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自然災害、中日はどう向き合う?
   2008-07-15 17:15:19    cri

第六回中日インターネット対話議事録

 

自然災害、中日はどう向き合う?

 

■はじめに

 中国と日本の市民同士で相互理解のかけはしを作ることを目指して、去年からスタートした<中日インターネット対話>。今回で、第六回を迎えました。

さて、中日関係は58日の胡錦涛国家主席の日本公式訪問から、青少年交流、海上自衛隊艦艇の中国訪問、東中国海ガス田問題での合意達成など、一連の注目される動きがありました。こんな中、時を同じくして、大地震が両国を襲いました。

 

512に起きた四川大地震、そして614に起きた岩手、宮城内陸地震。この二つの地震で犠牲になった方たちのお悔やみを申し上げます。そして、今も現地で、不便な生活を強いられている皆さんに心からお見舞い申し上げます。

四川大地震は、7日までに、すでに69,196人の尊い命を奪い、18,381人が今もなお行方不明のままです。おびただしい損失を生み出した今回の地震で、たとえば、海外緊急援助隊の受け入れ、情報のタイムリーな開示などと言った中国政府の対応には、これまで見られなかった動きがあり、世界から注目を浴びました。

 

大地震が中国社会の様々な面に影響を与え、その影響はいま、そして、今後も長い間にわたって継続していくのではないかと思います。今日は、今回の震災でクローズアップされた防災協力を取り上げます。中日両国の専門家を迎えて、「自然災害、中日両国はどう立ち向かう」をテーマにネット討論会を開きます。

 

古賀 まずは震災でなくなられた方のご冥福と、震災でけがをされた方、被災された方が一日でも早く日常の生活に戻れるよう祈っております。私自身は四川省の成都での緊急支援物資の引渡し、救援チーム・医療チームの引継ぎに立ち会いました。援助チームと行動をともにしたわけではありませんが、私も都江堰に足を運び、現地の悲惨な災害の様子を目にしました。今回の日本の援助隊は規模が小さかったかもしれないが、少しでも中国の方に「救援に役立った」と評価していただけるならば、日本人としてこれ以上の喜びはありません。

 

 今日の成都は、午前は晴れでしたが、午後は曇り。おとといから梅雨明けしたようで、これから、四川盆地は蒸し暑い季節に入ります。被災地の視察は今回が三回目ですが、前回と比べて、今回は、とりわけ二つの点に深い印象を持ちました。一つは、仮設住宅がどんどん建ち、そのパワーと勢いがすごかったこと。もう一つは、被災者のみなさんが非常に明るくて、元気に頑張っている様子でした。あちこちで、倒壊した住宅を自分で建て直している人の姿を見て、頼もしく思っています。

 

姜 大地震の後、私は震源地のブン川、映秀、綿陽、都江堰、北川などを取材しました。被災地の被害のひどさに驚きましたが、一方、日本からの緊急援助隊を含む内外の緊急援助隊の精力的な活動ぶりに大きな感動を覚えました。のちほど、また、詳しくご報告いたします。

 

■胡錦涛主席、日本国際緊急援助隊隊員に御礼を述べる

 今朝、洞爺湖G8サミットで北海道入りした胡錦涛国家主席は、札幌で四川大地震の救援に参加した国際緊急援助隊の救助チームと医療チームの隊員の代表16人と会見し、中国政府と人民を代表して、感謝の言葉を述べましたが、このニュース(関連リンク>>)はご覧になりましたか。

 

古賀 インターネットで報道を見ました。私は国のトップが来日中に援助隊の隊員一人一人に直接感謝の言葉を伝えられるという話を、私は今まで聴いたことがありません。その点からも中国国民の感謝の気持ちの表れとしてお手伝いした日本人職員やJICA職員の一人として誇り思うし、胡主席の言葉を深く心に留めたいと思います。

 

 防災と日本の緊急支援隊に関する胡主席感謝の言葉は私もネットで見ましたが、胡主席は中国の国民を代表して日本の国民に感謝の意を表したことは非常に重要なことだと思いました。中国は素直に日本の協力に感謝を表したと思います。

