第二章:政治
一、政治制度

 中華人民共和国は労働者階級が指導し、労働者・農民連盟を基礎とする人民民主独裁の社会主義国家である。中華人民共和国の根本的な制度は社会主義制度である。

1、憲法

 憲法は国家の根本的な法律である。国の社会制度と国家制度の基本原則、国家機関の組織と活動の基本原則、公民の基本的な権利と義務などの重要な内容を規定している。また国旗・国歌・国章・首都及び支配階級が重要だと認めるその他の制度を規定し、国家生活の各方面に及んでいる。憲法は最高の法的効力を持ち、その他の法律の根拠を制定するものであり、すべての法律と法規は憲法に抵触してはならない。

 新中国が成立する前夜に公布された『中国人民政治協商会議共同綱領』は中国人民民主統一戦線の綱領であり、同時に暫定憲法の役割も果たした。この綱領は中国人民政治協商会議第1回全体会議で採択され、1949年9月29日に公布され、1954年『中華人民共和国憲法』が公布されるまで暫定憲法の役割を果たした。

 新中国が1949年10月1日に成立した後、1954年、1975年、1978年、1982年に『中華人民共和国憲法』が制定、公布された。

 4回目に定められた憲法が現行憲法で、1982年12月4日に第5期全国人民代表大会第5回会議で採択され、公布されたものである。この憲法は1954年に公布された憲法の基本的な原則を受け継ぎ、これを発展させ、中国社会主義の発展の経験を総括したもので、国際経験を取り入れながらも中国の特色を保ち、社会主義現代化建設の需要に適合した根本的な法律である。この憲法は中華人民共和国の政治制度・経済制度・公民の権利と義務・国家機関の設置と職責の範囲・今後の国家の根本的な任務などを明確に規定している。その根本的な特徴としては、中国の根本的な制度と根本的な任務を規定し、4項目の基本原則と改革開放の基本的な方針を定めている。また、全国各民族の人民とすべての組織は憲法を活動準則としなければならず、いかなる組織または個人も憲法や法律を超える特権がないと規定している。

 この憲法は序言・総綱・公民の基本権利と義務・国家機構・国旗・国章・首都の5つの部分に分かれ、合わせて4章138条がある。中国はこれまで、4回にわたって憲法改正を行い、絶えず整備してきた。

 現行の憲法は、1988年4月12日に第7回全国人民代表大会第1回会議で採択された『中華人民共和国憲法修正案』、1993年3月29日に第8回全国人民代表大会第1回会議で採択された『中華人民共和国憲法修正案』、1999年3月15日に第9回全国人民代表大会第2回会議で採択された『中華人民共和国憲法修正案』と2004年3月14日に第10回全国人民代表大会第2回会議で採択された『中華人民共和国憲法修正案』により修正された。

 

2、人民代表大会制度

 人民代表大会制度は中国の根本的な政治制度であり、中国の人民民主独裁政権組織の形態であり、中国政治の構成形式である。人民代表大会は西側の「三権分立」体制下の議会とは異なり、憲法上の最高の国家権力機関として位置づけられている。18歳以上の中国国民は人民代表の投票権と選挙権を持っている。県以下の人民代表は直接選挙により選ばれ、それ以外は間接選挙により選ばれる。全国人民代表大会は省や自治区・直轄市・軍の代表で構成される。各級人民代表大会は任期5年で、毎年1回の全体代表会議が行われる。

 毎年開かれる定例の人民代表大会においては、人民代表が政府活動報告その他の重要な報告を聴取・審議し、それぞれに応じた決議をする。各級人民代表大会の常設機関である人民代表大会常務委員会は人民代表大会閉会中、大会に与えられた職権を行使する。具体的には、全国人民代表大会常務委員会の職権は憲法の解釈・憲法適用の監督・全国人民代表大会により制定される以外の法律の制定と改正・・全国人民代表大会に対して責任を負い・活動報告をすること等である。

