北京
PM2.577
23/19
湖南省漢寿県にある西洞庭湖国家級自然保護区、ここには300平方キロメートルに及ぶ湿地があります。この湿地は、東アジア地域における渡り鳥たちの中継点の一つになっています。今でこそ美しい湿地ですが、かつては違法な土砂の採掘や、過度な漁獲、水田をつくるための埋め立て、さらには汚水の排出などで、生態系が著しく損なわれたことがあります。
しかしここ数年は、湖南省政府が全面的な整備を実施したことで、洞庭湖の生態系が大きく改善しました。そして、様々な利益をもたらしてくれる良好な生態系を守ろうと、現地の人々の間で今、自主的な環境保護の取り組みが始まっています。
今年56歳になる劉克歓さんの一家は、この村で代々 漁業を営んでいました。劉さんはこの数十年間で、湖の魚が徐々に減ってきていることを実感しています。少しでも多くの魚を獲ろうと、網の目を小さくして、稚魚まで獲っていた時期もありました。この地域で生態系改善の取り組みが始まったのは8年ほど前のこと、劉さんはこれに応えて、湖にあった漁獲用の柵や網を撤去し、保護対象となったエリアの外で生態系保全型の魚の養殖業を始めました。
2015年、この保護区で湿地環境保護協会が発足し、劉さんは会長に選ばれました。彼は自費で船一隻、トラック一台を購入し、ボランティア達を連れてゴミ拾いをしたり、魚や鳥類の密漁(猟)[UK1] の取り締まりなどを行っています。400人いるボランティア達の7割が、以前は漁業に携わっていました。
46歳の曽慶武さんは、洞庭湖にあるヨシの群生地で、ヨシの刈り取りに20年以上従事していました。ところが、環境保護意識の高まりに伴い、周辺の製紙工場が操業停止になって、ヨシを刈る必要もなくなりました。
漢寿県では、湿地の環境保護のために違法漁獲の取り締まりを支援する団体が、2016年に発足しました。ヨシ刈りをしていた曽さんは、現地の環境に詳しく、知人も多いことから、40名のメンバーの1人になりました。彼らは6人チームで、面積7万ムー、およそ4600ヘクタールの水域で、違法な漁獲が行われていないか毎日パトロールしています。
漢寿県には、資格を持つ漁師が1300 人以上います。去年発表された、生態系保護のための「10年間の漁獲禁止」計画の一環として、いま漁師たちの再就職支援が行われています。これまでに技能研修会や漁師専用の就職イベントは4回催され、漁師800人が仕事を見つけ、23人が自ら事業を興しました。また、高齢で手に職がない漁師たちのためには、公益性の高い就職先が用意されています。
「小康社会に向かう中国人の暮らし」、今回は湖南省西洞庭湖自然保護区で従来の漁業をやめて環境保護に積極的に取り組み始めた人たちの話をお届けしました。お相手は王秀閣でした。ではまた来週、お楽しみに。(閣、謙)