率直に話し合い、協力して危機を乗り越える
「村山談話」を発表し、日本の戦争の過ちを認め反省の意を初めて公的に表明した元首相、村山富市氏。彼の名がついた談話は、今日、中日関係を語る上でも踏襲され続けています。
中国の人々に「長眉老人」という愛称で親しまれる村山元首相。今は立命館アジア太平洋大学の孔子学院の顧問を務めており、中国文化を世界へ広める孔子学院大会にゲストスピーカーとして北京を訪れました。改革開放30年来の中国の発展や中日関係の今後についてどのように見ているのか、CRIがインタビューしました。
■ お互いに知り合うこと、理解し合うことが大切
Q 今回は、立命館アジア太平洋大学の孔子学院の顧問として訪中されました。孔子学院大会に参加した感想はいかがですか?
A 皆さん各国から参加されて、非常に熱心に議論をされている風景に感心しました。中国は今国際的に関心が高まっていますから、それがひとつの大きな力となって、どこの国も「中国を知りたい」「中国語を勉強したい」そういう気持ちがどこでも盛んになっているわけですね。
Q 孔子学院というのは、中国の教育省が中心となって中国文化を広めていますが、こうした中国の取り組みをどう思いますか?
A お互いに知り合うことがやはり大切です。これから発展する中国の姿を皆さん方に正しく理解してほしい、知ってほしいという意味で、非常に大きな効果があるのではないですか。知り合うということ、理解し合うということがやっぱり大事なんだね。
Q 昨日の開会式の演説で「戦争でアジアの人々に苦痛を与えた」ということを改めて述べたことが印象的でした。なぜ演説の中でこのことを述べられたのですか?
A やっぱり過去にあったことについても、どのように日本は受け止めているのかということについて皆さんに知ってもらうということも大事なことです。その過ちを謙虚に受け止めて、そういうことを繰り返さないための決意を皆さんに知っていただくということも大事です。これは単に中国の方々に申し上げるのではなく、世界の国々の方に知っていただくことも大事だと思ったので、私はあえて触れたわけです。
Q 先生は中日友好のためにいろいろなことをなされています。中国の人民の中では、先生の長い眉が印象的で、笑顔が素敵で優しいおじいさんというイメージを持っています。こうした中国の人々の見方についてどう思いますか。
A (笑顔で)それは私には良くわかりませんけど。まあまあ、やっぱり理解しあうことが大事なので、そのためには知ってもらわないといかんね。孔子学院はそんな意味で、中国への関心が非常に今高まっているわけで、その関心が高まっているうちに中国を知ってもらう、理解してもらう。学習することによって学んでいくことには意味がある。 それは単に中国のためというわけではなく、日本にとって中国は大事な国だし、中国にとっても日本は大事な国にならなければいかん。そういうことを考えた場合、孔子学院がやっていることはそれなりの意味があると僕は思います。
■ 率直に話し合い、協力して危機を乗り越える
Q中国と日本の関係について考えるとき、日本とアメリカ、日本と中国、この関係を日本はどのように処理したら良いと先生はお考えになっているのでしょうか。
A どっちがどっちというのではなくて、歴史的に地理的に考えても中国と日本は一衣帯水の関係です。その歴史的な過去の歩みは無視することはできない。そして将来について考えた場合、さっきも言いましたように、日本にとって中国は大事な国です。また中国にとって日本は大事な国だと言われていますよね。そういう関係をしっかり作り上げていく。それはアメリカに対抗するということではなく、そうすることでアメリカのためにもなる。日本とアメリカ、中国とアメリカのためにもなる。そういう風に考えて対応することが大事ではないか。対立する関係を作るのではなく、互恵関係をつくることが大事なんだね。だから私は、日本と中国が互恵関係をしっかりと確立して緊密になっていくことは、アメリカにとっても良いという風に受け止めたほうがよいと思います。
Q だれが一番、二番だということではない。
A ええ。やはり歴史的に地理的に日中関係というのは非常に大事です。
Q 今日本の政局がすごく不安定です。今後中国は、どのような日本政府が出てくることを期待したらよいのでしょうか。
A 日本はいったいどのようになっていくのかということについて非常にご心配されていると思いますが、これは時間の問題でいつかは必ず解決する。だけれども、政局がどうなるこうなるということよりも、経済的な主導権はしっかりしている。今アメリカから起こってきた金融危機や経済不況とか、このような世界的な問題について、これは日本独自で解決できる問題ではないし、中国独自で解決できる問題でもないです。それだけに、日本と中国や、まあ今度は日中韓の首脳会議がありますが、そういうお互い率直に話し合う機会に、協力して危機を乗り越えていくことができればよいと思います。
