【観察眼】 北京冬季五輪 ギドゥンドゥンが示してくれた感動の連鎖と報道のあるべき姿

　北京冬季五輪が開催中の中国で、さっそうと話題をさらった一人の日本人。取材のために北京入りしている、日本テレビの辻岡義堂アナウンサーである。北京冬季五輪のマスコット「ビンドゥンドゥン」への愛の深さから、「ギドゥンドゥン」の愛称もすっかり定着した辻岡アナ。中国でも「義（イー）ドゥンドゥン」の呼び名で浸透している。

メダリストにブーケと共に渡されるグッズ、「金（ジン）ドゥンドゥン」と呼ばれている

　きっかけとなったのは、朝の情報番組に中継で出演した映像だ。プレスカードのストラップにビンドゥンドゥンのピンバッジをいくつもつけて熱く語る。まるで連続ドラマのような展開で見る人を笑いの渦に誘い込む……そんな辻岡アナの姿を喜んだ日本在住の中国人が、中国のSNSで紹介したとみられる。その最初の動画の再生回数だけでも、2月8日時点で1300万回に上っている。高まる「ギドゥンドゥン」人気を受けて、中国メディア各社は相次いで辻岡アナにインタビューを申込み、彼の出演映像は中国ですでに5億回以上も再生されているという。

CGTNの曹氷記者のインタビューに答える辻岡アナ

　 「ギドゥンドゥン」はその深い「ビンドゥンドゥン愛」により、中国で多くのファンを生み出している。実は弊局にも、北京のオリンピックグッズ収集家から「ビンドゥンドゥンの限定グッズをギドゥンドゥンにプレゼントしたい」という問い合わせがあり、その人気ぶりを肌で感じている。

　また、中国メディアも辻岡アナへの協力を惜しまず、ついには8日、広州在住の「ビンドゥンドゥン」デザインチーム統括である曹雪さんとのオンライン対面を実現させるに至った。曹さんは広州美術学院視覚芸術学院の院長を務めており、今は「ビンドゥンドゥンの父」とも呼ばれている。辻岡アナとの対面後に彼は、「ビンドゥンドゥンに感動してくれる姿に、私たちのほうが感動させられた。感動の連鎖になっている」と話したうえで、自身の作品が外国人からも愛されているということについて「とてもラッキーなこと」と喜んだ。そして、「ビンドゥンドゥンは、『愛』を伝えるためにデザインしたキャラクター。それが辻岡さんにはしっかりと伝わったことが分かってうれしい」と明かした。

北京五輪メインプレスセンターで新華社通信のインタビューに答える辻岡アナ（写真：新華社通信）

　辻岡アナがビンドゥンドゥンと北京冬季五輪に向けるピュアな気持ちは、曹雪さんだけでなく多くの中国人にも伝わっている。「感動の連鎖」が、中国にも「ギドゥンドゥン」の応援団を生み出し、5億回の再生回数となって表れたのだ。両国で毎年行われている中日共同世論調査では、相手国の理解を深めるうえでメディアが担う責任の重要性を示す結果が出ている。今回は日本メディアが中国に見せた善意が、この「感動の連鎖」の出発点となった。

　もちろん、辻岡アナがここまで話題になった要因は、単に「ビンドゥンドゥンのファンだから」というわけではない。彼とそのチームが、コロナ禍においても、北京冬季五輪の楽しみや喜び、ポジティブなエネルギーを見つけ出そうと創意工夫を重ねていることは、報道を通して伝わってくる。その努力も「ギドゥンドゥン」フィーバーの重要な源泉だろう。これは、メディアによる前向きな海外交流の優れた実証例だ。

　開会式の演出を手がけた張芸謀（チャン・イーモウ）監督は、「冬季オリンピックは雪の結晶たちの物語だ」と表現している。オリンピックの呼びかけに集う一人ひとりをひとひらの雪の結晶にたとえるならば、「ギドゥンドゥン」フィーバーは、両国のメディア人と、「良いものは分かち合おう（シェアしよう）」と願う人々が一緒になって織りなした、美しい雪景色と言えよう。

（CRI日本語部論説員）