北京
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23/19
春分後の週末、北京は澄み渡る青空が広がり、数日前の黄砂は遠い昔のことのようだった。3月15日に北京を始め、中国北部を襲った黄砂は過去十年で最悪のものだったとされていた。「黄砂襲来でセピア色に包まれた北京」などのつぶやきがインターネットで注目の話題となり、各国でも相次いで報道されていた。
一方、モンゴル非常事態総局とモンゴル国大統領のウェブサイトによると、14日、モンゴル国ヘンティー県など複数の地方で吹雪や砂嵐などの災害が発生し、10人の命が奪われ、数百人が行方不明になっていた。国家林業局は衛星画像と地上観測情報を総合的に評価し、モンゴル国南西部で発生した砂嵐が気流に乗って、南へ移動して中国国内に入ると予報を出したのに続いて、中国中央気象台は15日に黄砂警報を発令した。砂嵐は中国北方の大部分の地区を襲った後、中国を通り抜けて韓国へと向った。
韓国聯合ニュースなど複数のメディアが砂嵐の起源が中国だと報じて、非難していた。これに対し、中国外務省の趙立堅報道官は翌16日の記者会見で、「中国の気象当局のモニタリングによると、今回の砂嵐は外国で発生したもので、中国は“途中駅”に過ぎない。モンゴル国政府は砂嵐の被害に関する情報を発表したが、中国のメディアはモンゴル国が『一つ手前の駅』だから非難することはしなかった。各側は科学的、建設的な態度で関連問題を対処し、世論を正面から導き、必要でないセンセーショナルな報道と安易なレッテル貼りを避けるべきだ」と強調した。
黄砂が収まり、話題としての注目度が下がったが、何故このような喧騒になったかは、実に考えさせられる。自然災害に対しては、外務省報道官が言うように、科学的かつ建設的な態度が必要である。今回の砂嵐の発生メカニズムをめぐり、中国科学院大気物理研究所の王庚辰研究員は、モンゴル国で発生した吹雪や強風で、大量の黄砂が、低気圧の上昇気流により上空に巻きあげられ、その後、冷たい高圧にぶつかって南東へと移動し、最終的に北京などの地方に運ばれてきたとしている。このような大規模な気流の移動は、どの国の国境線もそれを阻むことができないものである。同じ空の下で、各国はそれぞれの力を生かし、共に環境災害に向き合っていくしかない。他国のせいにして非難するやり方は、口論を引き起こす以外になんの役にも立たない。
中国は長きにわたって黄砂防止対策を継続的に推進し、ここ数年、砂嵐の発生頻度が減る傾向にある。中国の北方では「三北」(西北、華北、東北)防護林などの大面積の防護林造成事業が進められており、黄土高原の植生も修復されつつある。防護林の整備は環境改善に顕著な効果があるものの、あくまで所在地の砂塵の量しか減らせず、砂塵が現地ではなく、遠くから飛来した場合にはあまり良い効果が期待できない。中国科学院寒冷乾燥地域環境工事研究所の陳広庭研究員は、「研究の結果では、砂嵐の対策は局部だけに頼っては根本的な改善が得られないことが分かった。中国の砂嵐の中では、半分が国外から運ばれてきたものである。砂嵐の根絶には発生源から取り組む必要があり、これには全世界が環境ガバナンスでの協力に関わり、中国の黄砂対策のみに頼れるものではない」との考えを示している。
砂塵対策だけではなく、環境・気候問題のグローバルガバナンスも世界共通の認識となっている。「アメリカファースト」を唱えていた米国でさえ、170カ国以上の指導者が合意した温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から一度脱退したものの、新任のバイデン大統領は就任から数時間後に、「パリ協定」への復帰などの大統領令に署名した。米国の新政権も環境・気候問題に直面して、グローバルガバナンスが必要だという認識を示している。世界的な協力こそ唯一の建設的な方法で、米国自身にとってもメリットがデメリットより大きいと言える。
砂嵐が過ぎ去り、北京に青空が戻っている。しばらくは外出を我慢していた人々が相次いで外へと出かけるようになっている。偶然にも、中国の最高指導者である習近平氏は砂嵐が最も深刻だった3月15日に中央財経委員会会議を主催し、重要な演説を発表し、中国は予定通り2030年までに炭素排出量のピークアウト、2060年までカーボンニュートラル(炭素中立)の達成を実現すると表明し、グローバル課題の解決に精一杯取り組む決意を示した。同じ空の下で、美しい地球の構築には世界が一丸となっての協力が必要である。(CRI日本語部論説員)