【観察眼】冬季五輪大会がもたらす「動力」と「活力」はメダル獲得よりも大切

　私は今回の冬季五輪で、中国人選手が金メダル、あるいはその他のメダルを何個獲得できるかは、気にしていない。私が意識しているのは、冬季五輪がこれから我々に注入してくれる動力と活力だ。

　冬季五輪が帯同するおとで、3億人がウインタースポーツに参加するようになる。ウインタースポーツの普及は、スポーツ強国としての中国のレベルを一段と高めてくれる。

　私は「緑水青山は金山銀山だ（美しい自然は富を生み出す鉱山だ）」と語っている。今ではウインタースポーツも、中国のウインター経済の発展をもたらす「金山銀山」だ――。

　これは、習近平国家主席が国際五輪委員会（IOC）のバッハ会長と会談した際の冒頭の発言だ。言葉には親しみが込められており、旧友に再会した喜びがあらわれている。口調は軽やかで、喜ばしい出来事が近づいているうれしさがにじみ出ている。そして発言ではさらに、中国のウインタースポーツの今後の発展についての高所に立った展望と、先見性と卓見が披露された。

　中国の庶民の多くが、競技会で獲得したメダルの数を評価し、金メダルを獲得できたかどうかで英雄であるかを論じるようになったのは、いつからのことだろう。しかし今や、中国の最高指導者がこのように鋭い言葉を発したことは、中国人のスポーツ観や競技会についての理念に、天地が覆るような変化が生じたことを意味している。すなわち競技会とは、閉幕すれば全ての評価が定まるというわけではない。さらに重視すべきことは、競技会によってもたらされる発展ためのきっかけと、国民にもたらされる幸せと素晴らしい生活だ。この考え方の転換は中国のウインタースポーツ、ひいてはスポーツの発展にとっての新時代の幕開けを意味すると言ってよい。一を聞いて十を知るとの言い方もある。すなわち、1点をもって、大局を察することができる。習主席の発言には、国を治める深い理念と、抜きん出た政治の知恵と、発展についての科学的な判断が凝縮されているのだ。

　日本などのウインタースポーツ強国と比べれば、中国のウインタースポーツが発展しはじめたのは、比較的遅かった。ウインタースポーツの理解と認識は、一つの発展過程をたどってきた。中国の選手が初めて冬季五輪に出場したのは1980年のレークプラシッド大会だった。中国人選手は大会の前に、日本の長野で集中訓練を受けた。

　日本人コーチを務めた河野博明さんは、当時を振り返って以下のように語った。まず、中国人選手は装備が貧弱で、プロ用のスキーブーツやスキーウエアすら持っていなかった。技術は日本の高校生のレベルだった。しかし彼らは歯を食いしばって努力したという。技術のレベルは急上昇した。

　中国のウインタースポーツは、このように貧しく技術も空白という苦しい初期状態から飛翔しはじめた。1992年にフランスのアルベールビルで開催された第16回冬季五輪大会で中国は銀メダル3個を獲得して「メダルゼロ」状態からの脱却を果たした。2002年に米国のソルトレークシティーで開催された第19回大会で、中国は金メダル2個を獲得した。中国にとって冬季五輪大会での初の金メダルだった。2010年の第21回バンクーバー大会で、中国人選手は際立った輝きを見せた。ショートトラックスピードスケート女子で、中国は金メダル4個を独占した。そして同大会では、メダル獲得数で世界第7位に上昇した。わずか40年間で、中国のウインタースポーツは世界に注目される顕著な成績を収めるようになった。

　時代の急速な発展と競技スポーツへの理解が深まるにつれ、特に今回の北京大会を通じてますます多くの人が、メダルや成績が重要であることに間違いはないが、競技としてのウインタースポーツを重視し発展させる最終的な目的は何なのだろう、と考えるようになった。

　仮に、目的は少数の選手が競技場で果敢に戦って国民に栄誉と誇りの感情をもたらすことだけと考えるなら、そのような理解は一面的で限界があるものかもしれない。ウインタースポーツを実際に大衆に浸透させることには結びつかず、普通の庶民が期待する素晴らしくて幸せな生活の実現とは、一定の距離が生じるからだ。冬季五輪が注入する「動力」や「活力」を利用してこそ、そして一般庶民が広くウインタースポーツを楽しんでこそ、中国のウインター経済は飛躍的に発展し、スポーツ強国として健康的な中国を建設できる。そうなってこそ、北京冬季五輪大会という契機と、時代が中国にもたらした発展のチャンスをしっかりとつかむことになる。

　中国ではすでに、ウインタースポーツが根を張り芽を出し、さらに多くの人に健康と喜びをもたらし、素晴らしい生活の実現のために時代の輝きを添えた。この魅力的なスポーツが世界をより強く団結させ、中国国民の生活をより幸せなものにすると信じる。（CRI日本語部論説員）