天安門広場から南へ2キロほどのところに、昔から「天橋」と呼ばれる下町があります。天橋南大街(天橋南大通り)という通りに沿って広がる一帯で、最近は町の再開発工事も進み、道幅も広く整備されています。明の時代は天橋周辺を東西に流れる川がありました。当時は皇帝が祀りごとなどで北側の正陽門(現在の前門)から南側にある天壇へ向かうとき、必ずこの河を通ったため大きな橋が架けられました。中国では皇帝のことを天子とも言い、天子が渡る橋も天橋と呼ばれるようになりました。その後、長い歳月を経て、川も橋もなくなり、この辺りはすっかり姿を変えましたが「天橋」という名前だけが残っています。
昔、天橋は北京の伝統芸能を楽しめる場所でした。その中でも「八大怪」といった8人の芸人(雑技の趙女搦q、漫談の万人迷、ハンマー使いの緒t米三、一人漫才の韓麻子、薬缶使いの呼胡李、声帯模写の人人楽、土文字の?不怕、レスリングの沈三)が最も有名だったそうです。2002年から天橋周辺の再開発工事が始まり、ショッピングセンタ?やオーケストラのコンサートもできる天橋劇場が新しくできたほか、市民広場が広がっています。広場には、天橋を代表する四面鐘と呼ばれる鐘が新たに修復され、噴水や昔の天橋を思わせるオブジェなども次々とでき、その中には八大怪のオブジェもあります。工事が始まる前の天橋周辺は粗末な平屋ばかりでしたが、今ではビルや新しい住宅も建ち、道路もずいぶん拡張されました。ここは環境も交通の便も良く、新しい団地の周りは静かで暮しやすいと、最近引っ越してきたばかりの人が話してくれました。昔から住んでいる人たちの話によると、昔はのぞき窓が付いた「からくり箱(拉洋片)」を見せる人や、漫才をする人、骨董品を売る人などがあちこちで見られたそうですが、今ではほとんど姿を消してしまいました。
昔の面影を残す場所のひとつに雑技場があり、ここでは今でも雑技を見ることができます。雑技場は建物のつくりが洋風で、どこかノスタルジックな感じもします。中へ入ってみると、ロビーには大きな絵がかかっていて、お正月に皇帝の前で雑技を披露している人たちの姿が描かれています。雑技のチケットは100元から150元(日本円で1300円から2000円ほど)で、高いチケットはお茶やお菓子つきです。雑技は午後5時半から6時半までは団体の観光客向けのステージで、夜7時15分から8時45分までは一般客向けの演出になっています。
新しい団地や雑技場を後にして、ごちゃごちゃとした大通りに戻りました。町の再開発で以前はたくさんあった小さな食堂が無くなってしまい、食事をするところが減ってしまいましたが、道端には甘栗を売る店がたくさんあります。栗の大きさは様々ですが、500グラム9元(日本円で120円ほど)の栗が美味しそうです。このあたりは人も多く行き交いゴチャゴチャした場所で、今でも昔ながらの北京が感じられる町です。
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