さて、試合がはじまる直前になって田忌は孫臏の指示に従い、上等級の馬の鞍を取り外して下等級の馬につけて上等級の馬に見せかけ王の上等級の馬と対戦させることにした。こうして対戦が始り、王の馬は矢のように前を走り、田忌の馬はかなりの距離をつけられてあとに続いた。これを見た王は有頂点になって大笑い。だが第二試合、田忌は孫臏の指示に従って、自分の上等級の馬を王の中等級の馬と競わせたので、田忌の馬が王の馬を抜いて前を走り、大喝采の下に第二試合をものにした。そして大事な第三試合であるが、田忌の中等級の馬と王の下等急の馬との対戦になり、田忌の馬がまたも王の馬を負かせ、結果は二対一で、田忌は王に勝ったのである。
これまで負けたことのなかった王は驚きのあまりあいた口がふさがらない。そこで仕方なく、田忌に、どこであんないい馬を手に入れたのかと聞くと、田忌は自分が勝ったのはいい馬を手に入れたのではなく、戦略の活 用にあると答え、孫臏に教わった策を教えると、王は大いに悟り、すぐに孫臏を王宮に招いた。そこで孫臏は、双方の条件が対等のときは、策を用いて相手に勝つことができ、そして双方の条件の差は大きくても、策を用いれば損失を最小限に抑えることができると王に告げた。やがて、王は孫臏を軍師に任命し、全国の軍隊の指揮権を与えた。その後、孫臏は田忌に協力して、斉の軍隊の作戦方法を変えたので斉の軍隊はその後、他国の軍隊と戦い、数え知れぬ勝利を収めたのだった。
そろそろ時間のようです。では来週またお会いいたしましょう。
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