業は20年間の中断の後、1980年から回復が始まった。1981年中国人民保険公司は政府の1つの部門から専業企業に改組され、本社および省・自治区・直轄市の支社から県の支社までの構造を整備した。1988年に沿海地区を主な活動地とする平安保険公司と太平洋保険公司が設立された。1996年中国人民保険公司は管理体制と経営方式の転換・現代的企業制度の確立・国際市場慣行の導入などの面で大きな一歩を踏み出した。1985年の「保険法」の発布と1988の中国保険監督管理委員会の成立は、保険市場の運営のために法的根拠を提供した。

 保険業は国民経済の中で最も速い成長を遂げた業界の一つである。2012年末中国には100社の保険会社があり、そのうち外資系企業が43社で、2002年末の22社より21社増えた。また2012年保険会社の年間保険料収入は1兆5488億元に達し、前年比8.0%の増加となった。

 中国は大きな潜在力を持つ完全に開放された市場として、国際的な保険資本にとって大きな魅力を持っている。世界の多くの有名な保険企業は中国での業務発展を重要な戦略としている。中国の保険業界はすでに高度成長期に入り、保険業界の経営モデルも多角化に向けて発展を進めている。中国の保険業の発展の見通しは明るい。

 

19、人民元と外貨管理

 人民元は中国の法定通貨で、中国人民銀行によって統一的に発行・管理されている。人民元の為替レートは中国人民銀行が制定し、国家外貨管理局が発布する。中国は外貨に対して統一的な管理を実行し、国家外貨管理局が外貨管理職権を行使する。

 2005年7月にスタートした人民元為替相場形成制度の改革は外貨管理体制改革の深化に新たな活力を注いだ。企業や個人の外貨所持・利用がさらに便利になり、外貨市場の発展に拍車をかけた。これと同時に外貨管理方式は外貨流出の抑制から、流出入の均衡管理に改められ、次第に資本流動の双方向均衡管理の制度的枠組みを確立していく。

 2012年末の中国の外貨準備高は3兆3116億ドルに達し、前年比1304億ドルの増加となった。年末の時点で人民元の為替相場は1ドル=6.2855人民元で、前年同期より0.25%上昇した。人民元為替相場の弾力性は明らかに増しているが、人民元の為替相場は今後もほぼ安定を保つだろうと予測されている。

 

20、住民の収入と消費

 中国人の生活は60年前とは天と地ほどの違いがある。20年前と比べても、その変化は著しい。国民の所得水準は一貫して上昇し、個人資産は持続的に増加している。人々は日々の暮らしの中で住宅・自動車・パソコン・株・海外旅行に投資または、消費している。

 1979年以降の30数年は中国経済の発展が最も早く、市民の収入の増加が最も大きかった時期である。農村部住民の1人当たりの純収入は1978年の134元から2012年は7917元にまで増え、実質ベースで年平均7.0%の増加となっている。一方、都市部住民の1人当たり可処分所得は343元から2万4565元に増え、実質ベースで年平均10%の増加だった。

 現在、中国市場では日用品や食物の不足という現象は見られず、住民の消費構造は大きく変わった。住民の消費支出の中で食品や衣類、基本生活用品など基本的な生存の必要を示す項目が占める比重が大幅に下がる一方、住宅や交通・通信、医療保健、文化教育・娯楽、レジャーなど発展と娯楽に向いた項目の支出比重が急速に上昇し、生活の質が非常に向上した。

 

21、社会保障

 養老保険

 中国の基本的な養老保険のカバー率は近年絶えず拡大してきた。これまでは主に国有企業や集団企業に集中していたが、各種の企業と企業化管理の事業部門に拡大し、非国有企業の職員の権益も保障されてきている。2012年末現在全国では都市部勤労者向けの基本的な養老保険の加入者は3億379万人に達し、前年末より1988万人増えた。そのうち、保険に加入した勤労者は2億2978万人、定年退職者は7401万人だった。また全国範囲で都市部・農村部住民の社会養老保険の加入者は4億8370万人に達し、前年同期比1億5187万人増となった。また養老年金の受給者は1億3075万人に達している。