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 議題一 四川大地震の対応に見る中国の変化

 

王 番組の冒頭でもお話しましたが、国際緊急援助隊の受け入れは中国にとっては、今回が初めてのことです。今から、32年前、中国の唐山でマグニチュード7.6の大地震が起きましたが、当時の中国は海外からの援助を一切、断りました。被災情報についても、メディアでの報道がたいへん少なく、死傷者の人数や被災状況など、長い間、国民に知らされないままでした。

さて、本日のネット対話の最初の議題は、四川大地震の対応に現れた中国の変化をめぐり、皆さんにお話を伺いたいです。

 

     顧さん:SARS以降、中国は危機管理システムの整備に尽力

 

 四川大地震の対応と唐山の時と比べてみますと、まさにこの32年の中国の変化があられたものでした。32年前の中国では、まだ文革も終わっておらず、社会がまだ閉鎖的でした。また、当時の中国には、ほかの国に頼らずに自力で努力する、自分のことは自分で解決するという考え方がありました。防災システムに関しても、「人間は必ず自然に勝てる」という考えがあり、たとえば、地震断層の起きたところを避けて街づくりするという意識がまだありませんでした。そして、情報面でも、絶対に自分の情報を外に出さなかったやり方でした。

一方、今回の四川大地震では180度の変化が起きました。たとえば、救援体制の変化や、マス・メディアが24時間連続で被災状況を伝えていたことなどです。

 中国の応急システムの構築や、それに関連した法整備においても、ここ数年、大きな成果があり、顧さんもこうした取り組みの関係者の一人だと聞いておりますが、その最近の動きをご紹介願いします。

 私はSARS以来、応急システム、つまり、日本でいう「危機管理システム」の構築に関与してきました。SARS終息後のこの5年は、中国はおそらく、世界で最も危機管理システムの整備に力を入れた国だと思います。

 

まず、法整備から見ますと、昨年830日に『中華人民共和国突発事件応急対応法』ができ、同年111日に施行されました。これは、日本の危機管理法にあたるものです。法のほかに、2003年後半から2004年前半にかけて国を挙げて危機管理マニュアルと計画を作成しました。中央政府、地方政府、学校、工場、コミュニティさまざまなレベルで危機管理のマニュアルを作成しました。そのほかに、国の体制から見て、国務院の中に応急弁工室(危機管理弁工室)を設立し、それをきっかけに各省庁や、地方弁公室にも設立され、いざというときに備えるシステムができました。

 

■古賀さん:全国一丸となって危機を乗り越える

 

王 古賀所長、今回の中国政府の地震対応で印象に残ったことは?

古賀 今回の政府の地震の対応を見たときに何点かあるのですが、報道を聞いた限りでは、お医者さんを地震発生の数時間後には現地に向かわせたそうで、今回の中国は救済の対応スピードがきわめて速かった・・・これが一点目。二点目は、マスコミへ情報を公開し、日本のマスコミの方も取材でいたのですが、情報公開することが中国の人が一丸となって危機を乗り切る機運を作りました。その結果、各省や自治区から多くのボランティア、救援物資が次々に入ってくることに繋がったと思います。

 日本と比べて、やり方が違うなと感じたことは?

古賀 医療チームが来たときの話ですが、私も現地にいて、成都で驚いたのは、多くの患者が被災地から迅速に運ばれてきたことです。被災した人を輸送する能力に驚きました。日本では見られないものだと思います。北川県や青川というところから綿陽、綿竹へだけでなく成都へ、さらにはそこから数千キロ離れたところまでも飛行機で患者を次々と輸送する、そのすばやさに大変驚かされた。中国側が3日間以内に重症の患者をすべて機関病院に輸送し、さらに1週間で飛行機や列車で省外の病院へと転送した、このダイナミックな行動は日本には到底できないと思いました。

 

     姜平記者:オープンな態度でメディアに対応

       ボランティアたちの活躍と地元市民の感謝

 

 さて、姜平さんは現地で約3週間にわたり、取材を続けていましたが、印象に残ったことは何ですか?

