東京五輪開幕間近 中国のピンバッジコレクターたちの思い

2021-07-20 19:13  CRI

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東京五輪開幕間近 中国のピンバッジコレクターたちの思い
7月17日 北京・王府井に集まった「章魚会」の仲間たち

 コレクターの間で「ピン」と呼ばれている「ピンバッジ」、世界各地でその交換(「ピントレーディング」)を楽しむファンが大勢います。その人気ぶりは「五輪の非公式競技」と呼ばれているほどです。
 中国語では、ピンがついているか否かは関係なく、「バッジ」のことを「徽章」と言うため、コレクターたちは「徽章(フイジャン)」から一文字を取って、中国語では「タコ」を意味する「章魚(ジャンユィ)」と自称し、様々な「章魚会」を結成して活動を続けています。北京では、17日の土曜日、北京冬季五輪組織委員会の公式行事として、「ピンバッジ文化週間」が中心部の商業街・王府井で開催されており、コレクター向けの「ピントレーディングセンター」もこの日から正式に発足しました。

 「ピン」の魅力はどこなのか。間もなく開幕する東京オリンピックに対して、中国の「章魚」たちはどのような思いを抱いているのか、マイクを向けてみました。

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7月17日 北京・王府井で行われたピントレーディングの会場 

■1896年アテネ五輪&2008年北京五輪に遡るピンバッジの歴史

 ピンバッジのオリンピックでの登場は、1896年にギリシャで開かれたアテネ大会に遡ります。選手、審判、大会役員、メディアなどを判別する目的で、厚紙で円形のバッジをつくったのが始まりでした。後に出場選手は互いに祝福を送る意味を込めて、身に付けたバッジを交換し始めましたが、一般客の間でピントレーディングが広まり始めたのは、1980年のモスクワ大会からだとされています。

 誕生から百年余りの間に、材質の改善とデザインの多様化につれ、ピンバッジはオリンピックにまつわる思いを乗せたメモリとなり、オリンピックの精神や文化を伝える媒介そのものとなっています。

 ところで、中国では、2008年北京オリンピックが大きなきっかけとなり、ピンバッジの魅力に目覚めてコレクターになった人が多い。普通のスポーツファンもいれば、選手や役員、ジャーナリスト、収集家もいます。

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7月17日 北京・王府井「工美大厦」で開催中のピンバッジ展
北京のコレクターから出品された600枚あまりの雪印のピンバッジ、6年あまりをかけて収集したという

 いまやベテラン「章魚」として知られる孫暁曄さんは、本職は中国でスポーツを統括する国家体育総局訓練局の副局長です。2008年北京五輪の時に、仕事柄、選手村に良く出入りしているうちに、気づいたらコレクションが大量に増えていました。「小さなピンに大きな世界があり、一枚一枚に天地が広がっている」と孫さんはピンバッジに感じた魅力をこう話してくれました。

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2008年からピンバッジの収集を始めた孫暁曄さん
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「私にとって初めての東京五輪のNOCピンです」と孫さん

 孫さんは、いま付けているピンの中には、「タコの会」のオリジナルデザインによる「タコ」のピンもあれば、北京冬季オリンピックのために作成した豪華版ピンもあります。そして一番目立つ場所につけたのは、組市松紋の細長いピンです。「つい最近入手したばかり」という「東京オリンピック委員会」のピンだそうです。「交換でようやく入手したもの。僕にとっては、東京オリンピック初のNOCピンになる」と満足気な笑顔をほころばせました。

 孫さんによりますと、ピンはざっくり4種類に分けられます。つまり、ライセンス商品、非売品で、選手やコーチにしか配布しない各国オリンピック委員会のNOCピン、協賛企業ピンにメディアピンです。

 「何年もかけて探し続け、ほしいピンをようやく入手した時のあの嬉しさ、言葉では言い表せません。いくらお金があっても買えられない嬉しいことですよ」と孫さん。

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自慢のコレクションをベストにした北京のコレクター

■「小さなピンに広がる大きな世界」に惹かれて

 新たにオープンしたピントレーディングセンターの成立式に、トリノ冬季五輪のペアスケーティングで銀メダルを獲得した張丹さんの姿がありました。彼女にとって、胸につけた、小さなトーチが入っているピンバッジには生涯忘れられない思い出がにじみ出ていると言います。

 「これはトリノ冬季五輪の選手やコーチに配布されたピンです。私にとって、多くの人に知っていただいた大会だったので、重要な意義があります。このようにして、小さなピンを目にする度に、たくさんの思い出がよみがえってきます」と穏やかな笑顔を見せました。