 医療保険

 基本的な医療保険はすでに都市部の全ての企業や国家機関・社会団体をカバーしており、現在中国でカバー範囲の最も広い社会保険制度の一つである。

 2012年中国の医療・保健・疫病予防などの衛生医療機関は95万4389に、病院のベッド数は516万床に達している。北京・上海・天津・重慶などの大都市では、レベルの高い癌や循環器・眼科・歯科・伝染病など各種の専門病院と綜合病院があり、各省・自治区の中級都市にはいずれも近代的な施設が整った総合病院や専門病院がある。現在、県・郷・村の農村では3級医療予防保健網がほぼ確立されており、全国には末端医療衛生機構が91万8003カ所ある。

 2012年末現在、中国では都市部の基本的な医療保険の加入者は5億3589万人で前年より6246万人増えた。その中で都市部の基本的な医療保険に加入した農村からの出稼ぎ労働者は4996万人で前年より355万人増えた。

 失業保険

 中国は人口が多く、就業の圧力が大きい。就業状況を緩和するため中国政府は1993年から労務市場政策を実施し、就業機会を拡大すると共に、特に近年の産業構造調整により起きた国有企業職員のレイオフに対して、再就職プロジェクトを実施している。1998年以来国有企業をリストラされた3000万人の職員が各種のルートや方式を通じて再就職した。2012年末、都市部の失業率は4.1%となっている。各種の企業や事業部門では失業保険制度が実施され、労動力の合理的な流動と統一的な市場の形成を促進した。2012年末までに全国の失業保険加入者は1億5225万人に上り、前年より908万人増えた。

 最低生活保障

 最低生活保障とは世帯の1人当たりの平均収入が地元政府が決めた最低生活基準を下回る人々に中国政府がある程度の現金を援助し、世帯構成員の基本的な生活需要を満たす社会保障制度である。最低生活保障線はすなわち貧困線であり、最低生活保障の提供は貧困線以下にある住民の基本的な生活を保障するために補助金を給付するやり方である。長年の努力を経て中国の最低生活保障は歴史的成果を収め、都市・農村最低生活保障の受給者数は全国でほぼ7500万人の規模を維持している。

 

22、三峡プロジェクト

 三峡プロジェクトは三峡水力発電所または三峡ダムと呼ばれ、中国重慶市から湖北省宜昌市までの長江主流に建設された。ダムは宜昌市上流の三斗坪に位置し、足元に三峡水力発電所を有し、下流の葛洲ダム水力発電所とカスケード式ダム群を構成している。三峡プロジェクトは世界で最も規模の大きい水力発電所であり、中国史上で最大の建設工事である。一方で住民の移転や環境への影響など様々な問題を抱えていることから、三峡プロジェクトは計画の時点から大きな論争を巻き起こし、物議をかもした。三峡水力発電所は水上運輸や発電、栽培など多くの機能を持っている。

 1992年全国人民代表大会が三峡水力発電所の建設を批准し、1994年に着工、2003年から貯水と発電を始め、2009年に完成した。

 

23、「南水北調」プロジェクト

 中国は南部は水が多く、北部は水が少ない。そこで南部の豊富な淡水資源を北部の水が不足している地区に引くため、中国の科学技術者たちは50年の調査と測量を経て、2002年から南水北調プロジェクトの建設を始めた。

 南水北調は、東線・中央線・西線の3ルートに分かれている。この3本のルートを通じて、長江・黄河・淮河・海河という4本の大河を繋ぎ、「4本の東西に流れる河と3本の南北に流れる河」を主体とする全体の構図を築き、水資源の南北調整・東西共済という合理的な再配置を実現するものである。

 東線工事:長江下流の揚州から長江の水を引き、京杭大運河と平行する河道を利用してポンプで揚水して北方に送水する。さらに水を蓄えて水量調節と洪水防止の役割を果たす洪沢湖・駱馬湖・南四湖・東平湖と連結する。東平湖を出た後、水路は2つに分かれ1つは北に向かい黄河をくぐり抜ける。もう1つは東に向かい、膠東地区を経由して山東省の煙台・威海まで水を運ぶ。

 南水北調東線工事のカスケード式ダム―泗陽水利中枢(写真)

 南水北調東線工事カスケード式ダム―淮安水利中枢(写真)