 中国人民代表大会の基本的な職権は立法権・監督権・重大な事項の決定権・人事任免権などである。中国においては、一定期間の国民経済と社会の発展計画制定は中国社会の発展を促進する重要な決定となる。しかし、このような計画は全国人民代表大会で可決されて初めて法的効力を有する。法律の規定に基づき国家主席や全国人民代表大会常務委員会委員長などの主要なリーダーは全国人民代表大会の選挙により選ばれる。国務院総理および各部(日本の省に相当)の部長(日本の大臣に相当)は全国人民代表大会により任命される。また全国人民代表大会は、全国人民代表大会常務委員会委員長・国家主席・国務院総理などの国家首脳を選挙あるいは決定などの手続きに基づき罷免することができる。

 

3、多党協力と政治協商制度

 中国共産党が指導する多党協力と政治協商制度は、中国の基本的政治制度である。

 中国は多党制の国であり、政権党の中国共産党の他に8つの民主党派がある。これらの民主諸党派は中華人民共和国の建国前にすでに成立しており、政治上では共産党の指導を擁護している。これは共産党との長期にわたる協力および共同の闘いの中で歴史的に選択されたものである。中国共産党と民主諸党派はいずれも憲法を根本的な活動準則としている。民主諸党派は組織上独立しており、憲法に規定された範囲内での政治的自由・組織的独立・法律的平等を有する。中国共産党と民主諸党派の協力の基本方針は、「長期にわたって共存し、相互に監督し、肝胆相照らし、栄辱をともにする」ことである

 中国の民主諸党派は野党でも反対党でもなく、参政党である。民主諸党派の国政参与の基本的な内容は、国の政の大方針と指導者の人選に関する協議に参加し、国家レベルの問題の管理に参し、国の方針・政策、法律・法規の制定と実施に参加することである。

 中国共産党は国家の重大な措置あるいは国計民生に関する重大な問題の決定について、あらかじめ民主諸党派や無党派の人々と協議を行い、各方面の意見と提言を広く聴いたうえで政策を形成する。民主諸党派と無党派の人々は国家権力機関である人民代表大会および常務委員会と常設専門委員会、また地方各クラス人民代表大会においていずれも適切な比率を占めており、国の政治活動に参加して政治問題を討議するとともに、政府監督に参与する。人民政治協商会議で民主諸党派と無党派の人々は一定の役割を果たすとともに、民主諸党派と無党派の人々は各クラス政府と司法機関の指導的職務に推薦される。

 多党協力と政治協商制度の主な形式の第一は、人民政治協商会議である。人民政協は各党派、各人民団体、民間各界の代表が国の政治活動に参加し、政治問題を討議する重要な場である、第二に、中国共産党中央委員会と地方各クラスの党委員会は民主諸党派と無党派人士を招いて座談会を開き、重要な情況を通知し、重大な方針・政策や国家と地方政府の指導者の候補リスト・人民代表大会の代表・政協委員の候補リストについて民主諸党派と協議し、意見や提言を聴取する。第三に、人民代表大会での民主諸党派代表は各クラスの人民代表大会において、人民代表として国の政治活動に参加し、政治問題を討議し、政府監督の役割を果たす。第四、民主諸党派のメンバーを推薦し、国務院および関係の部と委員会または県クラス以上の地方政府および関係部門の指導の職務につかせる。第五、条件に合った民主諸党派のメンバーを推薦し、司法機構の指導的職務につかせる。

 

二、国家機構

 

1、全国人民代表大会

 人民代表大会制度は中国の根本的な政治制度である。全国人民代表大会は中国の最高国家権力機関で、省・自治区・直轄市・特別行政区・軍隊で選出された代表によって組織され、国家の立法権を行使するとともに国家の政治生活に関わる重大な問題を決定する。