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トリノ冬季五輪銀メダリストの張丹選手

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張丹選手が重宝するトリノ五輪のピンバッジ

 会場には、SNSのWechatで500人余りの「タコ」チャットグループを管理している王舒さんの姿もありました。元喫茶店経営者で、今は北京収集家協会体育専門委員会副主任を務める王さんは、ピンのだいご味は、「各国選手とピンを通して交流できることにある」と話しています。

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2008年からピンバッジの収集を始めた王舒さん

 2008年、当時の王さんはオリンピック選手村の西門で喫茶店を経営していました。彼の店には、各国の代表団関係者がよく訪れていました。

 「ある大雨の日、オーストラリア代表団の団員4人に傘2本を貸してあげました。後日、その方たちが傘を返しにきてくれましたが、2本の中の1本がほかの人にもっていかれたので、1本しか返せないと実に申し訳なさそうでした。その代わり、その方はピンバッジを1枚くれました。後で知ったことですが、とても珍しいピンでした。そのピンが、私にとって人生初のピンバッジコレクションとなりました」

 王さんは2008年から、北京五輪に出場した国・地域代表団のピンバッジの収集に専念してきましたが、「十数年経っても、なかなか見つからないピンが何枚もあります。もしかして、これからは一生をかけて探し続けるかもしれません」と微笑みながら話しました。

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王舒さんのコレクションの一部、左下のチンパンジーのピンは北京五輪に参加した
ルワンダ代表団のNOCピンで、わずか1000枚の限定版

 北京オリンピックでボランティアをしていた張文全さんにとって、一番思い出深いピンは「謝謝」と書いてあるピンです。

 「国際オリンピック委員会が私たち北京五輪のボランティアに授与したピンですよ」と鼻が高い。

 今は会社員の張さんは、2008年以降、ピンバッジや五輪トーチをはじめ、オリンピックグッズの収集にすでに30万元を費やしてきたそうです。そして、今の一番の夢は東京五輪のトーチを入手したいことだと話します。

 「私の家には収集したオリンピックトーチが約30本あります。日本のトーチは桜のデザインをしていて、とても美しい。ぜひ手に入れたいです」

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2008年北京五輪ボランティア・張文全さん

 張さんは来年年初開催の北京冬季五輪のボランティアにも応募し、ピンバッジやオリンピックグッズを通して結んだオリンピックとの縁はまだこれからも続きそうです。

■東京五輪、何よりも「無事と安全を祈る」 

 ピントレーディングセンターが発足後、初めての交換会には、東京オリンピック関連のピン、あるいは過去に日本で出されたピンに高い評価が出されました。元来から、日本の精巧なデザインが「タコ」たちの間で人気が高く、とりわけ、ドラえもんなど人気キャラクターを取り入れたメディアピンは、容易に入手できないようです。

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コレクターが収集している日本のピンバッジ

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2008年北京五輪記念・日本のメディアピンの中で一番人気が高いと言われているピン

 中国のすぐ隣で開催される東京オリンピックに対し、王舒さんは約50人の「タコ」仲間たちと前々から心待ちにしてきました。早くも2019年から、ピントレーディングのために五輪開催中の東京へ行く計画を立ててきました。ビザの取得に航空券と住まいの確保、万事整ったところで新型コロナウイルスの感染拡大が起きました。今は「とにかく大会が順調に、円滑に終わること祈っているのみです。無事に成功を収めてこそ、コレクターがより大きな収穫を得る可能性があるからです」とあきらめ顔でした。

 一方、仕事柄、スポーツ選手とよく付き合う孫暁曄さんは、感染症対策のため渡航できなくなったことは「残念に思うが、コロナ禍での開催を考えると、規制に対し理解はできる」とし、「ただし、選手の皆さんはオリンピックに向かって、夢を胸に頑張り続けてきたので、彼らには舞台を与えるべきだと思う」と東京オリンピックの無事開催を祈り、選手たちの素晴らしいパフォーマンスに期待する」と話しました。

 東京とのピントレーディングは、しばらくはオンライン形式で続きそうですが、「コロナ収束後に、東京にぜひ行きたいし、日本の皆さんにも北京にぜひ来てほしい。来年になれば、冬季オリンピックの魅力をぜひ北京で感じてもらいたい」と、先を見越した「タコ」たちの声もたくさん聞こえました。

(取材&記事:王小燕、王帥)

【リンク】 
ピンバッジで冬季五輪盛り上げる トレーディングセンターも=北京
コロナ下の東京五輪、中国のピンバッジコレクターたちの声

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