日本の今の政局のいろいろな問題というのは、いずれ解決しなければいけません。私は今のような経済危機の中で、きわめて重要なときにこういう状況になるというのは非常に申し訳ないと思うし、きわめて残念に思います。
■ 日中関係はこれから新しい時代へ
Q 実は、今年は中国改革開放30周年という年でもあるのですが、今回先生が中国を訪れて、中国の発展を見てどのように思いましたか。
A 私は文革の終わる直前に中国に一回参りました。あれから何度か中国を訪れているのですが、改革開放政策が取られてからは急速な進歩ですよ。中国は本当に変わりましたね。世界的に無視できないような、経済的に力を持った国になりましたね。それはすごいですね。
Q その中で中国と日本の関係がもっと良くなったらよいと思いますが。
A それは全然摩擦がなく、全然問題がなくうまくいくとは思いません。だけれども、何があっても話し合いで解決する努力をすれば、それは解決する問題だと思いますし、そのことはまたお互いがより良くしていくためのステップだと思います。お互い率直に気持ちを開いて話し合って、情報も交換し合ってやっていくいうことが大事だと思います。そういう努力の積み上げの上に日中関係は作られていくので。私は胡錦涛国家主席がこの5月に日本にこられて、早稲田大学や国会で演説を行った。非常によかったと私は思います。日本国民は大歓迎ですよね。なぜかというと、戦後60年間の日本の平和憲法の下での歩みを評価してくれましたよね。それからまた、戦後60年間の日中関係については非常に評価してくれましたよね。それはその通りなので、これからまさに日中関係は新しい時代に入っていくと私は非常に希望をもっております。だけどそれは、政府間で共同声明を出すことでもってひとつの区切りをつける、そして新しい時代へ出発していくことも大事だ。本当の意味における日中関係は国民が作っていくことだから、そういう共同声明に答えて、日中両国の国民の皆さんもあらゆる分野で日中関係を歩まねばいかんと言って努力していくということが大事だと思う。
Q 今年は中日青少年交流年でもあり、胡錦涛国家主席が早稲田で行った演説は日中青少年交流年の開幕式であったわけです。村山先生がいらっしゃっる今月の下旬に、その中国側の閉会式があります。青少年交流に関する村山先生の考えをお聞かせください。
A これから育っていく、中国の将来、日本の将来を担う若い人たちがどういう風に理解しあい、どういう風に知り合うということがきわめて大事だと思います。そんな意味で青年交流が成されたことは非常に良かったと思います。それはやっぱり一回で終わるのではなく、これからある機会を捉えて、日中関係のためにも大事なことなので、やってほしいと思います。
【村山富市元首相が直筆で書かれたメッセージ】
「歴史を鑑みに日中平和友好の未来を拓く」
(聞き手:黄恂恂、カメラ:馬迪、チェック:吉田)
【プロフィール】
村山富市(むらやま とみいち)
(写真=日本内閣府ホームページより)
元日本国内閣総理大臣
立命館アジア太平洋大学孔子学院顧問
社会民主党名誉党首
日本中国友好協会名誉顧問
1923年 大分県生まれ
1944年 学徒出陣で陸軍歩兵部隊入隊。1945年8月に陸軍軍曹階級で終戦を迎えた。
1946年 明治大学専門部政治経済科卒業
1972年 社会党党員で出馬し衆議院議員に初当選。以降当選8回。
1993年9月 社会党委員長就任
1994年6月-1996年1月
日本国第81代内閣総理大臣
2000年 政界引退
2006年4月 桐花大綬章受章
【孔子学院について】
孔子学院は、中国政府が中国語学習者を支援し、世界の人々と中国の人々との相互理解と友好を促進するための教育機構です。現在世界78カ国で、現地の大学等と協力して設置されています。教材(教科書、図書、雑誌、資料、ビデオ、DVDなど)の提供や講師の派遣、中国語能力試験や中国語教育講師資格試験、奨学金支給、その他の様々な便宜・協力を中国政府から直接得ることができるようになっています。
日本では、2005年に京都に立命館孔子学院が開設されたことを皮切りに、札幌、東京、名古屋、大阪、京都、金沢、岡山、 福山、長野などに孔子学院が設立されました。村山富市元首相は、大分県にある立命館アジア太平洋大学の孔子学院の顧問を現在務めています。
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