 メディアがしっかりと果たすべき役割を果たした点です。被災地で起きたことを外部に伝え、何が必要なのかを被災者たちのニーズを反映して、そして、その報道を受けて、本当に物資が調達してくれたことに、現地の人がありがたく思っていたようです。そして、普通の取材なら冷静で、客観的な立場が必要ですが、今回だけは例外が許されています。深刻な被災状況を見て、涙しながらリポートした記者などに多くの人が共感を抱いて見ました。

また、最初は取材のために行った記者は、現場で人手が足りないことが分かると、自らボランティアになって負傷者を運んだりする手伝いをした人もいました。

もう一つは、政府や関連部門が、取材に対して、たいへんオープンで、協力的でいたことです。記者が何かを知りたい場合は、直接政府に電話して問い合わせれば、すぐに情報を教えてくれました。これは今までの「上司に許可をもらってから返事する」という姿勢とは大きく違うなと思いました。海外のメディアの皆さんも、この点、四川で出会った日本のテレビの記者も同感だとおっしゃっていました。

 大地震が起きた後、全国から百万人以上のボランティアが現地に赴き、今年は、「ボランティア元年」だとも言われています。この点、姜平さんは現地で感じたことも多いかと思いますが…

 そうですね、公表された数は登録している組織的なボランティアだけなので、個人で活動していた人も数多くいたことを考えると、正確な数がなかなか把握できないほど、もっと大勢いたのではと思います。

また、こうした四方八方からの支援に対して、現地の市民たちの受け止め方にも感動しました。彼らはできる範囲のことで協力しました。たとえば、都江堰のタクシーのドライバーたちのこと。都江堰ではずいぶん建物が崩壊し、多くのボランティアさんたちがそこに向かいました。だから、タクシーの運転手さんたちはボランティアと記者に対して、運賃を取らないことで合意しました。

私が都江堰でタクシーに乗った時、最初は、自分が記者だと言わないで、雑談をしました。「都江堰が観光地ですが、これからは商売が難しくなるね」だとか、運転手がおしゃべりしていました。最後になって、同乗者はうっかり、「この人は記者です」とばらしてしまい、降りた時、運転手さんはどうしてもお金を受け取ってくれなかったことがありました。

 

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議題二 どう受け止めるか 国際援助

 

 今回、第一陣に中国入りしたのは、日本からの緊急援助隊でした。両国関係の歴史においても記念すべき一ページだとも評されています。国際緊急援助の意義、そして、今回の派遣と受け入れは、両国関係や国民感情への影響、そこから得られる示唆などをめぐり、皆さんのお話を聞かせてください。

 

     【派遣の背景】

古賀さん:中日関係を抜きには語れない

顧さん:インド洋津波の救助と中日防災協力の提案

 

古賀 (日本の緊急援助隊が最初に四川入りしたチームになったのは)まず、日中関係抜きには語れないと思います。安倍総理の訪中から、温家宝首相の訪日、続く福田総理の訪中など、そして今回の地震自体が胡錦涛主席の訪日直後に起きたことが大きな要素として、この災害を救わなくて、日中関係は語れないと日本政府が判断したのではないか、と私は想像しております。

  古賀所長が先ほどおっしゃったように、これは日中両方の友好なムードだと私も思いますが、日本の阪神淡路大震災の時にも世界各国が援助隊を派遣しました。日本は地震などの自然災害が多くあり、その被害をよく体験していることもあり、積極的に国際救援隊を派遣し、これを日本の国際貢献と人道的援助の一環として重視していると私は認識しております。

これが第一点。もう一つ重要なことは、日本のテレビは四川大地震の被災の様子をたくさん放送し、日本国内では、救援隊をいち早く派遣しようと国民が思っていたと思います。

  阪神大震災の後、日本の緊急救援隊は世界での活躍が目立つようになりましたが、たとえばトルコやインド洋の津波の時など、いろんな国に派遣しています。中国にも国家緊急救援隊があり、私の地震局にいる友人も隊員です。その彼から聞いた話では、インド洋津波のときは、中国の救援隊と日本の救援隊が隣同士でした。その時、双方の救援隊は、協力しあって国際救援活動できないかという意向があり、また、中国の緊急救援のレベルアップを図るため、研修に関する協力プロジェクトを立ち上げようという提案もあると聞いています。