 全国人民代表大会の主な職権は、憲法改正、憲法実施の監督、刑事・民事・国家機関とその他の基本的法律の制定と改正を行うこと、国民経済と社会発展計画及び国家予算と予算の実行情況の報告を審査し採択すること、省・自治区・直轄市の設置、特別行政区の設立およびその制度を決定すること、戦争と平和の問題を決定すること、最高の国家権力機関のリーダー、つまり全国人民代表大会常務委員会委員・国家主席・副主席を選出し、首相と内閣及びその他の構成メンバーの人選を決定し、中央軍事委員会主席とその他の構成メンバーの人選を選出し、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長を選挙することである。全国人民代表大会はこれらの人選について罷免権を擁する。

 全国人民代表大会の任期は1期5年で、年に1回会議を開催する。全国人民代表大会の閉会期間中、常設機関である常務委員会によって最高の国家権力を行使する。全国人民代表大会常務委員会は委員長・副委員長・秘書長・委員で構成される。第12期全国人民代表大会常務委員会委員長は張徳江である。

 中国の立法には全人代とその常設委員会の立法、国務院とその部門の立法、一般地方の立法、民族自治区地方の立法、経済特別区と経済特別行政区の立法が含まれる。

 

2、中国人民政治協商会議

 中国人民政治協商会議(略称:人民政協)は中国人民愛国統一戦線の機構であり、中国共産党の指導する多党協力と政治協商の重要な機関であり、中国の政治生活で社会主義民主を発揚させる重要な形式でもある。団結と民主は中国人民政治協商会議の二大テーマである。

 中国人民政治協商会議全国委員会は中国共産党・各民主党派・無党派の人々・人民団体・各少数民族と各界の代表・香港特別行政区同胞・マカオ特別行政区同胞・台湾同胞と帰国華僑の代表・特別に招かれた人々で構成され、若干の区分が設けられており、一期の任期は5年である。中国人民政治協商会議第12期全国委員会出席は兪正声である。

 中国人民政治協商会議全国委員会と地方委員会の主要な職能は政治協商・民主監督・政治参画・政治討議である。

 政治協商とは、国家や地方の大きな政策方針や政治・経済・文化・社会生活における重要な問題に対する決定を行う前に協議したり、政策の実施に関する重要な問題について討議したりすることである。中国人民政治協商会議全国委員会と地方委員会は、中国共産党・人民代表大会常務委員会・人民政府・民主党派・人民団体の提案に基づいて、各党派・団体の責任者と各民族・各界の代表が参加する会議を開き、協商を行うほか、以上のような機構や組織が重要な問題を提出し、協議することを進める。

 民主監督とは、憲法・法律・法規の実施、重大な方針政策の貫徹実行、政府機関及びその職員の仕事に対して提案と批判を通じて監督を行うことである。

 政治参画・政治討議とは、政治や経済、文化と社会生活における重要な問題、及び大衆が普遍的に関心を寄せる問題について調査と研究を行い、社会状況と住民の意を反映し、協商と討議を行うことであり、調査・研究の報告・提案やその他の形式を通じて中国共産党と政府機関に意見を出し助言することである。

 1949年9月、中国人民政治協商会議第1回全体会議は全国人民代表大会の職権を代行し、全国人民の意思を代表して中華人民共和国の成立を宣言し、重要な歴史的な役割を果たした。1954年、第1期全国人民代表大会開催後、人民政治協商会議は全人代の職権を代行しなくなったにもかかわらず、中国の最も広い愛国統一戦線組織として引き続き存在し、国家の政治生活と社会生活、対外友好活動で大きな貢献をしてきた。2004年3月まで、全国人民政治協商会議は世界の101の国の170の機関・8つの世界と地域の組織と関係を結び、友好往来を行っている。

 

3、国務院、及びその直属機関

 中華人民共和国国務院は中国の中央人民政府であり、最高国家権力機関の執行機関であり、最高の国家行政機関であり、首相・副首相・国務委員・閣僚・各委員会主任・会計審査長・秘書長により構成される。国務院は首相責任制を実行し、各部と各委員会はそれぞれ部長責任制・主任責任制を実行する。国務院秘書長は首相の指導の下で、国務院の日常的な仕事を処理する。国務院は秘書長をリーダーとする辧公庁を設ける。

