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中国の西北部に、総人口が約2万人しかいない少数民族・保安族がいます。いま、その多くは甘粛省臨夏回族自治州に集まり住んでいますが、民族の源はチンギスカンの部隊の一部族に遡ることができると言われています。現在の保安族はイスラム教を信仰していますが、そのルーツは蒙古(モンゴル)族と深いつながりがあります。
昔から他の民族と隣り合って住んできた保安族には、言葉があるものの、文字はありません。最近は工業化が進み、民族の言葉を話せる若者がどんどん減ってきているようです。
そんな中、2000年に「誰もまだ手をつけていない保安族の言葉」の現地調査を実施したく、日本から臨夏の積石山地区を訪れた日本人学者がいました。現在は広島大学北京研究センターで主任を務めている佐藤暢治教授です。
当初は、誰一人知り合いもなく、心細い気持ちで調査を始めましたが、回数を重ねるうちに、様々な展開がありました。
「保安族の言葉がこのままだと消滅してしまいます。どうか辞典作りを手伝ってもらえませんか」
甘粛省で知り合った保安族出身の有力者からこう頼まれました。そして、紹介してくれたのは、イスラム名「ハキ」という名の保安族青年で、当時、大学院在学中の馬沛霆さん(漢語の名前、写真右)でした。このようにして中日のペアによる保安語・漢語辞典作りの作業が始まりました。
「何故、保安語・漢語の辞書作りに日本人がいるのか?」
素朴な疑問が浮かびました。それもそのはず。傍から見れば、不思議なコンピでもあります。果たして、辞典作りの作業は現在どこまで進んでいるのか。そして、その正確性をどのようにして確保しているのか。さらに、これまでの進捗状況と今後の目指すところは?
今週はチンギスカンの名にもかかわる、歴史のロマンが漂う西域のお話です。
ところで、余談になりますが、当日の取材が終わった後、日本語放送と同じフロアーにある北京放送モンゴル語のアナウンサーにばったり出会った佐藤さんは、さっきまで日本語で保安族の言語や風俗習慣を紹介していましたが、すぐに流暢なモンゴル語に切り替え会話しました。「標準的なウランバートルの言葉ですね」と相手から親指を立て褒められるというシーンもありました。
ちなみに、語学が達者な佐藤さんは中学生の時に北京放送のリスナーさんでした。「お陰で、北京放送の番組はどのようなところで発信されていたのか、初めてこの目で見ることができました」。そうおっしゃる佐藤さんの顔には、少年のようなときめきがありました。今回は様々なことを不思議に思いながら、親しみやすい雰囲気の中でお話が伺えました。詳しくはぜひ番組お聞きください。
【プロフィール】
佐藤暢治(さとう のぶはる)さん
1965年 広島県生まれ
1987年 大阪外国語大学卒業
1989年 大阪外国語大学外国語学科研究科修士課程修了
1994年 広島大学大学院文学研究科博士課程後期終了、博士号(文学)取得
広島大学教育学部でのお仕事を経て、
2012年4月から 広島大学北京研究センターの教授に就任
2014年4月から 広島大学北京研究センターの主任を務める
専門はモンゴル系の危機言語、保安語積石山方言にかんする調査研究
【リンク】 保安文化網 http://www.baoanzu.com
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