 インド洋津波のとき、中国の救援隊と日本の救援隊が隣同士だったのですね。このことは、私は初めて聞きました。

 そうですね。今後は中国と日本の救援隊が力を合わせて、何か起きたとき、各々の国に限らず、東南アジアなどで近隣地域でも一緒に救助活動を展開できればよいのでは、という考えもあっていいかと思います。

 なるほど、中国と日本の両国間だけに限らず、全世界に活動の範囲を広げていくという発想ですね。すばらしいことです。

古賀 先ほどの顧先生の話に出てきた研修のプロジェクトですが、すでに共同で実施しているものではなく、これから始める準備をしているところです。

また、先ほど顧先生が補足してくれたように、日本は阪神大震災の時に各国から多くの援助を受けました。中国からも多額の物資援助を受け、それに対するお返しをするという基本的な考え方があります。

    実は、日本の緊急援助は、1979年のカンボジア難民に対する医療支援に始まり、1982年の医療チーム派遣が今の緊急援助隊の前身を成しています。今のように発展したのは1987年です。私どもはこの救援緊急援助隊チームを、相手国の要請があれば24時間以内に派遣、医療チームについては48時以内に派遣できる体制になっています。ただし、派遣は要請があって、双方の合意の下でなければなりません。だから日本が一方的に派遣したわけではありません。

 皆さんのお話と関連して、今回、大地震が起きてから、日本からお見舞いのお便りやメールがたくさん寄せられてきました。その中で、「日本人は地震の被害を良く知っている。四川大地震は、決して遠いところで起きた他人事ではない」、という内容の書き込みが多くありました。地震多発国だけあって、それがほかの国で震災が起きた時に、他人事として見られない、そういう気持ちがまずあるかと思います。だからこそ、さまざまな体制を整備して、いざという事態の時にすぐに出動できるように備えています。こうした意識があることも、緊急援助隊がすぐ派遣できることの背景の一つではないかと思います。援助を受けた国の人間として、これをありがたく受け止めています。

 

■古賀さん:相互理解は一方通行ではない

      日本の国際緊急援助隊、「本当の中国を理解して帰った」

 

  さて、緊急援助隊の後方支援のため、四川省入りした古賀所長は、現地で、感じた皆さんの反応はどうでしたか。

古賀 私も成都にいたときに感じたのですが、私の事務所の人間が市内を移動しているとき、やはり、日本の援助関係者なら料金はいらないという申し出を受けたり、ホテルにいろんなお願いをしても、「料金は要りませんから」と申し出を受けたり、市民の方々の反応を身近に感じました。

これは、日中双方の救援隊の活動が逐一報道され、しかもこれは人道的立場に立った純粋な気持ちからの援助活動だったという報道を受けた上での、市民の私たちに対する感情だったと思います。これを私はうれしく思います。

ただ忘れてほしくないのは、援助隊が被災地で被災者の気持ちを受け取っているということ。これは直接に中国の人々が日本の援助隊に関するイメージを変えるだけでなく、日本の援助隊60名やその後に来た医療チームの方が、中国人の本当の姿を十分に理解した上で帰国していることを忘れないでほしいです。相互理解は一方通行ではないということをぜひ理解していただきたいと思います。

 

■顧さん:国際緊急援助の必要性と中国の課題

 

 顧先生にとって、印象に残ったことは?