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 首相:李克強

 副首相:張高麗、劉延東、汪洋、馬凱

 国務委員:楊晶、常万全、楊潔チ、郭声琨、王勇

 国務院秘書長:楊晶(兼)

 憲法第89条の規定に基づき、国務院は以下の職権を行使する。

 一、 憲法と法律に基づき、行政措置を規定し、行政法規を制定し、決定と命令を公布する。

 二、 全国人民代表大会あるいは全国人民代表大会常務委員会に提案を提出する。

 三、 各部と各委員会の任務と職責を規定し、各部と各委員会の事務を統一的に指導するほか、各部と各委員会に所属していない全国的な行政業務を指導する。

 四、 全国地方各クラス国家行政機関の業務を統一的に指導し、中央と省・自治区・直轄市の国家行政機関の職権の分配を具体的に規定する。

 五、 国民経済と社会発展計画と国家予算の制定と執行。

 六、 経済活動と都市・農村部の建設の管理と指導。

 七、 教育・科学・文化・衛生・スポーツ・計画生育活動の管理と指導。

 八、 民政・公安・司法行政・監察活動の管理と指導。

 九、 対外業務・外国との条約の締結や協定を管理する。

 十、 国防建設事業の管理と指導。

 十一、 民族関連業務の管理と指導・少数民族の平等な権利と民族自治地方の自治権利を保障する。

 十二、 華僑の正当な権利と利益の保護、帰国華僑とその親戚の合法的な権利と利益の保護。

 十三、 各部と各委員会により公布された不正な命令・指示・規定の修正あるいは撤廃

 十四、 地方各級国家行政機関により公布された不正な決定と命令の修正あるいは撤廃。

 十五、 省・自治区・直轄市の区域の区分の批准、自治州・県・自治県・市の設立と区域の区分の批准。

 十六、 法律に基づき、省・自治区・直轄市の範囲内の一部が緊急態勢に入ることの決定。

 十七、 行政機関の編制を審査し、法律に基づいて行政職員に対し任免・養成・考察・奨励を行う。

 十八、 全国人民代表大会と全国人民代表大会常務委員会により授与されたその他の職権。

 国務院と部・委員会

 一、 中華人民共和国国務院辧公庁

 二、 国務院の各部門(25) *部は日本の省に相当

 外交部、国防部、国家発展改革委員会、教育部、科学技術部、工業・情報化部、国家民族事務委員会、公安部、国家安全部、監察部、民政部、司法部、財政部、人力資源・社会保障部、国土資源部、環境保護部、住宅・都市農村建設部、交通運輸部、水利部、農業部、商務部、文化部、国家衛生・計画出産委員会、中国人民銀行、会計審査署

 監察部と中国共産党中央紀律検査委員会機関は合併し、機構は国務院に編入、編制は中国共産党中央の直属機構に編入する。

 三、 国務院直属特設機構:国務院国有資産監督管理委員会

 四、 国務院直属機構;中華人民共和国税関総署、国家税務総局、国家工商行政管理総局、国家品質監督検査検疫総局、国家新聞出版広電総局、国家体育総局、国家安全生産監督管理総局、国家食品薬品監督管理総局、国家統計局、国家林業局、国家知的財産権保護局、国家観光局、国家宗教事務局、国務院参事室、国家機関事務管理局

 国家腐敗予防局は国務院直属機構序列にも編入され、監察部に看板を掲げる。国家新聞出版広電総局に国家財産権局の看板を掲げる。

 五、 国務院事務機構:国務院僑務辧公室、国務院香港・マカオ事務辧公室、国務院法制辧公室、国務院研究室。

 国務院台湾事務辧公室と中国共産党中央台湾工作辧公室、国務院新聞辧公室と中国共産党中央対外宣伝辧公室、国務院防犯・邪教問題処理辧公室と中央防犯・邪教問題処理指導グループ、それぞれ一つの機構に2枚の看板を掲げて、中国共産党中央の直属機構序列にも編入される。

 六、 国務院直属事業単位:新華通信社、中国科学院、中国社会科学院、中国工程院、国務院発展研究センター、国家行政学院、中国地震局、中国気象局、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会、全国社会保障基金理事会、国家自然科学基金委員会。

