北京
PM2.577
23/19
聞き手:王小燕
福州のホテルで健康観察中の孫毅氷さん
中国国家衛生健康委員会の発表によりますと、1月31日時点、海外からの入国者による感染例が累計で4717人で、この内の4415人が回復して退院し、死亡例は報告されていないということです。この数は、中国の防疫当局が水際で厳格な健康観察と検査を実施した結果でもあると言えます。では、海外から中国に入国した後、どのような手順で隔離生活を始め、隔離先のホテルでどのように健康管理を受けているのか、今日は勤務地の日本から一時帰国し、現在は福建省福州市のホテルで隔離生活を送っている孫毅氷さんに実体験を聞いてみました。
孫さんは山東省生まれの30代です。大学から日本で留学し、卒業後、中国に投資がある日本企業に勤め、最近は新規事業の高齢者福祉や地域交流事業を通じて日本と中国を跨いで活躍しています。例年だと、出張や帰省などで、毎月のように中国と日本の間を行き来している孫さんは、新型コロナウイルスの影響で、1年余り、中国に戻っていません。今年は、春先に中国国内での長期出張の予定もあり、それに合わせて、旧正月の春節を2年ぶりに実家で過ごしたく、休暇をもらって帰国を決めたそうです。本来は東京から最寄りの青島空港までの便が一番便利ですが、様々なルートの料金を見比べた結果、孫さんは成田―福州、片道13万円のチケットを購入しました。福州入りは1月27日で、現地での隔離生活を始めて約1週間経とうとしています。
――孫さん、新型コロナの感染が続く中での海外への移動、色々たいへんだったのではないでしょうか。
孫 はい。飛行機の料金がとても高いのと、中国国内では、「現地で旧正月を過ごそう」という呼びかけもあり、福州から威海までの直行便が突然欠航になったという連絡もあり、色々不便を感じたことは確かです。けれども、春節は実家で過ごしたいと思った人が多かったのか、私が乗った成田から福州行の大型ジェット機は、ほぼ満席でした。
――では、27日、日本で自宅を出てから、福州のホテルに到着するまでの流れをざっくり教えてください。
孫 その日は、午後3時半のフライトですが、小田原の自宅を朝9時に出ました。12時に成田空港に到着しましたが、チェックインのところはすでに長蛇の列でした。皆さん、検疫のことを考えて、早め早めに到着したほうが良いと思っていましたね。
フライトは予定時刻に離陸して、夕方7時に福州に着陸しました。福州空港で手続きを済ませて、荷物を受け取って、隔離先のホテルに到着したのは、夜の10時半頃でした。
――長い一日でしたね。隔離先のホテルは自分で選ぶものですか?
ホテルの部屋からの眺め
孫 いいえ。ホテルは事前に選ぶことができません。ですので、到着するまでは、どこに行くのかが分からず、ドキドキしていましたね。そのプロセスの中で印象に残ったことは、やはり中国の感染症対策のすごさです。
空港内の職員は全員防護服でした。乗客全員へのPCR検査と体温測定はもちろんのことでしたが、何よりも驚いたのは、細々と消毒をしていたことでした。預ける荷物が届くまでに、待つこと1時間以上でした。ターンテーブルで流れてきたときは、どの荷物もびしょ濡れになっていて、白い粉がついたりしていました。それほどに徹底した消毒をしていたようです。
そして、導線の確保です。飛行機を降りてからホテルの部屋に入るまで、職員以外の誰にも会いませんでした。全て専用通路を使っていました。ホテルも、ロビーから入るのではなく、裏口から専用のエレベーターに乗って部屋に入りました。チェックインや支払いは全て部屋の中でスマホで済ませました。
部屋に入ると、宿泊中の注意事項などが印刷されたファイルが机に置かれていました。徹底した非接触型のサービスでした。
――支払いはすべてスマホ決済だと、中国のスマホ決済のツールが使えない外国人だと不便そうですよね。
孫 私もそこが気になったので、フロントに電話で確認してみました。すると、「今までの外国の方はほとんどスマホ決済が出来る方ばかりでした。どうしても使えない場合は、隔離が解除されてチェックアウトの時に、フロントでキャッシュやカードでの支払いが可能です」ということでした。