 一つは、私は中国の被災者たちの反応に感動しました。もう一つ、冒頭にもありましたが、日本の緊急救援隊が中国の被災者に対して黙祷をしたことに、私は非常に感動しました。日本人は、命に対して、死者に対しての尊敬を十分に表したものだと私は受け止めております。

  古賀所長のご指摘の通り、緊急救援隊の派遣、緊急救援隊のみなさんの努力によって、中国の国民はその活躍ぶりを目で見て、日本の救援隊とともに命と向き合い、双方は良い交流ができたように思います。

 生と死と向き合う時こそ、人間同士ははだかの付き合いになるかと思います。

顧 今回、中国が海外の緊急救援隊を受け入れたということは、中国の災害の歴史から見れば、非常に大きな変化があったと思います。やはり中国は自分が大きな地球社会の一メンバーとして、自分の力だけでは足りない、ほかのメンバーの助けが必要だという考えを持ちつつあるようにあると思います。唐山大地震の時には中国はまだ、人間は自然に打ち勝つ能力を持っている、問題は自力で何でも解決できるという認識でしたが、現代社会では助け合いが必要で、国際協力は重要なことだと思います。

   先ほど古賀所長がおっしゃった人道主義の立場に立った救援もなるほどだと思いましたが、ただ中国はその方面ではまだ不足していると思います。中国には緊急救援隊がありますが、まだメンバーは数百人に過ぎません。その人たちで被災地の人たちをすべて助け出すのは無理だと思います。それを補う形で日本やほかの国の救援隊も受け入れる形になったと思います。

さらに、日本の救援隊の黙祷に中国の国民が非常に感動したというほかには、先進的な技術、たとえば超音波の生命探知機を日本が持っていることなどは中国の人を驚かせ、あと古賀さんが紹介したように、日本は1979年から救援活動を始め、その時から今まで蓄積した経験が生かせたというところもあると思います。

 地震が起きた時の国際援助は、救助活動自体を超えた影響力があり、今後の相互交流に対しても、様々な示唆をもたらしてくれているものだということですね。

 そうですね。たとえば中国の緊急救援隊が今後どのように能力を向上させるとか、国のレベルに限らず地方レベルでどのように緊急救援隊を育成するとか、技術・機械装備の開発をどのように進めるか、災害に対する法律整備など、さまざまな課題がまだ残っていると思います。

 

■姜平記者:日本は緊急救援で貴重な経験が多い!

■古賀さん:日本の経験は学習する過程で出来上がったもの

 日本の経験、中国での活用に期待

 

王 さて、地震が起きた後、日本の緊急援助隊の取材をしていた姜平記者は、国民哀悼の日にも現地にいましたね。

 

 その時、日本の援助隊が犠牲者の遺体を大切にしていることは、中国の国民を感動させました。また先ほど顧先生がおっしゃったように先進的な技術や設備を持っている以外に、意識も先進的だったことに感心しました。

たとえば、日本の隊員たちは、ガスコンロを持っていることが、当時話題になっていました。中国の援助隊はご飯を冷たいまま食べていましたが、日本の援助隊は火を通したものを食べている、それが人を元気にする。また、ヘルメットのひさしが透明になっていることも話題でした。ひさしが透明になっていると、視界がよく、それと同時にほこりを防ぐこともできる。日本の救援隊は、そこまで気を配っているということがすばらしいと思いました。

援助隊に関して、中国には国家レベルの援助隊もありますが、今回現地に集まった多くは人民解放軍、消防士、警察。その中で、緊急救援のプロと言えるのが消防士ですが、しかし、彼らの日頃の専門は火事対策です。

地震災害の救援に関して、全国各地から集まった救援隊は技術でも設備でもバラバラで統一した目安がないことが問題視されていました。これらの問題の解決に向けて、あとで、顧先生のお考えをぜひ聞かせていただきたいと思います。

 

 細かい観察をしていましたね。確かに、疲れた時は、火を通したもの食べることが大事なんですよね。

 私も冷たい水よりはお湯や、汁の入ったもの方が良いと実感しました(笑)。

古賀 ただ、日本の救助隊が持っていったカップ・ラーメンに現地の人がお湯を入れてくれていたことも忘れてはなりませんね。

 お互いに相手の思いやりを持って付き合っていたということですね。

 

