【観察眼】桐樹の陰に鳳凰が宿る
2025年に入ってから、オープンソースの大規模言語モデルDeepSeek(ディープシーク)が高い注目を浴びていることもあり、中国の株式市場に対する外資の投資意欲が高まっている。ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、フィデリティ・インベストメンツ、インベスコ・アセット・マネジメントなどの各社が続々と中国市場を楽観視する考えを示している。ディープシークを始めとするAI技術は中国の株価上昇を刺激している。
国務院はこのほど、「2025年外資安定化行動方案」を発表した。電信や医療、教育などの分野における試験的な開放を拡大し、外資の中国での株式投資を奨励し、「中国への投資」をブランド化する。この案は外資を安定させるための具体的な行動として、世界各国からの中国、さらには未来への投資に新たなチャンスを与えるものだ。
全国人民代表大会(全人代)と政治協商会議(政協)が間もなく開催される。会議ではこれまでと同じく、高いレベルの対外開放、外資の安定化が重要な議題となっている。習近平国家主席によれば、開放は人類の文明を進歩させる重要な動力であり、世界の繁栄と発展にとって通らねばならない道である。開放してこそ、前に進むことができ、閉鎖は必然的に立ち遅れにつながる。グローバル化のうねりの中で、開放は国家の繁栄と発展にとって、避けては通れない道である。開放は中国式現代化の鮮明なシンボルだ。高いレベルの対外開放はより広い分野と高いレベルで外資を引き付けることを意味する。
投資環境の改善と外国投資家の投資意欲向上は毎年の全人代で頻繁に登場する言葉だ。中国の古いことわざのように、「桐樹の陰に鳳凰が宿る(徳のある者のもとには、立派な人材が集まる)」。外資を引き付ける鍵は良好な投資環境である。日本の大手自動車メーカーのトヨタは上海市南西部の金山区に、独資で新たにレクサスのバッテリーEVと電池の開発・生産会社を設立することを決定した。トヨタはテスラに続いて、中国で独資会社を設立する海外の自動車メーカーとなった。
米国のテスラは上海に工場を作ることで中国政府と上海市政府の一連の優遇策を得た。世界最大手の自動車メーカーとして、トヨタが中国で初めての独資工場を設立することは、絶えず改善されている中国の投資環境や、外国投資家に対する権益保護と切り離せない。
トヨタが上海に工場を設立する理由には、それ以外に経営上の考えもある。トヨタはEV車の開発で中国にやや遅れを取っているのが現状であり、そのために、中国市場における自動車販売台数が大幅に減少していた。2023年の販売台数は前年より2%減って190万台であり、2024年の1~10月期の販売台数は前年同期比9.3%減の141万台だった。中国での経営の苦境を抜け出そうと考えたことも理由の一つと見られる。
「中国への投資」のブランド化は外資を引き付ける金看板として、絶えず各国企業の投資を引き付けてきた。上海を中心とする長江デルタ地区はこれまで、ドイツのフォルクスワーゲンと米国のゼネラルモーターズの独壇場だった。日系メーカーは長江デルタへの進出の願いはあってもなかなか果たせなかった。ここ数年間、中国のEV車産業の急速な発展に伴ってドイツと米国はダメージを受け、生産台数の減少という調整策を実施した。これを背景として、トヨタは高品質のEV車で上海に進出し、ドイツ系と米国系ガソリン車メーカーの不振によって生じた市場の隙間を争うことになる。これも、「中国への投資」というブランドに、時代とともにますます磨きがかかっていることを証明している。
日中経済協会、日本経済団体連合会、日本商工会議所の3団体合同訪中代表団が2月16日から中国を訪問した。中国の発展の新たな動きが日本の経済界から注目されている。両国は製造業のデジタル化発展、スマート製造、デジタルインフラ施設、データ管理などの議題をめぐって意見を交わし、外資の根を下ろした発展のためにより大きな絵を描いた。
商務部の凌激副部長兼国際貿易交渉副代表によれば、「方案」は年内に発効するとのこと。中国は高いレベルの対外開放の強いシグナルを発信した。外資が中国に投資し、長期にわたって事業を展開すれば、ますます多くのチャンスがもたらされる。「中国への投資」のブランド化は外資を引き付ける金看板である。投資環境の改善と外国投資家の信頼向上は、最終的にウィンウィンの結果となるだろう。(CMG日本語部論説員)
3月21日ニュース
00:00 /