北京
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コロナ禍の発生からすでに一年半が経った。感染拡大の世界的な抑制は未だに実現できていない。WHOの最新データによると、日本時間11日22時までに、全世界の新型コロナウイルスの感染者は1億7450万人に達し、新型コロナによる死者は377万人を上回った。日本国内の情勢も楽観視できない。NHKによると、11日午後6時30分までに、この日だけで新たに2046人の感染が確認され、64人が死亡している。東京五輪は開催されるのか、また、開催するにしてもどのような形をとるのか、日本国民だけでなく、世界の人々が関心と懸念を示している。
一方の中国は、新型コロナウイルスの発生当初から、予防・抑制活動の最前線に立ち続けている。全国的な取り組みにより、5月下旬の時点で感染の発生は概ねコントロールされ、感染対策の常態化も進んでいる。しかし、「覆巣之下無完卵(ひっくり返った巣に完全な卵は残らない)」という言葉がある。広東省広州市では5月21日に75歳の女性・郭さんの感染が確認されたことを皮切りに、感染者が続出した。新たな感染の波が来たのではないかと、人々は神経を尖らせた。しかし、世間は郭さんを責めることなく、慰問のメッセージを伝え、一日も早い快復を祈った。また、広州市民は呼びかけに応じて夜遅くまで列に並び、PCR検査を受けた。さらには、大勢が積極的にワクチンを接種した。
昨年5月、習近平国家主席はコロナ禍について「人民を至上とし、生命を至上とする。人民の生命の安全と健康を守るためには、すべての代価を惜しまない」と述べた。政府はこの言葉の通りに感染対策に取り組み続けてきたが、市民もまた、これに積極的に応えてきたことが、今回の広東省での出来事から分かる。
広東省仏山市に住む20代の青年・陳志傑さんは深夜まで行われた大規模なPCR検査の様子に心を打たれ、自らも何かをしようと考えた。そして、検査場をよく観察した彼は、絵が得意だという長所を生かし、古代の名画「清明上河図」を模倣した仏山バージョンの「PCR検査上河図」を5日かけて描き上げた。この絵は仏山市禅城区のPCR検査の様子を描いており、136人の医療従事者を主役に、ほかのスタッフやボランティア、市民など全部で345名が登場している。仏山祖廟など地元の15カ所のランドマークも描いた。陳さんはこの絵を通して、「感染症対策のことをもっと考えてもらえれば」と語った。
陳志傑さんの作品「PCR検査上河図」の一部
コロナ禍において、中国が対策を油断したことは少しもなかった。今月終わったばかりの全国大学統一入試(6日と7日、一部地域では10日まで)には、全国で1078万人の受験生が参加したが、これに際して関係部門は中・高リスク地区の受験生に対して、専用の「一対一」専用車による送迎サービスを提供した。また、濃厚接触者への接触(二次接触)を理由に隔離ホテルに宿泊中の受験生に対しては大型バスによる集中的な「点対点」送迎が統一的に手配された。もちろん、受験生の送迎を行う運転手は全員が2回のワクチン接種を終えており、さらに2回のPCR検査も受けた。その上で、N 95マスクを着用し、防護服を着用し、送迎車は専門の消毒会社によって消毒された。感染が確認されたか、感染の疑いがある受験生については、病院に専用の試験場を設けるという徹底ぶりであった。
さて、冒頭で紹介した広州市で5月21日に感染が確認された郭さんは無事回復し、10日に退院されたそうだ。郭さんの後に見つかった感染患者らも順調に回復している。しかし、安心してはいけない。ウイルスに国境は関係ないため、感染拡大の広がる国が残されている限り、世界のどこにも手放しで安心できる国はないのだ。これは、地球上の人類がすでに一つの運命共同体になっていることを示している。感染症の予防・抑制については、どの国も「人民を至上とし、生命を至上とする」原則に基づいて、効果的な措置を取っていくべきだ。そして市民もまた、予防・抑制の取り組みについて自身で責任を持つべきだ。その上で、各国が協力し合い、手を携えて共に前進しさえすれば、人類はきっとコロナ禍に打ち勝ち、あるいは平和的に共存できる道を開けることだろう。(日本語部論説員)