古賀 先ほどの話を聞いていると日本も災害に対応するシステムが最初から出来ていたような話になっていますが、実はそうではありません

   私が1975年に大学を卒業して、JICAに勤めていたときには、1980年代に、仙台で大きな地震がありました。その前に新潟で地震があって、そのあとに日本の建築基準など色々な基準を見直しました。大きな転機となったのが1978年の宮城沖地震。それでも色々なところで地震が起きて、色んなところで行政のあり方を見直して来たのです。

    日本では、心のケアが一番問題になったのは、阪神淡路大地震のときです。被災地で長く暮らす人たちがたくさん出て、そこで専門的にケアすることが行政の立場からでも重視されるようになった。

    いま、形は出来ているものの、ヘルメットの話もそうですが、最初から出来上がったわけではなく、学習する過程で出来上がったということだと思います。ただし、中国の方にはいい教材が私たちのところにありますので、日本のところからどんどん吸収してほしい、自分たちで一から模索する必要はないと思います。われわれを活用してほしいと思います。

 

■姜平記者:ボランティアたちの心のケアは

■顧さん:「心のケア」が浮上したには、阪神大震災の日本の経験が生かされている

 

 また、心理カウンセラーのボランティアについてですが、カウンセラー自身、自分の心にたまったプレッシャーやストレスをどう解消したらいいのかが疑問でした。

   唐山大地震の時、心のケアは、まだ話題にもなっていませんでした。その後の災害でカウンセラーが派遣されるようになりましたが、それでも、規模は今回ほどのものではありません。今回は、数万人の規模で、いつもその人たちの中にいて、その話から逃れることができません。こういった面での日本の経験を知りたいなと思います。

 

 心のケアに関して少し触れさせてください。中国の災害の歴史から見れば、中国の政府は非常に心のケアを大事にしていると思います。たとえば昔の唐山地震や98年の長江大洪水の時には心のケアがほとんど話題になりませんでしたが、今回それを大事にしたのは、阪神大地震の時に日本が心のケアを大事にしたという経験あると思います。

   もうひとつ、今回膨大な被災者が出たことに対して、世界のいろんなところからアイディアをもらっていると思います。

たとえば、阪神大震災や台湾の地震でも、心のケアが大事だと主張した専門家やNGOの方がいました。私は北京大学、人民大学、北京師範大学、さらにはアメリカの心理学者たちが力を合わせて中国の被災者の心のケアをどうするかについていろいろな集会やセミナーをやったことがあると思います。

 

■顧さん:消防士を土台にした緊急救援隊が育成中

 

 なるほど、いまのお二方のお話を伺って、感心したのは、今の日本にはよい教材があり、その失敗や教訓などがすでに知識が蓄積されているので、中国はそれを学べばよい。そして今回の大地震で、世界の各地から様々なアイディアをいただいて、その中で色んなことを学んで、世界中の知恵が生かされている救援とも言える、また、災害の救援はそのような形で、国境を越えて展開しなければならないものでもあるということではないでしょうか。

   さて、さきほど、姜平記者の話に出てきた消防士についてですが、昔私は中国で消防士と聞くと火事が専門だというイメージですが、現在、消防士が中国でどのような位置づけなのか、顧さんから若干ご紹介をお願いします。

 

 中国の危機管理体制を作る中で、やっぱり中国の緊急救援隊の育成という課題もあります。全国で作るのは大変ですが、一つの考えは中国の消防士に着眼することです。中国の消防士の多くは現役の兵士です。ここ23年、その消防士は火事に限らず、緊急災害が起きたときにも活躍するという新たな任務が与えられています。去年3月、国務院の応急弁公室で会議があり、そこで緊急救援隊の編成も論議されていました。やはり、国の資源を大切にするということで、消防士を活用するという提案がありました。

 すでにあるシステムを生かすという考えですね。

 

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 議題三 自然災害 効果的な協力のあり方は?