 中央線工事:丹江口ダムから水を引き、北京=広州鉄道にそって北上する。水は自力で北京や天津まで流れていく。

 西線工事:長江上流の通天河・支流の雅礱江・大渡河の上流地区にダムを建設し、長江の水を黄河上流に引く。計画中の3ルートの水を引く量は2050年までに東線が148億立方メートル、中央線が130億立方メートル、西線が170億立方メートルに達し、総計で448億立方メートルに達するという。

 南水北調中央線幹線の主体工事は2013年末にすべて完成し、2014年の増水期が過ぎた後、北京などへ水を供給する。

 

24、青海・チベット鉄道プロジェクト

 青海・チベット鉄道は西部大開発を代表するプロジェクトであり、中国の21世紀4大プロジェクトの1つでもある。この鉄道は青海省の西寧とチベット自治区のラサを全長1956キロで結ぶ。西寧からゴルムドまでの区間814キロはすでに1979年に敷設され、1984年に運行が始まった。また、ゴルムドからラサまでの区間は全長1142キロ。そのうち新しく敷設された軌道は1110キロで、2001年6月29日に正式に着工され、2006年7月1日に正式に旅客営業運転を開始した。青海・チベット鉄道は世界で最も海抜の高いところに建設された最長の高原鉄道である。

 青海・チベット鉄道建設の最大の困難は、長く続く高原凍土地帯を通り抜けることだった。鉄道の沿線には貴重な植物の生息する高原湿地が広がり、保護のために人間の立入が禁止された区域を通らなければならなかった。植生を保護するため工事は区間ごとに行われ、植生をブロックごとに移植して、地表の植生の損失を最小限に抑えた。また崑崙山以南の自然条件がよりよい区間では、高原の生育環境に適した草植物を選び、吹き付け法やフィルム張りなどの技術を利用して、地表の植生回復を促し、鉄道沿線を「緑の回廊」に変身させた。

 青海・チベット鉄道の建設は青海省とチベット自治区に経済発展のより大きな空間を提供した。鉄道建設に対する巨額の投資は青海省とチベット自治区の経済成長を直接的に牽引すると共に、その産業構造の合理化に向けた調整を促し、都市化・工業化・現代化プロセスを加速し、飛躍的な発展を推進している。同時に青海・チベット鉄道を建設し、国内の他の地区とチベットとのつながりを強化することは、青海省とチベット自治区の豊かな環境資源の開発にも有利である。

 

25、「西気東輸」プロジェクト

 「西気」は中国の新疆・青海・四川・重慶・オルドス地区で生産される天然ガスを指すが、「東輸」というのはこれを長江デルタ地区に送ることである。

 中国の中部と西部地区にはタリム・ジュンガル・トルファン・ツァイダム・オルドス・四川という石油と天然ガスを埋蔵する6つの盆地がある。予想される天然ガス埋蔵量は22兆4000億立方メートルで、全国の天然ガス資源総量の60%近くを占めている。天然ガスの資源状況や現在の探査の進展状況から、政府は「西気東輸」プロジェクトを始め天然ガスパイプラインの建設を加速することを決定した。政府は資源的優位を経済的優位に転換させ、東部地区の天然ガス需要を満たすため、陜西-北京間の天然ガスパイプラインを敷設したほか、タリム-上海間、青海渋北-西寧-甘粛蘭州間、重慶忠県-湖北武漢間の3本の天然ガスパイプラインを敷設する。より大きな範囲で言えば、現在計画中のロシア西シベリアからの天然ガスパイプラインを現在の「西気東輸」パイプラインと連結させ、またロシアの東シベリア地区の天然ガスパイプラインと繋げることも計画されており、この2本の天然ガスパイプラインも「西気東輸」プロジェクトに属している。

 狭い意味での「西気東輸」プロジェクトは、新疆タリムから上海長江デルタ地区までの天然ガスパイプラインを指している。このパイプラインは口径1118ミリ・長さ4200キロで、新疆・甘粛・寧夏・陜西・山西・河南・安徽・江蘇・上海の9つの省・自治区を跨いでおり、天然ガスの年間輸送量は120億立方メートルに達する。都市ガス網や工業利用など関連プロジェクトの建設を入れると、このプロジェクト全体の投資規模は1200億元に達している。