 七、 国務院部と委員会管理の国家局:国家信訪局、国家食糧局、国家エネルギー局、国家国防科学と技術工業局、国家煙草専売局、国家外国専門家局、国家公務員局、国家海洋局、国家測絵地理情報局、国家鉄道局、中国民用航空局、国家郵政局、国家文物局、国家漢方医薬管理局、国家外貨管理局、国家炭鉱安全監察局

 国家檔案局と中央檔案館、国家保密局と中央保密委員会辧公室、国家コード管理局と中央コード指導小組辧公室、それぞれ1つの機構で2枚の看板を掲げて、中国共産党中央直属機関の傘下機構に編入される。

 八、国務院議事協調機構

 

4、中央軍事委員会

 中国共産党中央軍事委員会は中国共産党の指導する最高軍事指導機関で、略称は中央軍事委と言う。主席・副主席・委員からなる。中央軍事委員会は中国共産党中央委員会によって決定され、主席責任制を実行する。全国の武装力を直接指導することをその主要職能とする。中国共産党中央軍事委員会主席は習近平である。

 中華人民共和国中央軍事委員会は国家の軍事指導機関であり、全国の武装力を指導する。中央軍事委員会は主席・若干の副主席・若干の委員からなり、主席責任制を実行する。主席は全国人民代表大会での選挙によって選出され、全国人民代表大会およびその常務委員会に対して責任を負う。中央軍事委員会の任期は1期5年で、再任制限はない。中華人民共和国中央軍事委員会主席は習近平である。

 中国の武装力は中国人民解放軍・中国人民武装警察部隊・民兵から構成される。人民解放軍は国家の常備軍であり、武装警察部隊は国家から与えられた安全保安の任務や社会秩序維持の任務を担う。民兵は生産を離れない民間武装力である。

 

5、人民法院

 人民法院は国家の裁判機関である。国家は最高人民法院を設置し、各省、自治区・直轄市は高級人民法院を設置する。それ以下の行政区は中級人民法院・基層人民法院を設立する。最高人民法院は国家の最高裁判機関であり、裁判権を独立に行使する。同時に、地方の各クラス人民法院と専門人民法院の裁判活動の最高監督機関でもある。最高人民法院は全国人民代表大会とその常務委員会に対し、責任を持って活動を報告する。最高人民法院の院長、副院長および最高人民法院裁判委員会委員は全人代によって任命される。

 最高人民法院の職責は、地方法院の裁判や裁定を不服とする上訴と控訴案件および最高人民検察院が裁判監督手続に基づいて提出した控訴案に対する裁判、死刑の裁可、各級人民法院の法的効力を発効した判決・裁定に誤りを発見した時、自ら審理し下級法院の再審理を命令する権限がある。また、裁判の過程で法律をいかに具体的に運用するかなどの問題に対する解釈を行うことなどである。

 最高人民法院院長は周強である。

 

6、人民検察院

 人民検察院は国家の法律を監督する機関であり、検察権を行使することで自己の任務を完成する。国に反逆し、国を分裂させようとするなどの重大な犯罪案件に対して検察権を行使する。公安機関に捜査させ、捜査した案件に対して逮捕するか否か、起訴か免訴かを決定する。刑事案件に対し公訴を提起し、公訴を維持する。また、公安機関や人民法院・監獄・刑務所・労働矯正機関の活動が合法になされているか監督する。

 人民法院が裁判権を独立して行使するのと同様に、人民検察院は法に基づいて検察権を独立して行使し、行政機関や社会団体、個人の干渉を受けない。すべての公民に対し、法律の適用は一律に平等である。国家は最高人民検察院や地方の各級人民検察院、軍事検察院など専門の人民検察院を設置する。中国人民検察院は末端・中級・高級・最高の4級に分けられる。最高人民検察院は国家の最高検察機関であり、国家を代表して検察権を独立して行使し、その活動は直接全人代常務委員会に対して責任を負う。その主要任務は地方の各級人民検察院や専門人民検察院を指導して、法に基づいて法律監督の職能を実行し、国家の法律の統一と正確な実施を保証する。