 

 今回の大地震を通して、災害には国境がなく、世界各地で生まれた知恵を人類共通の知恵として生かして、被害を最小限度におさえるようにしなければならない、これが中国社会の共通認識になったと言えるではないかと思います。

さて、ここから、本日、三つ目の議題に入りたいと思っています。つまり、効果的な協力体制をどう作ったらよいのか・・・<自然災害 中日協力のあり方>をめぐり、皆さんの提案をいただければと思います。

 

顧先生は、地震がおきてから、インターネットのメーリングリストなどを使って、四川の被災状況を伝えたり、また、中国側が必要な日本の再建に関する資料を集めて、それを翻訳し、政策提言してきましたが、こうした一連の行動に、どのような思いを寄せていましたか。

 

■顧さんの実践:メーリングリストで日本の知恵を問い寄せる

 

 実は、地震が発生した後で、時事通信にいる私の友人が時事通信の防災ウェブの担当で、日中の防災情報を伝える仕事をしています。彼から、災害後の再建に当たって、メーリングリストで情報共有を行ったらどうかという提案を受けました。そこですぐに「中国四川大地震復興研究会」と題したメーリングリストを立ち上げました。いま、日本と中国の専門家66名が参加しています。

メンバーには日本の気象庁の方や、内閣府防災担当の方、日本の国際救助法研究所、東京大学の地震研究所、神戸大学、神戸市役所などの方々が参加しております。そのメーリングリストでわれわれは迅速に情報を交換することが可能となっています。

 

518、清華大学は、中国の住宅都市農村建設部(日本の旧・建設庁に相当)から、アバ・チベット族チャン族自治州という山間地区の再建を委託されました。全体の復興計画を作成するとき、真っ先に、問題となったのは、テントと仮設住宅を作る場合、分散して立てるのがいいか、集中して立てるのがよいかということでした。それを議論する時、世界のほかのところはどうしているのか、日本の阪神淡路大地震ではどうしたのか、という問い合わせをしたところ、日本の政府や神戸の大学からすぐに返事が入り、色々な情報を交換しました。また、被災地のお年寄りの世話をどうすればいいのかという問題などでも、中国政府から問い合わせが入ったので、それを日本側に尋ね、答えをいただいたりしています。

 

 たとえば、その後、具体的な行動などにも結びついていますか?

 そうですね。国の体制の違いはあるものの、日本の経験に中国は学べることが多々あると思います。具体的には、今月の1日と2日に開催した日中の専門家を招いた復興に関するセミナーも一つの表れだと思います(関連ニュース>>)。

   日中の専門家がまず意見交換を行うことによって、中国側のニーズが把握され、それに日本側が良い対応策を出すというようになると思います。実際、セミナーを通じた交流の中で色々なアイディアが出てきました。

古賀所長もこの点についてお話が出来ると思います。

 

■古賀さん:JICA3本柱で中国で援助を展開

古賀 セミナーも含め、われわれJICAという援助機関は大きく分けて、3つのことを中国で協力をしています。

一つは、医療関係のプロジェクト。ワクチン、感染症の予防、内陸部貧困地域の医療従事者の育成など、これがいますでに行われているプロジェクトです。もう一つ、今年ないし来年にかけて準備を進めているプロジェクトがあります。その内容を中国側と協議しながら、四川向けのプロジェクトにするなど検討しているところです。三つ目は、今回のセミナー含め、専門家が現地を見てきた後で、その結果を今後の新しい事業に結び付けていこうとしているところです。

今回のセミナーで神戸の専門家などからは、全面的に協力をしていきたいというお言葉をいただいております。これからはメンタルヘルスに関する協力が出来ないかJICAで検討しているところです。

 

総じて言えば、支援、復旧、復興支援は、まったく新しい事業として、中国側に対して提供することもありますが、中国国内で実施するプロジェクトもあるので、活動として組み入れるものはないかと考えています。たとえば、日本では地震防災工学で日本で研修をしており、全世界から専門の人を集めてやっていますが、これを契機に、中国の人の受け入れ人数を増やして、中国の人だけの特別コースを開催するなどを検討しています。

