北京
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北京から約2000キロ南下した広東省清遠市には世界最大規模のサッカースクール「恒大サッカースクール(中国語:恒大足球学校)」がある。
恒大サッカースクール正門
サッカースクールらしくボールをモチーフにしたオブジェ
恒大集団が2012年に約30億元(約480億円)を投入して設立し、「中国サッカーの振興とサッカースターの育成」を目的としている。恒大集団は広東省に本拠地を置き、不動産をはじめとして、金融、健康、観光、スポーツを一体化させた経営で2019年にはフォーチュン・グローバル500入りし、総資産は1兆元に達する。
敷地内中庭にある銅像
恒大サッカースクールではセレクションから選抜されたジュニア選手を無料で育成している。敷地内には小学校、中学校、高校が併設され、現在、1000人以上の選手たちが寮生活を送りながら日々の練習に励む。
選手たちは共同部屋で寮生活
スクールの育成方針は5年間の国内訓練、5年間のスペイン研修、2年間の海外プロリーグ経験を積ませ、18歳になった段階で欧州プロリーグや国内のプロチームへと繋げることを狙いとしている。
2021年5月現在、恒大サッカースクールは延べ457人の選手を各クラスの国家代表に送り出した。また、2021年シーズンは恒大集団がスポンサーを務める中国プロサッカークラブ「広州足球倶楽部(広州FC)」に41人が加入し、さらに11人の選手がスペインのプロチームへとレンタル移籍した。
敷地に足を踏み入れると、中国らしからぬ西洋風建築の建物が立ち並ぶ。サッカーの練習以外の時間は他の学校と同じようなカリキュラムの授業を受ける。
スクール内の建物は西洋風建築
授業を受ける学生たち
見学した授業では、小学4年生クラスが英語の授業中だった。国際的に活躍する選手を育てる方針は、サッカー以外の普段の授業カリキュラムにも込められている。
ロールプレイングで英語の授業中
カメラを向ければ学生たちはサービス満点
しかし、この学校ならではといえるのは、休憩時間になると学生たちは一目散にボールを持ってサッカーを至る所で始めることだ。しかも、ただボールを蹴るのではなく、数人のグループを作ってミニゲームで汗を流す。そして、始業再開のチャイムが鳴ると、また授業へと戻る。サッカーが常に側にある生活を送っていることを休み時間の一コマから伺える。
休憩時間はミニゲームで汗を流す
スクールは2015年にその規模感から世界最大のサッカースクールとしてギネス世界記録に認定された。それを表すように校内には大小合わせて48面のサッカーコートが設置され、各年代の選手が中国人コーチ、海外から招聘された外国人コーチの下、練習している。
スクールはギネス世界記録に認定
整備の行き届いたサッカーコート
各クラスの練習には2人以上のコーチが付いて指導に当たり、外国人コーチには専属の通訳をつけて意思疎通を図っている。また、普段の練習の様子はコートに設置されたカメラで記録され、常に最善の指導ができるように配慮されている。
各コートに設置されている記録用カメラ
この時期、広東省は日中30度を超えるため、こまめな水分補給を練習中に促しているが、ここに日本とは違う点を感じさせられた。外に設けられた水分補給用の水道が水ではない。蛇口をひねって出てくるのはお湯なのだ。体を冷やしてはいけないという中国の東洋医学思想を垣間見た。
外にある水飲み場
よくよく見ると「温开水」(お湯)と書いてある
運営に関わる広州FCはこれまでに1部リーグのスーパーリーグで最多となる8回の優勝に輝き、さらにAFCチャンピオンズリーグでも2回優勝するなど、アジアでもその存在感を放っている。そんなトップチームを目指して、中国各地から厳しいセレクションを勝ち抜いたジュニア選手たちがレベルの高い環境で日々、練習に励んでいる。今後もさらなる生え抜き選手たちが中国サッカーを牽引し、世界へと羽ばたいていくことになるだろう。
エレベーター横の表示「2、3階へ行くのにエレベーターを使うの?階段で上がろう!体にいいぞ!」
(日本人記者:星和明)