北京
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23/19
米国主催のいわゆる世界初となる「民主主義サミット」が9日と10日の両日、オンライン形式で開催される。「民主主義」は、米国が集合を呼びかけるための号令に使われている。
もっとも、「民主主義」そのものについては、中国の指導者は早くから「全人類の共通価値」と繰り返し、表明している。今回の会議が、真に人類社会の進歩をはかるためのものならば、それはそれで歴史に残る一大事になると言えようが、米ホワイトハウスは週明け6日、中国での人権問題を理由に北京冬季オリンピックに外交団を派遣しない「外交ボイコット」を行うことを発表した。オリンピックという世界共通の行事までも、米国にカードとして使われている。そうした米国の様々な言動から、民主主義は口実に過ぎず、イデオロギーで世界を二分化することこそが米国の真意と言えよう。
一方、会期が近づくにつれ、そうした米国の下心が見抜かれつつある。日本国内でもここにきて、疑問視する声が多く上がっている。
キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)の宮家邦彦研究主幹は、米国はいま「民主主義陣営」と「そうでない陣営」の対立構図を考えており、サミットはそれに合わせた「政治ショー」であり、米国のプロパガンダだと指摘する。
朝日新聞は、「米国は世界各地の民主主義を促進するという大義名分の下、多くの国家を結集して緩やかな連合を形成し、バイデン政権が『専制主義国家』と位置付ける中国に対抗しようという戦略も透けて見える」と鋭く切り込んだ。
東洋大学の薬師寺克行教授は東洋経済オンラインへの最新寄稿で、「米国主催の民主主義サミットが不評な理由」をタイトルにしている。薬師寺教授はその中で、「民主主義の伝道者」としての意識が強い米国は、今回も相変わらず上から目線で「民主主義とは何かを教えてやる」という傲慢な姿勢で110余りの国・地域・国際機関に召集をかけたと指摘する。そのうえで、「過去にはネオコンと呼ばれる勢力が政権の中枢を担い、アフガン戦争やイラク戦争に踏み切って大失敗をした歴史もある」とし、「所得格差の拡大による貧困や人種差別が今も大きな政治問題になっている。米国はとても民主主義国のお手本とは言えない状況だ」とけん制した。さらに、バイデン政権は議会での予算関連法案の成立が危ぶまれ、支持率が低下している中、「外交を人気取りに使うことは危ない火遊びにすぎない」と警鐘を鳴らした。
新型コロナは現在も世界で猛威を振るっている。また、気候変動や環境など、人類共通の課題が山積し、その緊迫性は日増しに高まっている。そうした中、米国はもし、民主主義を全面に出して、国際社会を二分化する方向へと拍車をかけるなら、対立はこれまで以上に深まり、人類社会の発展・進歩を破壊するのみだ。これは国際社会の共通利益に合致しない動向であり、最終的に米国自身と世界中の利益を害することになる。
今年6月号の米誌『The Washington Quarterly』には鳩山由紀夫元首相の寄稿が掲載されている。「今日の米中対立の本質は両国の力の接近であって、民主主義対権威主義といったイデオロギーの対立は、大部分が後付けなものになっている」と指摘したうえで、外交に価値観を持ち込みすぎないよう米国に求めている。
民主主義は全人類共通の価値観であり、発展は世界各国の共同の権利である。いまの米国がなすべきことは、対立をあきらめ、アプローチの仕方を改め、各国はいずれも自国の実情に即して発展の道を選ぶ権利があることを認め、責任ある大国の姿勢で人類の発展と福祉を各国と共に推し進めていくべきことであろう。
冬季オリンピック関連の動きについては、ホワイトハウスの発表を受け、国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員は、「米国の選手は予定通りに出場し、北京オリンピックはほとんど影響は受けない」と明らかにしている。
民主主義サミットは、所詮は茶番劇なのである。(CRI日本語部論説員)