【観察眼】高齢者の幸せを目指し 中日が今後できること
あなたが中国に来たら、公園やコミュニティー(地域住民の共同体)のどこか一角で、公共のフィットネス器具を使って体を鍛えたり、リズミカルな音楽に合わせて「広場舞」と呼ばれる集団ダンスを踊ったり、あるいは合唱や楽器の演奏、将棋を楽しむ高齢者の姿をよく見かけるはずだ。
中国の高齢者の楽しみはそれ以外にも多くある。各地で開設されている高齢者向けの「老年大学」では、自分の好みや必要に応じて書道、ダンス、合唱、スマートフォンの使い方などについての授業を受けることができる。オンラインまたは直接対面形式の授業で新しい知識を学び、新しい友人を作り、学生時代から何十年も経ってから授業やクラスメートとの付き合いを改めて楽しむ機会にもなる。
スマホを使うことに関していえば、中国の高齢者の情熱やテクニックは若者に少しも負けていない。スマホを使ってチャットやショッピングを楽しみ、スマホで撮影した写真や動画を編集してソーシャルメディアに投稿したりする高齢者が増えている。その背後には、使い方を教えてくれる家族や政府、社会による支えがある。中国各地では近年、高齢者もデジタル時代の利便性を享受できるようにと、講座やボランティア活動などによって、高齢者向けにスマホでの受診手続きや電子決済などの操作方法の指導が行われている。
ほかにも、高齢者の生活の質と安心安全感を向上させるための多くの措置が実施されている。中国東部の江蘇省では手すり、滑り止め床タイル、ワンタッチコールシステムの設置など、高齢者にやさしい居住環境づくりのための改修が進められている。南東部の浙江省では、ますます多くの高齢者がコミュニティーに設けられた「老人食堂」で食事をするようになった。なぜなら、「老人食堂」の食事は栄養がよくバラエティーに富んでいるだけでなく、料金が手頃で、さらには食材の購入や調理といった高齢者にとって負担になる場合がある作業も省けるからだ。さらに、南部の広東省広州市の老人ホームでは、介護ロボットが配膳や清掃、会話サービスなどを提供している。介護ロボットは介護要員の負担を減らし、心と体のケアを行うことで高齢者のことを「気遣う」存在になり、よい「仲間」にもなっている。
近年では「シルバー観光列車」に乗って旅をすることが中国の高齢者の間の新たな流行だ。これらの列車は設備が充実していてサービスも良い。高齢者の特徴に合わせたさまざまな観光コースが設定されており、文化イベントにも参加できる。中国政府は、2027年までにシルバー観光列車専用車両を計160編成投入し、運行本数を年間2500本以上にする計画だ。専用車両は高齢者の特徴に基づいて照明、手すり、座席、トイレなどを改善し、囲碁や将棋、トランプなどや歌唱、映画鑑賞、読書などを楽しめるサービスを用意し、医療スタッフと救急薬品なども配置するという。
中国の今年の政府活動報告では、高齢化に積極的に対応し、シルバー経済を大いに発展させ、コミュニティーによる支援を受けて在宅養老を推進し、農村での養老サービスの発展をも推進するといった目標が打ち出された。また、このほど開催された全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)の年次総会では、全人代代表と全国政協委員から「高齢者の子女の付き添い休暇の追加」や「養老サービスの人材育成の強化」「高齢者にやさしい都市環境の整備」など多くの提案が出された。
政府活動報告と全人代代表、全国政協委員からの提案で言及されたように、中国は高齢化対策の分野で模索を続けることにより、ある程度の成果を収めてきたが、不十分な部分はある。例えば養老サービス体系の不完全さ、農村地域での良質な養老サービスの不足、介護人材の不足が際立っている。また、スマート化され、個別の高齢者に適合するサービスを実現するための新技術の活用法についても、さらに知恵を出す必要がある。
これらの課題に直面する中国にとって、日本と経験を共有し、対策を共に考えることは有効だ。高齢化社会を比較的早く迎えた日本は産業政策、ヘルスケア、介護サービスなどの面で豊富な経験を有し、特に介護保険制度や養老サービス人材の育成、高齢者のメンタルケアなどで強みがある。また、人工知能(AI)やロボットを生かした日本の革新的な取り組みも学ぶ価値がある。
一方で、中国で根付いたコミュニティーによる養老や在宅養老、スマート養老などでの模索と実践は日本に有益な参考を提供するものだ。例えば、中国で力が入れられているコミュニティーによる養老は、対象範囲を高齢者の自宅にまで拡大してより細かいサービスを提供している。また、IoT(モノのインターネット)の技術を利用した遠隔健康モニタリングやAI技術を利用した各高齢者のために個別化されたサービスの提供など、中国ではスマート養老の模索も続いている。
中日両国は養老分野で新技術を利用して協力すれば、ウィンウィンを実現する可能性が大きい。両国はAI、ビッグデータ、IoTなどの新技術を利用して、よりスマート化され、より個別化された養老サービスを共同開発し、サービスの質と効率を向上させることができる。具体的に言えば、AI技術を利用して高齢者の健康管理プランを提供したり、ビッグデータ技術を利用して高齢者が生活で必要とすることを正確に予測して対応することが考えられる。中日両国はこのほかにも、人材育成やサービス基準の制定などの面で協力を強化し、養老サービスの専門化、標準化を共に推進することができる。
人口の高齢化は試練であると同時にチャンスでもある。中日両国は共にアジアの重要な国であり、高齢化への対応という責任と使命は共通している。高齢者により多彩で尊厳と幸せを享受できる老後生活を送っていただくために、中日両国ができることは大いにある。(CMG日本語部論説員)
3月21日ニュース
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