また、隔離客への連絡事項は基本的にSNSのウィーチャットを使っていますので、備え付けの自動翻訳機能がありますので、とりあえず言葉が分からなくて困るようなことはないようです。
――孫さんが今泊まっているホテルの様子を教えてください。
孫 そうですね。空港から車で約1時間のところにあります。福州駅のすぐ近くにあり、便利な場所のようです。部屋がとても広くて、とにかく新しい。どうやら隔離用にリフォームしたばかりのようです。
部屋の様子
――隔離生活にとって、食事が大事かと思いますが、食生活はどうですか。
孫 3食付きで、一泊380元(日本円では約6千円ぐらい)、三食ともルームサービスです。
朝食は中華風で、お粥が必ずついていますが、後は牛乳か豆乳か、それから饅頭(むしパン)か揚げパン、とうもろこし、サツマイモなどの点心(てんしん)類です。
朝食
昼と夜は、野菜系2品、肉や魚系2品にスープに果物です。結構美味しいですよ。
昼食
なんとっても、配食が面白いです。「トントン」と2回ノックされます。その音を聞いて、3分後にドアを開けて、ドアの脇に置かれている台からお弁当を受け取ることになっています。何故ならば、3分というのは、感染を防ぐのに有効な時間だそうです。
夕食
――ところで部屋のお掃除、そして、シーツやタオルの交換などは?
孫 部屋の掃除はありません。もちろんシーツや布団カバー、タオルの交換は一切なしです。お掃除は自分でやるもの。その代わり、洗濯用の洗剤や石鹸、シャンプー、ティッシュ、ゴミ袋など2週間分まとめて用意してくれていますし、雑巾もありました!ゴミは毎日午後3時と夕方7時に、部屋の前に出すと、回収にきてくれます。不便なことはないですね。
――健康観察で隔離中なので、体温報告など義務付けられていることもありますよね。
孫 はい。毎朝10時頃、スタッフが体温を測りに来て、ドアの前で測ってくれます。一日の間で、人と対面できるのは、その1回だけです。午後は自分で測ります。4時に、体温確認の電話が必ずかかってくるので。
このほか、隔離期間中、PCR検査を3回受けなければなりません。1日目、7日目と最終日の3回です。費用は全部自己負担です。一回につき80元、約1200円です。もちろん、体調不良の時は必ず報告しなければなりません。ざっくりこんな感じですね。
――孫さんの隔離生活、約一週間終わりましたが、これまでの感想は?
孫 思ったよりも快適な上、のんびりして過ごせるものです。仕事もあれば、勉強したいこともありますので、パソコンとインターネットがあれば、どこでも仕事ができます。誰とも会わないからこそ、逆に落ち着いて整理できることもたくさんあります。ただ、ちょっぴり寂しく感じることもあります。
――最後に今回の体験で思い当たったこと、伝えたいメッセージがあれば、ぜひお聞かせください。
孫 そうですね。まず、不急不要の場合は少し我慢して、移動しない方が良いと思います。お金もかかるし、時間もかかり、体力への試練でもあります。今回私は実家に着くまでに、大体25~30万円ぐらいかかりそうです。
それから、今回の体験で私には思わぬ収穫もありました。それは、介護予防の大事さを実感したことです。今、私は介護予防の講座を受けていますので、予防のポイントとして、閉じこもり予防、運動器の機能向上、やりがいをもつ、栄養改善、うつ予防などがあります。高齢者の皆さんだけではなく、人生100年時代を迎えた中、若い人も若い時から健康に留意して、最後まで自立できる生活を送れるよう一緒に頑張らなくちゃ、と強く実感できました。
なんと言っても、新型コロナ感染症と闘う最前線の皆さんにお礼を申し上げたいです。本当に皆さんお疲れ様です。中国はこれから年越しの準備に入りますが、どなたも健康で、素敵なお正月を迎えてほしいと願っております。
私個人の願いとしては、コロナ感染症が一刻も早く終息して、自分が仕事で関わっている日中青少年交流や介護視察団の仕事を再開したいです。
(聞き手:王小燕、写真提供:孫毅氷)
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