 最高人民検察院の検察長は曹建明である。

 

三、中国の政党

1、 中国共産党

 中国共産党は中国の労働者階級の先鋒隊であると同時に、中国人民と中華民族の先鋒隊であり、中国の特色を持つ社会主義事業を指導する核心でもあり、中国の先進的な生産力発展の要求を代表し、中国の先進的な文化の前進方向を代表し、中国のもっとも広範な人民の根本的な利益を代表する。中国共産党の最高理想と最終目標は共産主義の実現を目指すことである。

 中国共産党はマルクス=レーニン主義・毛沢東思想・鄧小平理論・『三つの代表』という重要な思想と科学的発展観を行動の指針とする。

 科学発展観はマルクス=レーニン主義・毛沢東思想・鄧小平理論・『三つの代表』という重要な思想と同じ流れを受け継ぐもので、時とともに進化する科学理論である。マルクス主義が発展する世界観と方法論に関する集中的体現であり、マルクス主義の中国化の最新の成果である。そして、中国共産党の集団的な知恵の結晶であり、中国の特色ある社会主義が必ず堅持・貫徹する指導思想である。

 改革開放以降、中国がすべての成果と進歩を獲得した根本的原因は、中国の特色ある社会主義道路を切り開き、中国の特色ある社会主義理論体系を形成し、中国の特色ある社会主義制度を確立したことにある。

 社会主義の初級段階における中国共産党の基本的路線は、全国各民族人民を指導・結集して、経済建設を中心としながら4つの基本原則(社会主義の道の堅持・人民民主主義独裁の堅持・中国共産党の指導の堅持・マルクス=レーニン主義と毛沢東思想の堅持)を堅持し、改革と開放を堅持して、自力更生・刻苦創業につとめて、中国を富強・民主・文明の現代化した社会主義国に築き上げるために奮闘することである。

 中国共産党は独立自主の平和外交政策を堅持し、平和発展の道と互恵・互利の開放戦略を堅持し、国内と世界の2つの大局を統一的に協調させ、積極的に対外関係を発展させ、中国の改革開放と現代化建設に有利な国際環境を作るよう努力する。国際問題においては、中国の独立と主権を守り、覇権主義と強権政治に反対し、世界の平和を擁護し、人類の進歩を促進し、恒久平和と共同繁栄の調和のとれた世界の構築を推し進めることに努める。主権および領土保全の相互尊重・相互不可侵・相互内政不干渉・平等互恵・平和共存の5原則を踏まえて、中国と世界各国との関係を発展させる。中国と周辺諸国との善隣友好関係を絶えず発展させ、発展途上国との連帯と協力を強化する。独立自主・完全平等・相互尊重・相互内政不干渉の原則に基づいて、中国と各国の共産党およびその他の政党との関係を発展させる。

 中国共産党は自己の綱領と規約、そして民主集中性という原則に基づいて組織した統一的な団体である。『中国共産党規約』は満18歳の中国の労働者・農民・軍人・知識人及びその他の社会階層の先進的な人々が党の綱領と規約を認め、党の組織に参加し、積極的に活動し、党の決議を実行して、規則通りに党費を納めるなら中国共産党への参加を申請することができると規定している。

 中国共産党の中央組織には、党の全国代表大会・中央委員会・中央政治局・中央政治局常務委員会・中央書記局・中央軍事委員会・中央規律検査委員会が含まれる。党の全国代表大会は5年に1回開かれる。全国代表大会の閉会期間中、中央委員会は中国共産党の最高指導機関となる。

 中国共産党は現在8500万人の党員がいる。中国共産党第18期中央委員会総書記は習近平である。

 

