全日本中国留学生学友会会長を務めている李光哲さんは、中国人留学生たちを牽引して、日中友好のイベントなどを数多く開催している。そこには日本人に本当の中国の姿を知ってほしいという思いがあるそうだ。というわけで、李さんにこれからの日中友好のあり方を聞いてみた。
取材は張国清北京放送東京支局長で、取材内容は日本東方通信社の週間雑誌「コロンブス」2008年10月号に掲載されている。
張国清 北京放送東京支局長 来日する前は中国でどんな勉強をしていましたか。
李光哲さん |
張 来日したキッカケを教えてください。
李 来日したのは01年のことです。私にとって日本は経済大国であり、科学技術のレベルが高い国というイメージがありました。それに、欧米よりも日本の成長体験のほうが参考になると感じていました。キョリが近いだけでなく、生活習慣も近いですから。そこで、日本の先進的な科学技術や応用力、マネジメント力を学ぼうと思って来日したのです。
張 いつ頃から日本に対する興味を持っていましたか。
李 小学生のときから関心を持っていました。というのは、その頃に読んだ『人民日報』に日本の文化や科学技術の紹介が掲載されていたからです。それを読んだときの興奮は今でも覚えています。
張 李さんは東京工業大学の博士課程に在籍していますが、どのような研究をしているのですか。
李 材料工学の研究をしているのですが、なかでもゼオライト(沸石)の研究開発に取り組んでいます。現在は新しいタイプのゼオライトの研究をすすめているのですが、まだ実用レベルには達していません。それが完成すれば、水のなかに入れるだけで、不純物を吸着させて、水をキレイにするような効果を発揮することができます。こうした環境問題に適応した研究はこれからの時代ニーズにマッチしたものなので、何とか成し遂げたいと思っています。
張 大学のほかにどのような社会活動をしていますか。
李 全日本中国留学生学友会会長としての活動を行っています。活動の内容は大きく分けて3つです。ひとつ目は中国の留学生がうまく勉強できるように支援を行うこと。ふたつ目は民間交流を通して日中関係の友好に努めること。3つ目は日中両国の発展に貢献することです。私たち留学生にとって、日本は第2のふるさとですから、日中両国の発展に貢献することが重要なのです。
張 民間交流ではどのようなことを行っていますか。
李 たとえば、各大学の学友会で春節やお盆のときなどに、日本の要人や先生などを招いて、中国の文化を紹介しています。また、スポーツの交流活動は毎月のように開催しています。サッカーやバスケットボール、バトミントンなどのスポーツイベントなどを行っています。また、昨年10月には1000名以上の文化交流イベントを開催しました。
そのほか、日中友好協会や日中友好に関するNPOなどのイベントにも積極的に参加するようにしています。また、ボランティア活動にも積極的に参加しています。ゴミ拾いや植樹などの活動です。学園祭のときには露店を出して、収益は日本赤十字の募金などに充てました。
張 そういった活動を行ううえで、何か課題はありますか。
李 イベントを開催したときに、日本人の若者があまり参加してくれないことです。今のところ日本人参加者の多くは50代以上が多く、20代、30代の参加者が中国人に比べて少なくなっています。もっと若い日本人にもこういった活動に参加してほしいと感じています。
張 ところで、現在、日本にはどのくらいの中国人留学生が在籍しているのですか。
李 在籍している中国人留学生は7万5000人です。10年前は文系が多かったのですが、今は理工系が増えてきました。大学院生は全体の1、2割といったところでしょうか。博士課程を卒業した人たちも6000人以上いるはずです。そのうち帰国したのは3000人程度ですから、日本に残る人と中国に帰る人は半々といった感じになっています。
張 日本に残った人たちはどのような仕事に就いているのですか。
李 会社勤めしている人もいれば、大学の先生をしている人もいます。もちろん、起業する人もいますね。それぞれの分野で日本の社会発展に貢献していると思います。
張 最近の日中関係について、どのようにお感じになっていますか。
李 今の日中関係については、2、3年前に比べると良くなったと感じています。ですが、民間理解と協力がまだまだ足りないように思います。というのは、日本と中国は積極的な協力体制を築いて、アジアのリーダーとしての役割をはたさなければならないからです。
そのためにも、私は多くの日本人に中国のことを知ってほしいと思っています。80年代初頭、中国人は日本に対してかなり好印象を抱いていました。が、近年は靖国問題などで関係が悪化してしまいました。そのため、どうしても多くの日本人は中国に対してこわいというイメージを持っています。が、中国に来てくれたら、そういったイメージは吹っ飛ぶはずです。それに、四川大地震などを通して、日本に対して好印象を抱く人はイッ気に増えました。現に、北京オリンピックの開会式で日本の選手たちが入ってきたときに、多くの中国人が拍手を送っていました。
にもかかわらず、一部のメディアは中国には反日感情が渦巻いているといった報道を繰り返しています。なかにはそういった人もいるかもしれませんが、それはあくまで一部だけの話です。たがいの反中、反日感情ばかりを捉えていては前進することはできません。そのためにも、私たちのような留学生が日本に正しい情報を伝え、友好関係を構築していかなければならないのです。
張 李さんは卒業したら中国に戻る予定ですか。
李 そうですね。中国に帰って研究をつづけたいと思っています。日本で勉強したことを中国に持ち帰って、中国の科学技術の発展に貢献したいと考えています。そして、中国に帰ってからも日中友好に努めたいと思っています。
張 これからも日中友好と研究に励んでください。本日はどうもありがとうございました。
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