瀋陽で行われていた日朝実務者会議が13日未明終了しました。双方は、6月の協議で朝鮮が約束した拉致被害者に関する再調査の方法について意見を一致させ、可能ならば今年秋までに調査を終えることなどで合意しました。これに対応し、日本側は朝鮮の調査開始と並行する形で、制裁措置の一部を解除すると約束しました。しかし、双方は拉致問題について実質的な進展を遂げていないため、両国関係の正常化まではまだまだ道のりが長いのが現実です。時事解説、今日はこれについてお話します。
協議では、調査方法に関する日本側の提案を朝鮮がおおむね受け入れ、被害者に関する全面的な調査を行うこと朝鮮は権限を与えられた調査委員会が迅速に調査し、可能なかぎり今年の秋までに調査を終了すること調査の過程において、朝鮮は日本側に随時報告し、協議を行うこと関係者との面会、関係資料の共有、関係する場所への訪問などを通じて、調査の結果を直接確認できるよう協力することを確認しました。これに対し日本側は、朝鮮側が調査委員会を立ち上げた時点で、経済制裁のうち、人的往来とチャーター航空便の乗り入れ禁止を解除することで合意しました。
専門家は、「今回の実務者会議は、長い間対立していた日朝関係に転機をもたらした」と見ています。この転機には様々な要因があります。
拉致問題とは、朝鮮の工作員が日本人を連れ去った疑惑のことを指し、1977年から1978年にかけて多発したと見られています。朝鮮側はこれを否定し、「日本はこれを利用して、歴史問題をごまかそうとしている」と非難しています。長年、双方は拉致された人の数やその行方、家族との面会などの問題について互いに譲らない姿勢を見せています。2005年、日本は拉致問題を6カ国協議の枠組みに入れ、経済制裁案を提出しました。2006年7月に、朝鮮がミサイルを発射し、10月には核実験を行ったと発表したことを受けて、日本は朝鮮に対し経済、金融制裁を実施し、双方の関係はさらに悪化しつつあります。
しかし、6カ国協議が大きな進展を遂げたと同時に、米朝関係が回復しつつある中、拉致問題に固執する日本の6カ国協議での立場はますます不利になっています。日本政府は、単独交渉で朝鮮との関係を改善しなければ、6カ国協議から外される恐れがあると懸念しています。また、拉致問題は日本の首相がその支持率を高めるための外交カードでもあります。福田首相はこの問題で常に控えめな態度をとっていきましたが、内閣支持率が下がっている状況の中、拉致問題で進展を遂げれば、支持率アップにプラスとなると見られています。
一方朝鮮にとっては、拉致問題が解決されれば、制裁が解除され、自国の経済発展にもプラスとなります。また、アメリカは朝鮮をテロ支援国リストから除外すると約束しました。しかし、実施には至っておらず、日本が拉致問題を解決することを支持すると折に触れて表明していることから、朝鮮にとっては一定の圧力になっています。
日朝双方はそれぞれ利害を比較検討した結果、今回の実務者協議では一定の成果をあげました。しかし世論は、日朝関係の改善にはまだまだ多くの不確定要素があると見ています。拉致問題の調査方法と結果が日本国民を納得させるものでなければ、進展に影響を及ぼす可能性があります。このほか、朝鮮は、「日本が直ちに制裁を解除しないと、協議の実施に変更が生じる」と表明しています。両国関係の正常化にはまだまだ多くの困難が横たわっています。(担当:ooeiei)
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