日本と言うと何を思い浮かべるでしょうか。高くそびえ立ち、頂に真っ白な冠雪をかぶった富士山、それともきらびやかなネオンで彩られた世界有数の大都市・東京、はたまた頻繁な地殻運動によって湧き出た全国各地の温泉でしょうか。
東京都からほど近い山梨県は、大都市の喧騒から少し離れた安らぎのオアシスのような街です。山梨に足を踏み入れると、湿気を少し含んだ暖かい森の緑の香りに迎えられ、深呼吸すると心が洗われた気分になります。湖、渓谷、そして変化に富む景色と豊かな自然があるため、人気の観光地として親しまれています。
CRI・中国国際放送局と日本のテレビ山梨による今回の合同取材は、この美しい場所で幕を開けました。中国人記者である私の役目は、独自の視点で山梨をとらえ、その美しい風景を中国人に伝えることにあります。
日本で6月は梅雨の季節に当たります。そのため、この季節に富士山が見られるかどうかは運が試されます。富士山のふもとに撮影に向かう途中、テレビ山梨の方々に習って両手を合わせ、目を閉じて祈りを捧げました。すると、トンネルを抜けたとその時です。思わず「ラッキー!」と叫んでしまいました。私たちの目の前に真っ白な冠雪をかぶった富士山が現れたのです。その姿はまさに逆さまにした扇のようで、日本の詩人が「白扇倒懸東海天(白扇倒(さかしま)に懸かる 東海の天)」と詠んで富士の美しさを称えたわけが分かりました。
富士山は霊峰と呼ばれており、日本のシンボルとなっています。私もこの季節に富士山の姿を拝めたことに密かに感激し、今回の取材が大成功する予感に胸を弾ませました。
富士山を間近で眺められるというのは、山梨の魅力のほんの一部に過ぎません。最上の幸せとは、露天風呂に浸りながら、うっそうと生い茂る柳に囲まれて富士山を眺めることではないでしょうか。日本は世界の温泉王国と呼ばれています。全国に2600か所以上の温泉があり、日本人は温泉に対して深い愛着があります。そこで今回の特集番組も温泉からスタートすることにしました。時間の都合で温泉を実際に体験することはできませんでしたが、大自然の懐に抱かれて詩の世界のような風景に浸れば、心は瞬く間に癒されることでしょう。どのような悩みも消え去ってしまうに違いありません。
富士山と温泉のほかにも、山梨県の南部には富士五湖と呼ばれる5つの湖があります。湖の岸に歩み寄ると、白鳥があいさつし、鯉が腰を振って会釈をします。そんな姿を見たみんなは大笑いでした。といっても白鳥や鯉は別に私の美ぼうに引き付けられたわけではなく、私が手に持っていたえさが魅力的だったようです。そして私たちは湖に逆さまに映る富士を撮影するため、遊覧船に乗りました。この時の撮影で最も印象深かったのは景色ではなく、テレビ山梨のカメラマンとアシスタントでした。いまの季節でも甲板に吹く風ははやり冷たく、一周30分の間に、私たちは風を避けようと船室と甲板の間を行ったり来たりします。それに対し、テレビ山梨のカメラマンとアシスタントは唯一自分の持ち場でじっとしていました。最も頭が下がったのは笑顔を終始絶やさず、いらいらせずに、グチもこぼさず、ひたすら黙々と働いていることでした。
こうした感覚は取材全体に共通したものでした。撮影班で山梨の富士急ハイランドに来た時のことです。尊敬の念は頂点に達しました。スリルと刺激が売りの富士急ハイランドには、ギネスブックに登録されている高さ79メートルのジェットコースターがあります。当初からの計画で、私がこのアトラクションに挑戦することになっていました。しかし今回は本当にしり込みしてしましました。世界一の高さは地上から見上げただけでも足がすくんでしまいます。そこで何度も内容の変更をお願いするのですが、仕事において一度決定したことを簡単に変更することがない日本人。泣き落としも通じず日本側は全く応じてくれません。しかし時間が刻一刻と過ぎる中、日本側も少し気の毒に思ったようで、高さ59メートルの高速回転ブランコ「鉄骨番長」に変更してくれることになりました。理由は簡単で、同行していた日本側の関係者も誰一人としてこのジェットコースターに挑戦したことがなかったからです。そして、いよいよ私の腕に小型カメラが括りつけられ、恐怖の瞬間がやってきました。空中で目が回っているにもかかわらず、耳元からは「スマイル、スマイル」と仕事熱心に呼びかける声が聞こえてきます。この時、日本側関係者の仕事に対する生真面目な態度には敬服しました。ただこのアトラクションをもう一度体験したいかと聞かれれば、私は「これっきりで」と答えます。
山梨の旅、これはまだ始まりに過ぎません。
山梨の美しい世界を徐々に皆さんにお伝えしていきます。
© China Radio International.CRI. All Rights Reserved. 16A Shijingshan Road, Beijing, China. 100040 |