また、今回の地震は、短期的には、復興も重要ですが、自然災害はこれからどこで起こるか分からないので、同じような災害のためにちゃんと準備をして整える体制を、中国の人に作ってもらう・・・それのお手伝いができればと思っています。

 

■顧さん:地方自治体レベルの協力に期待

    旧山古志村村民、四川被災地に義捐金

 実はJICAJBIC(国際協力銀行)は今まで四川でいろいろなプロジェクトがありました。これからのプロジェクトにも期待しております。それから、神戸市と兵庫県、長岡市から、「手伝えることがあればやりたい」という積極的な申し出をいただいております。四川大地震の再建に関して、日本各界から、非常に高い関心を寄せていること、意欲的に協力したいという気持ちを実感しています。

 

 中越地震で大きな被災を蒙った長岡市の森民夫市長に、この間、電話でお話をお聞きしました。森市長は先週、四川を視察したばかりです。中越地震のとき、全村避難していたほど、大きな被害を受けた山古志村は、現在、長岡市に編入されていますが、その旧山古志村の村民から義援金を含めて、長岡市からの義捐金を四川の被災地の村落に寄付したという話を聞きました。森市長は、こういった、被災地同士が互いに顔が見える形での交流は、これからも継続して行いたい、と仰っていました。とても良いことだと思います。

 

顧 森市長が義援金を預かったことを私はまず日本の新聞で見ましたが、その後、実際に森市長からもこのお話を伺って、本当に涙が出るほど感動しました。旧山古志村は高齢者が多い村で、自分の生活さえも精一杯な中、、一生懸命義援金を集めてくれました。今回、皆さんの視察団の同行で、私も一緒に行動しましたが、山古志村の皆さんからの義捐金を大切に使いたいという思いから、私は寄付先について、四川省と相談しました。結果的に、少数民族のチャン族の村落、蘿卜寨(ロブサイ)という、2000年の歴史がある村に寄付することにしました。

ロブ寨では1000人近くの住民が、標高2000メートルの山の上にあり、地震で村が全壊してしまいました。いただいた義援金で何か出来たらいいなと思います。また、復興した後、来年も再来年も、村人同士で交流ができればいいなと私も思っています。

<関連リンク:森民夫市長の四川現地視察報告 http://www.morinet.info/tamio/

王 被災地の村落にとっては、復興した山古志村の様子は何よりの励ましになりますし、同じく地震の被災者ということで、皆さんからの励ましの言葉は、現地の村民にとって、重みが違うのではないかと思います。

 

■提案:市民レベルで何ができる

 

古賀さん:市民一人一人の防災意識と努力の向上を

顧さん:中日の市民交流

姜平記者:防災シミュレーション施設、日ごろの防災訓練の強化

 

 残り時間が少なくなりました。日中の今後の協力に関して、一言ずつアドバイスをお願いします。

古賀 行政からも色々なことをやっていますが、市民一人ひとりがどういうことをやるのか、準備してくるのかに私は関心があります。現在私は北京に住んでおりますが、常に1ヵ月分の避難食を準備しており、災害があったときに家族がどこに逃げるのかも打ち合わせしてあります。こういう準備をする意識を小さいときから身に着けておくことが重要なのではないでしょうか。

 市民の交流が大事だと思います。災害に関して、命の大切さに関しては互いに通じるものがあると思います。ぜひ3ヶ月か、半年、または1年後には、四川の被災者が神戸へ、神戸の人が四川へとお互いに励ましあうことが出来たらいいのではないでしょうか。

 私は今回四川でマグニチュード6.3の余震を体験しました。その時に思ったことですが、日ごろの防災訓練がどれだけ大事なのか。たとえば、地震などの自然災害をシミュレーションで体験できる施設を作り、防災教育を強化することも必要ではないかと思います。

 皆さんはそれぞれ防災意識の向上、被災地同士の市民交流、日頃の防災訓練などの視点から有意義な提言をしてくださいました。このほか、まだ議論し足りない点も数多くあり、このテーマをめぐり、また改めて交流を深める必要を感じております。本日はありがとうございました。

整理:王小燕 

協力:黄恂恂

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