北京
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23/19
中日両国の学識者たちが、中国の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)への加入申請をめぐって行ったオンライン形式でのディスカッションで、中国側の「CPTPPへの加入申請は、国内改革を推し進める決意の表れ」だとする発言に対し、日本側は「その前提での加入申請を、日本としては歓迎すべきだ」と応じました。
第17回北京-東京フォーラム経済分科会・北京会場の様子
これは、中日民間対話の場として開かれた「第17回北京-東京フォーラム」の分科会の一環として26日に行われた対話会でのやり取りです。席上、日本側パネリストからの「中国のCPTPP加入申請の本気度」に関する質問に対して、元中国商務部副部長長の魏建国氏(現在、中国国際経済交流センター・シニア専門家委員)は、この加入申請は「高い水準に合わせて国内改革を進めていくという中国の決意の表れ」であると示し、「中国は本気だ」と答えました。
そのうえで、中国の加入申請について日本国内に見られる「主導権争い説」や「自国市場開拓優先説」などの疑念に対して、魏氏は「決して捉えまちがえないでほしい」とけん制し、「中国のCPTPP加入によって、中国の方に大きな利益が流れると一方的に見られがちだが、これが世界にとっても等しく大きなチャンスであることを決して忘れないでいただきたい。中国は一人勝ちではなく世界各国と共に勝つこと、協力・ウィンウィンの実現を目指している」と訴えました。
また、CPTPPには高いハードルがあり、中国にはまだそれに見合った条件が整っていないのではとの指摘に対し、国家発展改革委員会学術委員会の張燕生研究員は中国のWTO加盟の歩みを引き合いに出し、「中国は15年間をかけて、WTOから出された18項目の要求に照らし合わせながら、法文書や政策文書の条項5000本余りを改正し、その後もWTOのルールを厳格に順守してきた」と話し、「新たな枠組みへの加入申請は、中国にとってはそれに照らし合わせて自身の不足を改善していくビジョンとしても捉えられる」と、魏氏の意見に賛同を示しました。さらに、中国はCPTPPの加入とは関係なく、今後もゆるぎなく開かれた姿勢でビジネス環境の改善に努めていくという見解が、中国側パネリストの共通認識として強調されました。
第17回北京-東京フォーラム経済分科会・東京会場の様子
対話に参加した森ビル株式会社の森浩生副社長は、中国のそうした姿勢をポジティブに評価し、「東アジアの健全な経済成長は世界にとっても重要だ。中国経済が大きく伸びた背景には自由貿易を進めてきたことがあるので、CPTPPへの加入は個人的にはぜひ進めてほしい」と理解を示しました。
当日はモデレーターとして参加した元日銀副総裁の山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長)は、「コロナ禍で世界経済がサプライチェーンの寸断などの危機にさらされた中で、日中は共通の課題に共に取り組む必要性があると確認された」として、「中国は、CPTPPが掲げる諸条件のうち、まだ足りない部分を改善する大きなきっかけとしての加入申請を主張しているが、それは日本側としても歓迎すべき姿勢だ」と総括しました。
第17回北京-東京フォーラム経済分科会・北京会場の様子
【背景】
「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)はアジア太平洋地域の多国間経済連携協定です。その前身は2005年にニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4カ国の間で署名された自由貿易協定にさかのぼります。2017年に米国が離脱後、日本など11カ国が交渉を続け、2018年に発効されました。
その内容は、全輸入品目の95%についての加盟国間の関税撤廃のほか、サービスと投資の自由化や、知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野での21世紀型のルール構築を目指すものとなっています。
中国は2021年9月16日にCPTPPへの加入を正式に申請したと発表しました。現在、諸外国・地域との間で、20余りの自由貿易協定を結んでいる中国には、さらに高いレベルでの改革開放を推し進めるには地域経済統合を目指す一段と高い自由貿易枠組みとの結びつきが必要だとされています。
なお、米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所の試算では、CPTPPは現在、毎年1470億ドルの所得拡大を世界にもたらしていますが、中国が参加すれば、その金額は6320億ドルに上るだろうと見積もられています。
(記事:王小燕、梅田謙)