南アフリカのターバンで開かれた国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の第29回世界遺産委員会は16日、「紫禁城」の名で知られる北京の世界遺産・故宮(皇宮)の保護の現状について討論した。また、近年国民の注目が高まっている故宮周辺の景観保護エリア「緩衝地区」の整備計画を審議し、採択した。
伝統建築と文化財の専門家、羅哲文氏は、「故宮のように世界的な名声を誇る文化遺産にとって、環境保護は非常に重要だ。故宮は、現存する中では最も保存状態が良く、規模が最大の皇宮であり、周囲の環境を保護範囲に入れなければ、全体的な景観に影響するのは必至だ。放置しておけば、周囲を高層ビルに囲まれ、故宮は『四角い空を見上げる』ことになってしまうだろう」と指摘した。
「緩衝地区」の整備を強調することは、世界遺産保護の全体的な傾向となっている。近年、都市整備はますます加速し、世界遺産と周辺環境の保護に影響を与えている。こうした問題を未然に防ぐために設定されたのが緩衝地区だ。世界遺産委員会が各国の登録申請資料を審議する時のキーワードは、「緩衝地区」。世界遺産の審査に合格しなかった、あるいは危機遺産に登録されたケースは、大部分が緩衝地区の整備計画に問題があったためだ。このため、中国各地の世界遺産申請候補はいずれも、具体的な緩衝地区整備計画を用意している。
しかし、故宮の緩衝地区計画は現実的な問題に直面している。保護計画の実施により、緩衝地区の住民の生活に大きな影響が出ると予想されるためだ。
北京の地図を広げると、今も残されている伝統的な路地「胡同」や伝統家屋「四合院」は、ほとんどすべて緩衝地区の保護範囲に入る。保護計画では、胡同や四合院の残るエリア内の道路・路地の拡幅工事は、原則として禁止される。北京市文物局の梅寧華局長はこれについて、緩衝地区に集中しすぎた人口を移転させる計画を明らかにした。長い間手入れされていない四合院に対しては、所有権を修復能力のある人に移し、新たな所有者が政府の資金援助を受けながら保守を担当することで、保護計画の目標を実現する。梅局長は、「最も理想的な人口密度は、昔の状態だ。つまり、現在のように1つの四合院に多世帯が住むのではなく、1~2世帯が住む状態だ」と話す。今後、緩衝地区内の胡同や四合院の保守を進める上で、実行可能と考えられている方法は「ミクロ循環」、つまり広範囲の取り壊しや改造ではなく、家屋単位での修復という。
北京市は昨年、故宮の緩衝地区プランの草案を作成した。市民や専門家の審議、市政府の検討を経て、首都計画建設委員会に承認されている。しかし、打ち出されたプランの実現のカギを握るのは、実行段階だ。このため、故宮など世界遺産の緩衝地区の保護は、最終的には具体的できめ細かな保護作業に頼ることになる。
財源はどこにあるか?住民の移転先はどこか???これが緩衝地区、つまり旧市街の保護にとって重要な課題だ。こうした難題を解決するには、資金や人材、さらに管理者の眼力と気迫が必要になる。
「人民網日本語版」
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