北京
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毎年11月11日前後に行われる大規模なネット通販イベント「ダブル11」。
今年のダブル11を目前に控えたころ、新疆ウイグル自治区バインゴリン・モンゴル自治州博湖県シズムコル村の村民エマイルジャンさんは、猫の手も借りたいほどの忙しさに追われていました。11月に入ってから、ライブ配信で商品紹介をする「ライブコマース」を通して、手作りの民族楽器が毎日10本以上も売れていたからです。
11月9日、楽器工房で雇っている15人の村民と一緒に、エマイルジャンさんは出来上がった楽器「ドタール」を塗装していました。楽器の値段は一本500元から3500元まで、日本円にして8000円から6万円ほどです。
34歳のエマイルジャンさんは、3年前に義理の父から楽器づくりを学び、工房を開設しました。ラワープやドタールなど、6種類の楽器を製造しています。以前は、楽器を車に乗せて各地を回りながら販売していましたが、月収は平均わずか2000元――つまり、4万円に満たない程度でした。
そんな中、近年はライブコマースやショートムービーを活用した商品販売が全国的にブームになっていることを受けて、エマイルジャンさんも、思い切ってその波に乗りました。今年2月にショートムービーアプリ「快手(クァイショウ)」のアカウントを開設し、楽器の演奏や製造の様子を伝える動画を載せ、大勢のファンを獲得しました。
さらに毎日1、2時間ほどのライブコマースを行うことにより、沢山の注文をもらえるようになりました。楽器を買って、演奏を学ぶ人もいれば、芸術品として家やお店に飾る人もいて、最も多い時は1日に68本も売れたということです。
ユーザーたちからは、「ハンドメイドを貫くのは大変でしょうけど、頑張ってください!」「あなたの演奏と楽器作りを見て、新疆へ行ってみたくなりました」「この個性豊かな技術を、どうか継承していってください」といった多くの声が届いています。12万人ものフォロワーから届くこうしたメッセージを見るたびに、やる気が沸いてくるとエマイルジャンさんは言います。
現在はオーダーメイドも行うことで、ユーザーのニーズにさらに応えています。そして、何よりも肝心なのは、20段階もの製造工程の一つ一つを、厳しくチェックすることだと言います。信頼性は、エマイルジャンさんが最も大切にしているものだからです。
販路の拡大に伴い、工房ではより多くの村民を雇えるようになりました。その中には貧困家庭の人々もいます。楽器作りに加わった人々は安定した暮らしを手に入れ、やる気に満ちた日々を送っています。
「小康社会に向かう中国人の暮らし」、今回はネットを活用して楽器の販路を拡大した新疆ウイグル自治区のエマイルジャンさんの話をお届けしました。お相手は王秀閣でした。ではまた来週、お楽しみに。(閣、謙)