2、 中国の民主諸党派

 中国には、中国共産党のほか、中国国民党革命委員会・中国民主同盟・中国民主建国会・中国民主促進会・中国農工民主党・中国致公党・九三学社・台湾民主自治同盟の8つの政党がある。これらの党派は民主党派と呼ばれる。大多数は抗日戦争や全国解放戦争の中で成立・発展したものである。民主党派は政治的には中国共産党の指導を擁護する。これは民主党派が共産党と長期にわたる協力と共同の闘いの中で行った歴史的な選択である。各民主党派は憲法が規定する範囲内の政治的自由、組織的独立と法律的な地位の平等を享有する。長期的に共存し、互いに監督し合い、肝胆相照らし、光栄と屈辱を共にするというのが中国共産党が各民主党派と協力する基本方針である。

 各民主党派は野党でも反対党でもなく、参政党である。現在、中国の各級の人民代表大会常務委員会、政治協商委員会、政府機関、経済・文化・教育・科学技術などの部門にはいずれも多くの民主党派の人々が指導的ポストに着いている。例えば、8つの民主党派の現任の中央委員会主席はそれぞれ全国人民代表大会常務委員会の副委員長または全国政治協商会議副議長を務めている。同時に、各民主党派は各省や自治区・直轄市・各大中都市に民主党派の地方組織と末端組織を設置している。

 中国国民党革命委員会

 中国国民党革命委員会(略称:民革)は1948年1月1日に正式に発足し、中国国民党民主派とその他の愛国民主主義者が作ったものである。政治連盟の特徴があり、中国の特色を持つ社会主義の建設と祖国の統一事業に努める政党である。主要な創立者は宋慶齢・何香凝・李済深である。中国国民党革命委員会第12期中央委員会主席は万鄂湘である。

 中国民主同盟

 中国民主同盟(略称:民盟)は文化教育と科学技術に従事する中高級知識人により組織されたもので、1941年3月に発足し、政治連盟の特徴を持ち、社会主義事業に取り組む政党である。主要な創立者は張澜・沈鈞儒・黄炎培・章伯鈞などである。中国民主同盟第11期中央委員会主席は張宝文である。

 中国民主建国会

 中国民主建国会(略称:民建)は主に経済界の人々から構成され、1945年12月に発足した。政治連盟の特徴を持ち、社会主義事業に取り組む政党である。創立者は黄炎培・胡厥文・章乃器・施复亮などである。中国民主建国会第10期中央委員会主席は陳昌智である。

 中国民主促進会

 中国民主促進会(略称:民進)は教育文化出版に携わる中高級知識人が主となって、1945年12月に発足した。政治連盟の特性を持ち、中国の特色ある社会主義事業の建設に取り組む政党である。主要な創立者は馬叙倫・王紹鏊・周建人・許広平などである。中国民主促進会第13期中央委員会主席は厳隽琪(女)である。

 中国農工民主党

 中国農工民主党(略称:農工党)は1930年8月に発足した。医薬衛生界の中高級知識人を主とし、政治連盟の特徴をもつ、中国の特色ある社会主義事業の建設に取り組む政党である。主要な創立者は鄧演達・黄琪翔・章伯鈞などである。中国農工民主党第15期中央委員会主席は陳竺である。

 中国致公党

 中国致公党(略称:致公党)は1925年10月に発足される。帰国華僑や華僑の家族を主とする民主党派である。政治連盟の特徴をもち、中国の特色ある社会主義事業の建設に取り組む政党である。中国致公党第14回中央委員会主席:万鋼    

 九三学社

 1946年5月に、科学技術界の高中級知識人が主となって発足した。政治連盟の特徴をもち、中国の特色ある社会主義事業の建設に取り組む政党である。主要な創立者は許徳珩・潘菽・涂長望などである。九三学社第13期中央委員会主席は韓啓徳である。

 台湾民主自治同盟

 台湾民主自治同盟(略称:台盟)は1947年11月に発足した。台湾省出身者からなる社会主義者の労働者と社会主義を擁護する愛国者の政治連盟であり、社会主義に奉仕する政党でもある。主要な創立者は謝雪紅・楊克煌である。台湾民主自治同盟第9期中央委員会主席は林文漪(女)である。