北京
PM2.577
23/19
SNSに投稿された数秒の映像で、一躍全国、いや全世界で知られるようになった丁真さん(20歳)は、四川省甘孜(カンゼ)チベット族自治州理塘県に住むチベット族の青年である。バズッたきっかけは、理塘県で撮影した映像をSNSで発信しているカメラマンの胡波さんの投稿だった。11月11日、胡さんは自身がショート動画アプリ「抖音」(TikTok)に設けたアカウントに、「女性ファンの要望でニマさんを撮影する予定だった。しかし、ニマさんが用事で出かけていたため、代わって兄を撮ることにした」との書き込みと共に、丁真さんがゆっくり歩きながら微笑みかける映像を投稿した。その純真な笑顔はたちまち多くの人々の心を虜にし、「甜野男孩(スイートさとワイルドさを併せ持つ少年)」という新語まで生ませている。丁真さんはその後、地元の文化観光会社に正社員として就職し、理塘県の観光大使に就任した。本人出演の現地の観光PR動画『丁真の世界』が配信されたところ、理塘県に向かう航空便の利用者が2割増えたほどになっているという。
さて、この社会現象級のブームは何故起きただろうか。まずは丁真さんの素朴な笑顔に、動画で披露された彼が暮らすふるさとの魅力そのものだ。雪山、草原、氷河、お寺、白い塔…これらの風景はコロナ禍に苦しめられた人々にとって何よりの癒しになっている。次に、インターネットの力である。中国インターネット情報センター(CNNIC)が発表したデータによりますと、6月末までに中国のインターネット普及率が67%に上り、スマートフォンなどの携帯端末によるネット利用者は9億を上回っている。丁真さんはSNS「ウェイボー」で開設したアカウントは、6日までのフォロワー数が130万超になっている。「抖音」アカウントには、フォロワー460万人、「いいね」が1213万回付けられている。三つ目に、中国で国を挙げて取り組んできた「貧困脱却」に対する人々の強い関心である。中国政府はこれまで8年の時間をかけて、理塘県を含めた最後に取り残された832の貧困県全数の貧困脱却を実現させた。理塘県は、貧困脱却を宣言したのは今年2月。貧困への逆戻りを防ぐため、地方政府は様々な取組を続けている。丁真さんが一躍にインフルエンサーになったのは、こうした貧困脱却成果の定着に対する人々の強い関心と祝福が背景にある。丁真さん自身も「ふるさとのために何かしたい」という志を抱いており、彼を採用した旅行会社はまだ20歳の彼の成長を見守るため、商業活動など一切に出さないと明言している。丁真さんは今、地元博物館の学芸員になるよう猛訓練を受けている。こんな丁真さんの今後の益々の活躍、そして、理塘県の持続可能な発展が継続していくことを心から願っている。(CRI日本語部論説員)