 現在、「西気東輸」パイプラインの第1線と第2線工事はすでに完成し、第3線工事を施工中である。

 (写真:「西気東輸」工事イメージ図)

 

26、「西電東送」プロジェクト

 西電東送プロジェクトは、中国西部の豊富な電力エネルギーを東部の経済先進地区に送るための送電プロジェクトである。中国の発電エネルギーは主に西部と北部に分布し、電力消費は主に北京-広州鉄道沿線以東の経済先進地区に集中しているからである。

 「西電東送」プロジェクトでは、「北・中・南」という3大送電ルートが建設される。

 北部送電ルートには東北・華北・山東・西北の電力網が含まれており、主に西北部の水力発電の電力を北京・天津・華北・山東の電力網に送電する。

 中部送電ルートには華東・華中・川渝・福建の電力網が含まれており、長江の水力発電の電力を華中・華東・福建地区に送電する。これは「西電東送」プロジェクトの中で最も規模の大きな地区で、全国の電力網の連結にとって極めて重大な影響を持っている。

 南部送電ルートは貴州の烏江・雲南の瀾滄江・紅水河などの水力発電や雲南省・貴州省の石炭産地に建てられる火力発電所の電力を広東地区に送電する。このプロジェクトは中国政府の西部大開発戦略を構成する重要な部分で、西部の豊かな資源を東部の巨大な市場に結び付け中国の電力工業や国民経済の大きな発展を促すものと期待されている。

 

27、西部大開発

 中国西部には甘粛・貴州・寧夏・青海・陜西・四川・チベット・新疆・雲南・重慶の10の省・自治区・直轄市が含まれており、中国の3分の2の国土面積と22.8%の人口を持っている。西部地区は鉱物資源が豊富で、エネルギー(水力を含む)・観光・土地の資源が優位性を持っている。大河の上流域に位置する西部地区は10余りの国との3500キロに及ぶ国境線があり、対外開放の第2の黄金地帯と呼ばれている。

 中国の西部開発は2000年にスタートを切った。国は資金投入や投資環境、対外・対内開放、科学技術や教育の発展、人材確保などの面で西部地区を政策的に優遇している。2000年から今日まで国は西部地区で180件以上の重点的な建設プロジェクトを実施し、投資規模は3兆6800億元近くに上っている。

 2012年2月国務院は『西部大開発第12次5カ年計画』を承認した。これは国務院が承認した3つ目の西部大開発5カ年計画である。この計画によれば、今後一定期間は西部地区の対外開放を拡大することが中国の対外開放戦略の重点となる。西部地区はより積極的かつ能動的な開放戦略を実施し、さらに西へ向かって開放する度合いを拡大し絶えず新しい開放の分野と空間を切り開いていく。

 

28、東北の古い工業基地の振興

 東北地区の古い工業基地は、国民経済と社会発展の中で重要な地位を持っている。計画経済の時期に東北の機械製造業や鉄鋼産業などの重工業は、中国の経済建設に大きな貢献をした。しかし、東北の古い工業基地は形成の時期が早く、一部の産業が衰退期に入る一方、市場での競争力が低下しているのに代替産業が発展しておらず、特に一部の資源型都市が非常に大きな困難にぶつかっている。こうした課題を解決するため中国政府は東北などの古い工業基地の調整や改造、振興の加速を決定した。

 東北の古い工業基地を振興する中国政府の主な政策措置は、戦略上から経済構造を調整することであり、この中には産業構造の調整・所有制構造の調整・国有経済構造の調整が含まれている。これが古い工業基地を振興させる主要方針である。また企業の技術改造を適切に強化することは、東北の古い工業基地を振興させる重要な一環である。全面的で協調的かつ持続可能な発展に努めることが、古い工業基地を振興させる長期的な計画である。就業や社会保障システムをきちんと整備することは、東北の古い工業基地を振興させる重要な保障である。科学技術教育事業の発展を速めることは、東北の古い工業基地を振興させる重要な条件である。

 東北地区など古い工業基地の振興戦略が実施されて以来、東北3省の経済成長は加速し、次第に国内の他の地区との差を縮めてきている。2008年、東北3省の域内総生産が全国に占める割合は2007年より0.14ポイント高い8.62%を占めたが、これは21世紀になって東北3省の域内総生産の割合が底を打って初めて上昇したものである。